第7話「庶民向けの娯楽」
僕たちは帰還した。
盗賊がためこんでいた財産を奪い取ってアマールの村に凱旋した。
死者ゼロの大勝利だ。
大いに喜ばれた。
捕虜が10人ほどいることだし、せっかくなのでパフォーマンスを行うか。
「宴会の準備をしろ。余興はこちらで用意する」
「ははっ」
夜になると、村の広場にテーブルが並べられ、料理が用意された。
打楽器と歌による音楽が場を盛り上げる。
光源として用意されたキャンプファイヤーが煌々と燃え上がっている。
なかなか愉快な催しだ。
思わず踊りだしたくなるような雰囲気であり、そうしている近衛もいる。
そして、宴のなかごろ。
酒がほどよく全員にまわったところで。
僕は壇上に上がり、当初から予定されていたパフォーマンスを行うことにした。
「さて、みんなよく頑張ってくれた。勝利を嬉しく思う」
「ウオオオオォォォー!」
「働いてくれた村人諸君のために、余興のための贄を用意した。処分は任せるゆえ、好きなようにしてくれ。もちろん殺してかまわん」
待機していた部下たちが盗賊をひっぱってくる。
今回の戦いでゲットした捕虜のみなさんだ。
広場に並べられた太い柱に次々とくくりつけられる。
彼らは無防備だ。
防具を着ていないし、縄でしばられている。
魔力も高くはない。
武器を手に取って攻撃すれば、戦闘力のない村人でも殺せるだろう。
「よ、よろしいのですか!?」
「よいよい。積もった恨みがあるだろう。好きなようにいたせ」
「ありがとうございます!」
彼らは喜んだ。
渡された槍を受け取って奮い立った。
教育程度が低い村人向けの娯楽。
公開処刑である。
村人というのは頭がきわめて悪い。
セックスと殺人ぐらいしか楽しめる知能がないので、感動もひとしおだろう。
「やめろ!」
「助けてくれ!」
「俺たちは生きたかっただけなんだ!」
盗賊は泣いた。
血を流しながら叫んだ。
許してくださいと懇願した。
不慣れな村人はひと突きで獲物を仕留めるような技能を持っていない。
生きながら身を刺される姿は同情に値するだろう。
何も知らなければ被害者のようにも見える盗賊たち。
ぶざまだ。
みじめである。
あわれを誘うという点では成功していると思う。
実際、彼らに同情して顔をしかめている村人も少なくないようだ。
「死ね! 死ね!」
「いままでの恨みだ!」
「妻と娘の仇だ! 命でつぐなえ!」
とはいえ、それで同情するのは実害のない人間だけの話。
彼らに家財を盗まれたものや身内を殺されたものたちは騙されない。
娘を犯されて殺されたという壮年の男は激高し、怒りと共に槍を突いた。
「ぎゃあああああ!」
「痛てえ! やめてくれ! 俺たちが悪かった!」
「血、血が! 死ぬ! 死んじまう! 嫌だ! 助けてくれ!!」
村人は大喜びで突いた。
槍で突きまくった。
復讐に燃える村人には盗賊の叫びが甘美なものとして響くらしい。
誰も彼もが恍惚の表情を浮かべている。
懇願の悲鳴が意味の分からないうめき声にかわってからしばし。
力の限りに死体を突いていた男も、やがて腕力が尽きて武器を取り落とした。
広場から声がなくなる。
ざっと確認する。
盗賊はみんな死んでいた。
「満足したか?」
「はい! すがすがしい気分です! 積年の屈辱がようやく晴らされました!」
村のみなさんは満足そうに血ぶるいした。
うむ。
たまには人気取りもしないとな。
こちらで殺すだけでも喜ばれるのだが、やはり公開処刑だと満足度が違う。
人は自分より不幸な存在を望む。
どれだけ善人ぶっていてもこれは変わらない。
領主の仕事とは生贄を選定することだ。
できれば今回のように殺すのではなく、末永くいじめておくことが望ましい。
というわけで。
生きのいい盗賊は数人ほど残しておく。
今後は奴隷として酷使するためだ。
いじめられっ子がいるほうが組織は安定する。
村人を精神的に豊かにしてくれる差別階級として生きのびてもらうとしよう。
外見のいい盗賊については……さて、どうしたものか。
殺すのはもったいないな。
近衛から希望者を募って、まずは今夜の慰み者として分配して。
あとは商人に売りつけて有効活用しておくか。
僕たちはこまごまとした後始末を終えて、次の村へと向かった。




