第14話「アイザック一派を粛清」
「ウォーレン様。アイザック文官の処遇はいかがなさるのですか?」
「当然の疑問だな」
僕は近衛に指示を出して会議室の扉を開かせた。
「見た方が早い。欲に溺れ民をないがしろにした者の末路をおぼえておけ」
ぞろぞろと。
拘束されたアイザック一派の人間が連れ立って入ってくる。
そのうちのいくらかは首だ。
まあたらしい生首。
会議室の最前列にずらりとさらしてみる。
「ひっ」
気の弱い文官などは悲鳴を漏らしたが。
そんなことでは困るな。
これからもっと増えるのに。
アイザック一派の顔色は恐怖で真っ白くなっている。
これからどうなるのか。
生き延びる者はいるのか。
そんなところか。
当のアイザックは無様な姿というか、顔を打撲痕で腫らして涙を流している。
「よく来たな」
僕はさるぐつわを外すよう指示を出した。
「これからの港を運営する彼らに向けて、後学のための言葉を聞かせてやれ」
そのように命じたところ。
彼らは悲嘆にくれた表情で身を震わせ、一斉に哀訴をはじめた。
「ウォーレン様には仁も義もないのですか!?」
「今まで港を運営してきた我々の努力をなんだと思っているのです!」
「ウォーレン様の部隊が困っているというから、わざわざ食料だって苦労して送ったのです。恩をあだで返すなど……人としての情が薄すぎます!」
ああ。
あれか。
そういえばハンジュークの村に食料を送らせたことがあったな。
すっかり忘れていた。
単にどのくらい警戒されているのかという指標としてやっただけだが。
もしも送られてこなければ。
それはもはや敵対勢力として固まっていると断定しただけの話。
もっと乱暴なアプローチを取っていただろうし。
文官も上層部の人間は全員殺している。
でなければ威圧にならない。
逆に、援助物資が送られてきたならば。
まだまだなめられている。
自分の立場がわかっておらずに、調子に乗っているということだ。
その場合。
殴りつければ済む。
これはそういう話である。
大人が相手なら対話は必要だ。
利を食らわせながら落としどころを探る。
場合によっては相手の顔を立て。
無理なやつは殺す。
そうするよりほかにない。
子供が相手であれば殴りつけてしつけるべきであろう。
彼らには世の理を知るための知能がないからだ。
出るのは文句ばかり。
無理筋の要求をするだけ。
このレベルの人間に対しては、根気よく教育を与えていけばそれでいい。
クラフトの港は後者。
自分が何をしているのかをまるでわかっていない。
12歳未満という小児病患者である。
僕は十分に待った。
わざわざゴブリン退治などで暇つぶしをして、兵を集結させた。
かんしゃくを起こされても問題ない程度の力をそろえたのだ。
後は押しつぶせばそれでいい。
「これより、文官アイザックとその一党が犯した罪の数々を述べる。まずは収賄からだが」
つらつらと。
僕たちはアイザックの手足をもいだ時に押収した証拠を披露していった。
贈収賄。
誘拐。
麻薬犯罪。
強盗。
強姦。
組織売春。
殺人。
密貿易。
法の乱用や冤罪の押しつけなど。
はじめのほうこそ、違う、覚えがない、などと威勢がよかったのだが。
証拠が積み重なるにつれ。
その惨憺たる悪事にあてられて、むしろ傍観者の顔のほうが暗くなった。
「言うべきことはあるか?」
そのように聞いてみたところ。
腹をくくったアイザック一派はくわっと目を見開き、胸を張って糾弾した。
「死ね!」
「デブ野郎!」
「くたばれバカ息子!」
「無知蒙昧の悪童! ウォーレンに呪いあれ!」
轟雷の鳴り響くような大声でわめいている。
なるほど。
最後の最後だからな。
命の終わりを振り絞って罵詈雑言の限りを尽くせば、こんな感じになるのか。
「……わかった。もはや言葉は必要あるまい」
うむ。
潔いじゃないか。
謝罪の言葉があっても許す気はなかったが。
自らの運命に対して誠実に向き合うという点については強く好感が持てる。
さすがはアイザック一派。
一時的にではあっても港の支配者だっただけのことはある胆力だ。
「首をはねよ」
ぽんぽんと首が飛び、会議室は血で汚れた。
「さて、他の者。何か意見はあるか?」
そのように水を向けたところ。
世知に長けた文官たちは総立ちになって、僕におもねって言った。
「い、いや、お見事でした。ウォーレン様には名君たるの素質がありますな!」
「果断な措置。それでこそ次期侯爵たるものにふさわしい!」
「人材の配置もまったく文句のつけようがないもので」
「だまれ」
僕はさえぎって言う。
「見え透いた世辞などはいらん。ほめるのとけなすのは本質的に変わらない。上のことが理解できるほど物事がわかると言っているのだからな。それは傲慢だ。お前たちは僕を批評できる立場ではない。一度目は許すが、次は切る」
僕のことをほめる者は、場合によっては悪口もまた言うものだ。
友達ならそれでもいいが。
部下については違う。
上司についてあれこれと批評する者など、行動の邪魔でしかない。
「職務に精励し、与えられた仕事の範囲で最善を尽くせ。上位者をほめたりけなしたりするな。自分ができることだけに注力せよ」
文官たちは恐々と頭を下げた。
うむ。
とりあえず、ここはこれでよさそうだな。
後は少しだけ時間をおいて。
今後これ以上人が死ぬことはないのだと周知する必要がある。
平和に。
穏健に。
のびのびと。
政務に専念できる環境をつくるとしよう。
今回の処置とは真逆の流れになるが。
アイザック一派を生かしておくのは無理だ。
それはしかたがない。
一人の生贄も出なければ、おそらく愚昧なる民衆どもは納得しないだろうし。
さて。
次は革命軍か。
どうなることやら。
アイザック一派を粛清したことで納得して矛を収めてくれればいいのだが。
きっと無理なのだろうな。




