情けないところも
「辛かった」
「ミアはよく頑張ったよ。本当に」
優しい彼の声で、俯いていた顔を上げた。
「リトだってそうだよ。頑張った」
まだ詳しく聞いてないけど、大体のことは新聞で知ってる。リト達はいくつもの遺跡を回って古代の調査、地質調査なんかもして、小さな生き物を見つけた。きらきらとした細長いその虫の琥珀が、でかでかと新聞に載っていたのを取ってある。
リトは旅に出て『何か』を発見した。でも、わたしはここで村人を守れなかった。
わたしが再び俯くと、彼は苦笑した。
「ミアは頑張り屋さんだからなぁ。でも、誰も死ななかったのは絶対にミアのお陰だ。みんなの怪我も治してさ。充分なしたじゃないか。……駄目なの?」
「だって……わたしの力は十分じゃなかった。リトと約束もしたのに」
「僕の方がずっと簡単な内容だったよ。だって外へ行けば知らないことだらけなんだから」
わたしを元気づけようとか彼は笑ってみせる。けれどそれは真剣な表情になって
「ミア、合わせる顔がないなんて思ってるならそんなことはないよ。村人はみんな感謝してたし、ミアはちゃんと約束を果たしてくれたんだから。僕はさ……途中ホームシックになっちゃって『ミア会いたい……』とか言って泣いてたんだよ」
照れくさそうな笑みに変わった。
「でも、話したいことも沢山増えて。頑張ろうって思える理由になってくれたんだ。何年もの間ね」
「リト……」
「村人である僕の挫けそうな気持ちを救ってくれたのはミアだ。だから僕は今日元気に君の前に立ってる。僕の心は守られた。ミアの十分すぎるくらいに大きな愛と力でね」
彼は言ってウインクをする。わたしは思わずくすりと笑ってしまった。
「本当あなたって、偶にひどいこじつけをするんだから」
「え~そうかな……」
彼は身に覚えがない、心配、といった様子で頬をかく。でも彼のこじつけはいつも可愛くて幼くて、純粋だ。
「いい意味だから安心して」
「あ、本当? ならいいや」
安心顔のリトを見つめ、まだ上がったままの口角で、目線は窓の鍵に向く。わたしは手を掛けるとそれを外し、思い切って窓を開け放った。
途端、驚いた顔から一瞬で満面の笑みに変わったリトに抱きしめられる。
「大好きだ、ミア」
「リ、リト、恥ずかし……」
頬のすぐ横の、昔と変わらない柔らかい茶髪がくすぐったい。彼の匂いがする。わたしは宙に止まった手をリトの背中に回して、頬を寄せた。
「わたしも、大好き」
「嬉しい」
甘酸っぱいより、ただただ安心する腕の中があまりに心地よくて、幸せで。目が合って、わたしはリトの唇を迎えにいった。




