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第4話「勧誘勧誘」

 さて、メイジーのようなゴミ人材はそれでいいとして。

 人を探さねば。

 僕が学校でやるべきことはそれだけだと断言しても、決して過言ではない。


 ウォーレンは学生生活を満喫しすぎていた。

 勉強とダンジョン探索。

 美食と惰眠。

 たまの女遊び。

 それが彼のすべてだ。

 一番大切な人材集めについては、ほとんど関心がなかった。


 せっかく世界各地から人材が集まっているというのに。

 それでは困る。

 僕の将来が不安だ。

 ウォーレンの兄弟は無能ぞろいなので後継者争いは起きそうにないのだが。

 だからといって人集めをさぼっていい理由にはならない。


 ウォーレンには領地がある。

 金もある。

 もちろん責任もある。

 運営を任せるに足る人材を見つけることこそが、ウォーレンの仕事のすべてだ。


「それでは、今日はこれまで」


 午後からの授業が終わった。

 教室から人が出ていく。

 最初の授業とは違ってずいぶん面白い内容だったが、それはどうでもいい。

 大切なのは人だ。

 教室から流れていく人の群れの中から目当ての人物を見つける。

 僕はそのままストーカー行為を開始した。


『女の子じゃなくてよかったね』

『なにがだ?』

『後ろからつけまわすなんて。変態もいいところだよ』

『失礼なことを言うな。これは純然たる勧誘活動だ。いずれ女にも行う』

『うわーお。犯罪者宣言入りましたー』

『ここでは僕が法律だ』

『こわっ。そーゆー発想で進んだ人って、アニメではギロチン台に行くことになるんですけれど』


 アニメではそうかもな。

 ここは現実だ。

 実際にギロチンにかけられるのは貴族に逆らった側。

 すなわち反逆者だ。

 僕が処刑台に送られるようなことはまずない。


『あ、ついたみたい』

『そのようだな』


 彼は研究室に入る前に後ろを振り返った。

 僕と目が合う。

 怪訝そうに首をかしげている。

 まあ、気配ぐらいは感じていただろう。

 僕はとても目立つ。

 質量が大きいせいで隠密行動を取ることは不可能だった。


「何かようですかな?」

「ああ。お前に会いに来たんだ。時間をもらえるか?」

「どうぞお入りください」


 特に歓迎されてはいないようだが、ともあれ、話してはもらえるらしい。

 第一関門はクリア。

 問題はここからだ。



 王立貴族学校きっての秀才とうわさされるバレンティーン。

 彼は臨時講師と学生を兼ねている。

 もともとはサターン伯爵領で官僚をしていた男だ。

 年齢は28。

 中肉中背で眼光が異様に鋭い。

 目の奥がギラギラしている。

 女学生の調査では抱かれたい男ナンバー10には入っているらしい。


 気に入らないな。

 僕などは抱かれたくない男ぶっちぎりナンバー1の座を獲得しているのに。

 自分から動かなくても女が寄ってくるとは。

 許せん。

 女にもてる男は犯罪者だ。

 これは僕とウォーレンとの間にある共通の見解である。


『ちょっとちょっと、どうするの?』

『どうするとは?』

『放置されてるんですけど!』

『そんなわけないだろう。まあ、ちょっと待っていろ』


 研究室のソファーに座ってぼーっとする。

 しばらくするとバレンティーンが戻ってきた。

 茶を入れていたらしい。

 まあ、訪ねてきた客をもてなすには普通の反応である。


『あ、そーゆーこと』

『お前はこの土地の文化には詳しくないようだな』

『転生三日目だし! しかたないし!』

『システムのこと以外では頼りにならないとわかった。以後はしばらく黙れ』

『ううう、了解ですー』


 美咲が僕の体から脱出した。

 部屋をひらひらしている。

 主であるバレンティーンには気にした様子もない。

 やはり妖精の姿は僕にしか見えないようだ。


「さて、早速ですが、用件をうかがっても?」

「まずは自己紹介をしよう。僕はウォーレン・エニウェア。エニウェア侯爵家の跡継ぎだ」

「もちろん存じております。私はバレンティーン。といっても、お互い自己紹介の必要はありますまい」

「そうだな。バレンティーン殿の高名は聞いている」

「ああ、そういう意味ではありません。わざわざ訪ねてきたのだから名乗らなくてもわかるだろう、というだけの話です。自分が有名人だとは思っていませんよ」

「バレンティーン殿は有名だ。それは間違いない」

「ありがとうございます」


 特に喜んだ風でもなく、バレンティーンはぺこりと頭を下げた。


『なんか付き合いづらそうな人だねえ』


 妖精さんが気ままな感想を漏らす。

 僕も同感だ。

 仮に必要なくても自己紹介をするのはマナーだろう。

 しかしそれを指摘する必要はない。

 むしろ付き合いづらいぐらいのほうが信用できるとさえ言える。


「本日の要件だが、想像がつかないか?」

「つきませんな」

「候補ぐらいは出せるだろう?」

「いえ、まったく」

「そろそろ夏休みだ。僕たち貴族が領地運営に戻る時期でもある」

「そうですな」

「お前、よければついてくるか?」


 会話に乗ってくる気配がないので、僕は単刀直入に要件を切り出すことにした。

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