傷
その日、小さな島にやって来た嵐は瞬く間に家々を吹き飛ばし破壊した。逃げ惑う村人達を守ろうと屋敷の少女は魔法石を手に立ち向かった。が……
「ミアちゃん、わしらのことはもういいから逃げえ!」
「嫌!」
皆と屋敷へ走りながら、魔法石の力を維持し続けるミアには限界が来始めていた。
彼女は飛び交う瓦礫から村人達を守る為、屋敷までの道にバリアを張っていた。しかしそれは魔法石に共鳴するミアのエネルギーの減少、魔法石のエネルギーの減少により彼女の周囲数メートルにまで縮小してしまっている。
いくつも持っていた魔法石は一つを残し他はエネルギー切れ。彼女のポケットに収まっている。最後の一つ――綺麗に磨かれた深い青の魔法石はまだかろうじてミアの手の中で輝いているが、その活動限界はすぐそこに迫っている。
丸石で作られた道は所々欠け、空からは風に煽られたトタンや小石が時折降ってくる。強風の中バリアからはみ出ないよう、そして足元にも気を付け数人で屋敷まで進むのは極めて困難だ。バリアからはみ出ることを気にせず皆で全力疾走するのは危険すぎる。
と、その時魔法石がひび割れ、バリアが揺らいだ。これ以上魔法石に無理をさせ、力を維持することは出来ない。
「駄目……っ逃げてみんな! 走って!」
魔法石はミアの声と共に真っ二つに割れ、彼女は手の平を負傷したがそんなことはどうでも良かった。魔法石は後で直せる。ミアは手の平の痛みなど気にすることなく、石を握りしめ周囲を確認した。
既に小走りだった皆はミアの声により全速力で走り出したが、それでも屋敷へはまだ数十メートルある。
「みんな、左へ避けて!」
ミアの声に従いながらも、降り注ぐような瓦礫のせいで皆、怪我せずとも度々小さく悲鳴を上げる。誘導以外にミアに出来ることは何もなかった。それどころか
「ミアちゃん危ねえ!」
村の男達は飛んできたトタンからミアを守ろうと、背中や腕に怪我を負った。
守る筈だったのに自分が守られ、果てには自分を庇い皆が傷付いた。彼女はそれに耐えられなかった。
(もっと力があれば……)
嵐が落ち着きなんとか村人達の手当てを済ませたものの、無傷で済んだミアは自分の無力さに打ちひしがれてしまったのだった。
たとえ彼らの傷が魔法石で完治したとしても、守れなかったという思いは彼女の左手の平に残り続け、癒えることがなかった。数ヶ月経っても。




