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第1話「放置プレイの弊害」

 クロノ港の屋敷に戻ると、ノエルが拗ねていた。

 治水工事に連れて行かなかったことを怒っているらしい。

 僕も迷ったのだが。

 宗教幹部の大虐殺を見たノエルの反応がちょっと怖かったのだ。

 ウォーレン様には人の心がありません、とかなんとか。

 いわれない非難を受けてしまうと、僕のガラスハートにひびが入ってしまう。


「ウォーレン様は何もわかってません!」


 玄関をくぐったとたん。

 仁王立ちして待ち構えていたノエルはいきなり僕を非難した。

 なにやら怒っている。

 ぷんぷんだ。

 後ろに般若が見えるような気がする。

 これは対応を間違えると、しばらく口も聞いてもらえない感じだぞ。


「なにを怒っているのだ?」

「どうして私を連れて行ってくれなかったのですか!」

「い、いやその、今回は汚れ仕事だったから」

「おかげで私は屋敷から一歩も出られませんでした! 暇で暇でしょうがなかったです!」

「別に観光して遊んでいてもよかったのに」

「必死で仕事をしているはずの婚約者をよそに、そんなことができますか!」

「いや、そこまで必死でもなかったが」

 

 しどろもどろの釈明をする僕を、ノエルはキッとにらみつける。


「聞きましたよ! 毎日毎日カルラ様といちゃいちゃして!」

「そんなことは」

「毎晩同じ部屋で遊んでいたそうですね! 一体何をしていたのです!」


 誰だよそんなこと言ったやつは。

 ああ、メイドか。

 メイドのディクシー。

 村には僕の世話係として付いてきていたが。

 彼女はスークス男爵家からの出向なので、ノエルの回し者でもあるのだ。

 

「何をって……カードゲームとか。同じ本を読んだりとか。仕事の意見交換とか。勉強会、バーベキュー、花火、着せ替え遊び、狩り、合唱、ダンス、一緒に料理。だいたいそんな感じだ」


 話の途中からノエルの表情が硬くなり、ついには壁にこぶしを叩きつけた。


「嫁ですか!」

「いや、友達だが」

「そんな友達なんていませんよ! なんなんですか! ウォーレン様は私のどこに不満があるというのですか!」


 ガンガンガン、と壁が悲鳴を上げる。

 破片がぱらぱらと落ちた。

 石の壁にひびが入っている。

 超こわい。

 もしもノエルが刃物を持っていたら、全力で回れ右をして逃走すべきところだ。


「ふ、不満と言ってもな」


 強いて言えば、いつの間にか見捨てられそうなところか。

 ノエルは無条件で僕を愛してはいない。

 義務としてさえサボり気味だ。

 僕のだめなところを押し出して付き合うと、たちまち嫌われそうな気配がある。


 しかし、この場合に求められている答えはそういうものではない。

 僕はとりあえず、いかにノエルが大好きかという点をアピールすることにした。


「だってノエル、抱かせてくれないし」

「はあ!?」

「いや、僕たちって婚約者だろ。そろそろだと思うんだよ」

「も、もう結婚まで何年もないでしょう! それぐらい待ってください!」

「しかしノエルの成長は待ってくれないぞ。今のノエルを楽しめるのは今だけなんだから」

「な、な、な、なにをいうのですか!?」


 ノエルは真っ赤になった。

 超かわいい。

 僕はノエルが大好きだ。

 だからえっちしたい。

 14歳ノエルの肉体を味わえるのは今だけなのだ。

 それは焦りもするだろう。


 いや、厳密に言えば、処女にはそれぞれバリエーションがあるのだが。

 仮に結婚まで3年ほどかかるとして。

 17歳処女のノエルを楽しむためには最悪3年間も待つ必要がある。

 14歳処女ノエル。

 17歳処女ノエル。

 僕の好みは後者だが。

 しかしそれだと、14、15、16歳ノエルを楽しむことができない。


 貴族社会では若年結婚が多い。

 それは別に幼女趣味というわけではなく。

 子供を作る必要がある以上、その機会が多くあるに越したことはないからだ。

 10歳の女なら最初の5年はともかく、向こう20年間は楽しめる。

 30歳だと5年もすればきつい。

 もちろん人によるが。

 愛人なら30歳でもその時美しければいいが、正妻はそうもいかないのだ。


「わ、わかりました。結婚の時期を早めるように父に頼んでみます! それでいいでしょう!?」

「うーむ」

「何か不満があるのですか!」

「いや、だからこう、つまりはおっぱいとかセックスとか」

「ウォーレン様はどうしてそうなのです!」

「ダメか?」

「淑女たるものは婚前交渉などしないのです! 理解してください!」


 ノエルは激怒している。

 むむう。

 これはどうも、少なくとも今日は押してもだめそうだな。


「わ、わかった。しばらくノエルといっしょにいる。仕事にも一緒に行こう」

「当然です! 連れて行ってくれないと怒りますよ!」


 弱ったな。

 僕にも予定があったのだが。

 多少組み替えなければ。

 難しいのは後に回して、誰にでもできる簡単な仕事からはじめることにするか。

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