第6話「山賊退治」
ということで。
僕たちは険悪な雰囲気のまま山に入り。
結果として、あっさりと山賊を討滅した。
当日の朝。
広場には全員が集まっていた。
近衛だけではない。
村の若い衆もいる。
猟師とか力自慢とか自警団の腕利きとか。
使えそうな連中を事前に集めておいたので、雑用ぐらいはできるだろう。
「これより山に入る。村を苦しめていた賊どもに目にものみせてやるのだ!」
僕がそう言うと、村人はおおいに歓声を上げて喜んだ。
近衛は黙っていた。
あいかわらず乗り気ではないらしい。
ピクニックの引率に向かう教師のような気分なのかもしれない。
とはいえ、近衛を連れて行かないという選択はありえない。
集めた村人10人よりも近衛1人のほうが強い。
それが近衛の最低条件だ。
もちろん人によるが。
いざという時には逃げ出す村人よりは、近衛のほうがまだ使える。
「では、グレイス、案内せよ」
「はい!」
あらかじめ口裏を合わせておいた少女に先導させる。
彼女は村の冒険者。
山の魔物退治や獣狩りなどで生計を立てている。
集めた村人のなかでは一番腕がいい女だ。
これが終わったら近衛見習いに誘ってみてもいい。
それぐらい魔力が強い。
夏の早朝である。
地面は朝露でぬれていた。
僕たちは草を踏み分けながら山の細道を進む。
視界は悪い。
木々が乱立している。
この樹海の中から盗賊のアジトを見つけるなんて、たしかに困難だろう。
しかし、問題ない。
僕には妖精さんがいるのだ。
みさえもんに泣きつけば大抵のことは解決する。
『どっちだ?』
『そこは右。200メートルぐらい先に隠し通路がある。そこを左』
分岐点を選び、パッと見ではわからない獣道などを分け入って進む。
枝で隠ぺいされた道を発見して歩くこと3時間。
急に視界が開けた。
目の前には大きなログハウスがある。
盗賊が拠点にするアジトだった。
『どうだ?』
『中にいる。総勢28名。ほとんど全員だと思う』
『わかった』
僕は懐に手を突っ込んで妖精さん直筆のアイテムを取り出した。
「これが地図だ」
妖精さんステッキによって生み出された詳細な絵図面を広げて説明する。
「フィル、兵20を与える。裏手から攻め入って盗賊をアジトから追い出せ」
「はい」
「サディアス。兵20を与える。この地点で迎撃だ。一人も逃がすな。とどめを刺す必要はないが、強いて生け捕りにはしなくていい」
「了解しました」
「残りは僕についてこい。適当に遊撃する」
作戦が決まった。
おのおのが配置につき、開始の時間になる。
喚声とともにフィルの部隊が盗賊のアジトに攻めかかり、裏口を制圧した。
「な、なんだ!?」
「敵襲! 敵襲だ!」
「こ、こいつら軍人だ! 逃げろ! 戦っても勝ち目はねえ!」
正面出口から盗賊があふれてくる。
僕は5人ほど素通りさせ、適当なタイミングで突撃して横腹をついた。
逃げるのに集中している盗賊をざくざくと斬り捨てる。
弱い。
弱すぎる。
正面切ってやりあったわけではない。
一方的に攻撃しているのだから戦闘というよりは狩りである。
「かかれ! かかれ!」
僕は絶叫しながら部下をけしかけた。
血に飢えた村人や近衛兵が次々と剣を振るって盗賊を倒していく。
何人かの盗賊は打ち漏らしてしまったが。
その向かう先の道には、あらかじめ伏せてあったサディアスの兵があった。
「ここにもいやがる!」
「ひいい!」
「降参だ! 降参する! 助けてくれ!」
さすがに、自分達が袋小路に陥ったことを悟ったのか。
盗賊達は剣を捨てて手をあげた。
みんな降参した。
僕たちは彼らを縄でしばり、拠点の探索にかかった。
『どうだ?』
『ろくなのないなあ』
『まあ、しょせんは盗賊だからな。やむをえまい』
『あーっと、そこの柱の下、金貨袋がある。回収したほうがいいかも』
『わかった』
丸太をくりぬいて作られた隠し場所から金貨を回収する。
それから物資倉庫に入って金目のものを物色。
とても楽な仕事だ。
妖精さんがいるから探す手間がない。
魔物の襲撃もないので、ダンジョン探索よりも10倍は楽だった。
1時間後。
アジトを探索し尽くし、めぼしいものはほとんどなくなったようだ。
後は帰るだけか。
「終わってみれば簡単だったな」
「その、ウォーレン様。どうして隠し財産の場所がわかるのでしょうか?」
「内通者がいたのだ。決まっているだろう」
「な、なるほど」
護衛が感心したようにうなずいた。
ただの嘘なのだが。
実際には妖精さんの不思議パワーのおかげである。
とはいえ、そんなことを公言する必要はない。
人知を超えた力というものは不気味に思われるのが常だ。
嘘をつくほうが無難だろう。
「被害はどうだ?」
「死者ゼロ。重傷ゼロ。軽傷2名であります」
ほとんど一方的な勝利だな。
楽なことだ。
戦いというのはこんなにも優しいものなのか。
罠や待ち伏せなどの被害で、何人かは死ぬものだと思ったが。
「帰るぞ。後始末は村で行う」
やることがなくなったので、僕たちは食事もほどほどに下山した。




