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小さな島の天使達  作者: いとい・ひだまり


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5/5

愛煌めいて、日常へ

 キスをしようとしたらミアも近付いてきて、同じ気持ちなんだと頬が緩む。

 唇を重ねて、一度離れたけれど見つめ合うと少し惜しくてもう一度重ねた。

 ミアの上品な茶髪には光が当たって、まるで豊穣の天使に見える。


「綺麗だな、ミアって」

「な、なに? いきなり」

「綺麗だって改めて思ったんだよ」

「本当ずるい。……これ、着けてもいい?」


 ミアは僕が窓台に置いていた、時々水色や黄色に煌めく桃色のブレスレットを指す。


「もちろん。他のは一旦バッグにしまっとくね」

「うん。後でまたゆっくり見せて」

「うん」


 似合うと思って買ったそれは、やっぱり彼女が身に着けるとパッと光を増した気がして、まろやかに手首で煌めく。とても綺麗だ。


「よく似合ってる」

「ありがとう」


 ブレスレットをした彼女は嬉しそうに頬を緩めた。かと思うと窓台に手を置き身を乗り出して。


「受け止めてっ」

「えっ」


 落っこちるように抱き着いてきたミアをなんとか僕は抱えることに成功した。けど、若干頬は擦れたし胸には衝撃が残った。


「危ないよ」

「ごめん」


 ミアは昔のように、少しいたずらっぽい笑みをする。地面に下ろしてあげると彼女は僕の手を取った。


「踊りたくなったの。踊ってくれる?」

「いいよ」

「左手、痛むから優しくしてね」

「えっまだ痛いの⁉︎」

「……うん」


 慌てて、でも痛くないよう気を付けて確認すると、そこには縦に傷痕がある。薄れてはいるけれど少し赤く見え、どうにか出来ないかと考えて僕は全身のポケットをまさぐった。と、ズボンの横ポケットに魔法の湿布があるのに気付いた。腰痛持ちの仲間の為、そして万が一の時の為に入れておいたんだった。


「効くかな?」

「くれるの?」

「うん。効き目があるといいんだけど……」


 彼女が湿布を貼るのを見ていたけれど、片手では難しいと思って僕が代わる。

 優しくて小さい手に慎重に貼ると、お礼を言った後彼女が眉を寄せて湿布の手の平を撫でた。


「なんだか、わたしすごく怪我人みたい」

「怪我人だよ。痛めてるんだから」

「酷使しちゃったせいもあると思う。だめだめだね、本当」


 拳にした左手に、右手を重ね包むと、ミアは反省の声色で言う。


「暫く魔法石の研磨はお休みしなきゃ。暇になっちゃうけど」

「じゃあ僕の家に来る?」

「いいけど……リトがもう何年も家を空けてたからまずは掃除をしなきゃ」

「あ」


 そういえばそうだった。というか、仲間達とレポートを纏めたり旅で得たものの整理をしたりしなければならないのを忘れていた。流石に三日とかでは無理だ。五日……七日? 折角ミアに会えたのに、忙しくて時間が取れないかもしれない。

 僕が色々思考を巡らせていると、ミアが張り切った様子で言った。


「役に立つ魔法石を色々連れていかなきゃね」

「ちょっと待って。だめ、それは。ミアのことは綺麗な家に招待するから」


 いくらなんでも、久しぶりに会った好きな人を汚い家に招待するのは嫌だ。ましてや、その家の掃除をさせるなんて以ての外。

 それを聞いてミアは、うーんと迷った顔をする。


「ミア、ちゃんとゆっくり出来る時に招待するから。美味しいホットサンドも用意する。だから……」


 押しかけてこないで、と両手を合わせてお願いすると彼女は小さく笑った。


「ふふっ、分かったって。じゃあ楽しみに待ってる。でもリトもちゃんと体休めてからにしてね」

「あ、はい」


 彼女には僕の考えはお見通しみたいだ。先のことを考えず、掃除を済ませたらすぐ呼ぼうとか考えていた僕はその言葉で思い止まった。確かに、折角招待しても僕がそこで倒れてしまったら意味がない。


「なるべく早く仕事終わらせて、しっかり休むよ。それで招待する」

「うん、そうして。お仕事頑張ってね。応援してる」

「っありがとう」


 ミアに言ってもらったから、二日とちょっとくらいはぶっ通しで働けそう。でもそんなことしたら後でミアに怒られるし色々良くない。


「……待ち遠しいな」

「じゃあ今たくさん踊って、たくさん話そう。それまで待てるように」


 踊りませんか、とミアは手を差し出して可愛らしくこてんと顔を傾ける。


「……こういうのって普通僕の方からだと思うけど」


 恰好つかないなぁと苦笑するも、割と昔からこんな感じだったのを思い出して一人更に笑った。

 早く、と小さく声がするのでその手を取る。「いち、に」と掛け声をして回り出した。けれど


「リト、なんだか踊りにくい気がする。昔と背丈が違うから?」

「そうかもね。でもその内慣れるよ。これからは一緒にいるんだから」

「そっか、それもそうだね。沢山踊ろうね、リト」

「うん。それで、沢山話もしよう」

「うん」


 ミアが微笑んで、僕も同じように頬が緩む。

 鮮やかな赤い葉が時折舞い落ちる、ちょっと特別な午後のステージ。琥珀のように輝くミアが愛おしい。そっと体を抱き上げると小さく声が上がって、僕らは笑い合う。太陽の下、昔よりちょっぴり成長した僕らの声が響いていた。







最後まで読んでくださりありがとうございました(*´ `*)


今回、折角絵が描けるしと本編のシーンをいくつか描いてみました。結構落書きなのですが、簡単な着彩はしています。楽しんでいただけたら嬉しいです。

イラストへはこちらから飛べます。

https://kakuyomu.jp/users/iroito_hidamari/news/2912051602583880621

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