第3話「モンスターと戦うぜ!」
2層、3層と早足で進んでいく。
1層で地下100メートル。
3層は地下300メートルだ。
さすがにこのころになると、人を見ても逃げないモンスターが現れる。
「僕がやる。手をだすな」
「ははっ」
大きなトカゲ型の魔物が道をふさいでいる。
僕は剣を抜いて前へ出た。
威嚇のために口を大きく開いている魔物にとびかかる。
「おおっ!」
気合いを入れて剣を振り下ろした。
ザクッ、と剣が沈む。
皮膚を切り裂いた。
しかし切断には至らない。
剣は大トカゲの中ほどで止まり、肉に食い込んで抜き差しできなくなった。
「ち」
僕は剣を離して直接殴りつける。
手袋越しに衝撃があった。
強化したウォーレンの拳であれば、その破壊力は車をぶつけたほどにもなる。
1発、2発と殴り続けると魔物が動かなくなった。
踵を頭に打ちおろしてトドメをさす。
ふむ。
苦戦、というわけでもないが。
普段のウォーレンであれば最初の攻撃でトカゲを両断している。
剣に魔力をまとわせる感覚がつかみにくい。
体にまとわせるのは本能的にできるのだが、武器はちょっと難しいようだ。
要練習というところか。
「今日は調子が悪そうですな」
「かもしれん」
やはりウォーレンのほうがこの体の操縦はうまいようだ。
それは仕方がない。
まだ僕が使うようになってから日が浅い。
いずれは慣れるだろう。
「どこに問題があった?」
「思い切りが悪かったように思われます」
「そうだな」
「ただ、試行錯誤するのはいいことです。成長はその中から生まれますので」
そういう風に見てもらえたらしい。
実際その通りだが。
僕はこの体の使い方に慣れていない。
前世の感覚で剣を振った。
ウォーレンは体重が重いのだから、もっと重心の扱いに工夫が必要だろう。
それからも何回か戦う。
魔界狼やどくどくキノコ、トレント、ベビーデビルなどを次々と屠っていく。
全部雑魚モンスターだ。
苦戦のしようはない。
ただ、いろいろ試しているせいで倒すのに時間がかかっていた。
護衛がはらはらした視線で見守っているのがわかる。
気の毒に。
彼らは侯爵家の精鋭だというのに、こんな場所で子守りとは。
「僕を見なくていい。ぼーっとするか、まわりに気を配れ」
「は、しかし」
「危なくなれば助けを呼ぶ。僕のへぼい動きを見て腕が落ちては困るだろう?」
熟練者であっても初心者の面倒を見れば腕が落ちる。
へぼが伝染する。
上級者の動きを見れば何もしなくても腕が上がるように。
その逆の現象もあるのだ。
少なくとも現役の戦士であれば、実力の劣る人間の面倒を見ようとは思わない。
2時間が経った。
倒したモンスターは数十匹。
戦闘勘はつかんだ。
これ以上くり返しても作業になってしまう。
僕は護衛へと視線を向け、彼らの戦いぶりを観察することにした。
「少し休む。かわって戦ってみろ」
「はい」
奥へ奥へと進みながらモンスターを探す。
すぐに見つかった。
巨大ダンゴムシ。
昆虫タイプのモンスターだ。
護衛の一人が進み出て、一刀両断に切り伏せる。
なるほど。
僕との違いは明らかだ。
彼は僕よりもはるかに剣に多く魔力をまとわせている。
相手の防御を抜くためだ。
合理的だと思う。
戦闘は時間をかけずに終わらせるのが望ましい。
攻撃力を重視するのは当然か。
しかし、と僕は実際にやってみる。
剣に魔力を通す。
体にまとっている魔力が薄くなった。
当たり前だ。
全体の総量が同じなら、攻撃につぎこんだぶんだけ防御は薄くなる。
不安だ。
守りが弱い状態。
攻撃を受ければ傷を負ってしまう。
それは当たり前だが。
僕の本能はそれを忌避している。
思い切りが悪い、か。
その通りだ。
もっと魔力を攻撃に使うべきだろう。
理性はそう言っている。
しかし、そうすると身の守りがおろそかになる。
ウォーレンは遅い。
なにせこの巨体だ。
剣に魔力を注いで戦うためには、かなり効率的な魔力運用をする必要がある。
攻撃と防御を両立できるほど素早く魔力を動かすか。
もしくは自力で避けるか。
一点に集中して防ぐか。
いずれにせよスピードが求められる。
どうやら剣というのは身軽で素早い人間のための武器らしい。
槍はもっとそうだ。
攻撃を当てるためには素早い動きが求められる。
敵も動くのだ。
相手に合わせて足の位置や腕の振り方を調整する必要がある。
無理だな。
僕は見切りをつけた。
やせてからならばともかく、今の体型では剣は扱えない。
組み打ちするほうが安全だ。
至近距離で戦えばスピードの威は弱まる。
かわって輝くのがパワーだ。
僕にはそれがある。
格闘術のほうを伸ばすことにしよう。
それが今の最善だ。




