第9話「僕は紳士です」
カルラとの買い物デートを楽しむ前に確認するべきことが一つある。
もちろん転生者のことだ。
カルラと同盟を結ぶという選択肢もあることだし。
その話題に触れるか否か、あらかじめ決めなければならない。
『で、結局カルラはどうだった?』
『転生者なのは間違いない。神鳥きらら。やっぱりそうだった』
妖精さんは重苦しくつぶやいた。
なんだなんだ。
やけに消沈しているぞ。
『どしたん? なんか元気ないけど』
『いや、あまりに色々な情報を読み取っちゃったせいで、これを全部伝えていいのかどうか悩んでる最中なんだけど』
『どういうことだ?』
『あーっと……何から話すべきか整理つかないから、帰ってからにしない? メモにまとめたいし』
『お前がそう言うなら、別にそれでもいいが』
カルラの屋敷から立ち去った僕たちは、そのまま帰途についた。
時刻は午後三時。
学校に行くには遅すぎる時間帯だ。
かといって他に用事があるわけではないし。
家に戻って、自室で書類仕事のほうを片付けることにしよう。
屋敷の門をくぐると、気付いたジーナが素早く駆け寄ってきた。
「おかえりなさいませ、ウォーレン様」
「ただいま。明日は4時に起こしてくれ。5時からカルラと出かける」
「かしこまりました。食事はいかがなさいますか?」
「晩飯は5時に出してくれ。明日の朝はいらん」
「承りました」
涼やかな声で答えたジーナがぺこりと頭を下げた。
うむ。
対応のいいメイド長だ。
ジーナを解雇するべきではないと主張したウォーレンは正しかったらしい。
彼女は礼儀正しく、命令はきっちりと守る。
仕事をさぼることもない。
部下に指示も出す。
優秀だ。
食事内容についても改善されているので、文句はまったくない。
一体だれが彼女を解雇しようなどと言ったのだ。
まったく。
こんな便利なメイドさんを首にするなんて。
バカとしか言いようがないな。
「さて」
自室に戻った僕は紙とペンを取り出し、妖精さんに話の続きを促した。
『時間はやったぞ。存分に思うところを語れ』
『なんでそんなに偉そうなのさ?』
『僕ごしゅじん。お前どれい。倍率どん』
『違うよ!? 私たちは対等な関係だから! そこは間違えないでよね!』
妖精さんが怒った。
困ったな。
言われなくても、勘違いなどしていない。
僕は美咲のことをパートナーとして認識しているし。
最大限尊重もしている。
『ちゃんといろいろ気遣ってやってるだろ?』
『どこが!?』
『DVとかしてないし。無視もしてないし。おさわりもしてないだろ?』
『嘘だ!』
『嘘じゃねーよ』
『全部された覚えがあるんですけれど!?』
僕は首をかしげた。
ううん?
何ひとつ思い当たる場面がないのだが?
『またまた、おたわむれを』
『自分でやったことを忘れてる!? なんなのこの人!? いじめっ子は忘れるの法則にしても限度があるよ!?』
妖精さんが意味のわからないキレかたをしていらっしゃる。
おかしいな。
僕は暴力で支配しようと試みたことはないし。
楽しい会話を心掛けているし。
裸にむいてぺろぺろもしていない。
完全な紳士だと思うのだが?
『僕ほど優しいマスターはいないと思う』
真情を込めてつぶやいたところ、妖精さんはげんなりした声で答えた。
『あー、もう今はそれでいいよ』
『わかってくれたか』
『何一つわかってない! でもまあ、確かにマスターと口論してもはじまらない』
妖精さんは魔法のステッキを取り出し、紙をさっとなぞった。
A4より少し大きい程度の荒い紙。
そこに文字が浮き上がる。
「おお!?」
思わず声が出た。
『まずはじめに、カルラのパラメーターとスキルなんだけど』
『それより先に今の不思議現象について説明しろ! 意味がわからんぞ!』
『妖精ステッキだよ』
『妖精ステッキとな!?』
『ノエルと探索した時からできるようになったの。レベルが上がったんだね。効果は見ての通り』
『うん、わからん!』
妖精さんの脳内だけで完結しないでほしい。
僕は人間なのだ。
ちゃんとした説明を要求する!
『だから、文字をさっと書くだけのスキル。他の用途はない』
『やたら便利だな』
『まあ、妖精ってのは便利屋として生み出される生き物だからね。その一環なんじゃないの?』
『うーむ……たしかに手間をかければ同じことができるか。そういう意味では大したスキルでもないのか』
『ま、それはおいといて』
『ああ』
『カルラのパラメーターとスキルなんだけど』
名前 カルラ・ブロッコリー
パラメーター
年齢15歳(10歳開始)
体力170
魔力170
魅力120
権力200
知力150
財力180
スキル
日本語、公用語、算術、一般常識、死への忌避、怒る、恥じる、怖がる、道具箱、原作知識青、原作知識赤、破滅の運命、破滅願望、凌辱願望、佳人薄命、殺人姫




