第10話「クラフト港につきました」
クラフトの港についた。
さて。
拠点をどうしようか。
とりあえず事前に確保しておいた高級宿に入るとして。
当面の作戦基地として、やくざに不法占拠されている事務所を襲うとしよう。
そうしよう。
「出入りだあああああ!?」
「や、やろうども! 剣を取れ! 敵襲だぞ!」
「くそっ! なんで正規軍が! 俺たちが何をしたっていうんだ!」
火をつけて煙でいぶし、出てくる構成員をつるべ打ちにする。
簡単なサービスゲームだ。
入り口で折り重なった死体が山となったので、消火活動をしてから乗り込んだ。
「て、てめえら、こんなことして!」
「ぐええっ!」
「ご、が、だ、誰か助けてくれえええええええ!?」
殺戮殺戮また殺戮。
屈強の正規兵たちが事務所に突入して剣で斬りまくった。
なにせ住居である。
砦などとは違い、敵襲を前提とした作りにはなっていない。
脅しを生業とする彼らは戦闘能力も低いため、問題なく制圧できた。
「降参だ! 降参する! もうやめてくれ!」
あわれを誘う声で泣きだすやくざたち。
いくらなんでもな。
ここまでの乱暴狼藉を貴族がやるとは思っていなかったのだろう。
とはいえ。
港町の中に武装勢力のアジトがあるというのもまた、普通のことではないが。
「ウォーレン様。全員を無力化し、捕虜として拘束しました」
「けっこう。一階の広間にでも集めて整理しておけ」
やくざの整理。
それは海賊と同じく、性奴隷と労働奴隷とに仕分けして。
怪我人は治療が面倒なので。
裸に剥いて放置だ。
正規兵の中でも特に残虐な者が、捕虜のやくざを弓の的にして遊びだした。
ぐえっ、ひぎゃっ、などと悲鳴をあげて。
やくざはばたばたと倒れた。
悲劇である。
かわいそうに。
とはいえ、彼らが今までにやってきたことを思えば、当然の報いでもあるが。
『やりすぎじゃないの?』
『そうでもない。こいつらは放火と殺人、営利誘拐の常習だと報告が入っている』
やくざといってもピンキリだ。
市井の治安を守る義侠集団みたいな善良なのもいるし。
押し込み強盗と変わらない悪辣な連中もいる。
ここの場合は後者。
クラフト港を運営している文官アイザックの私兵集団だ。
行政とやくざが手を組んだ場合、言葉ではあらわせないほどひどい事態になる。
犯罪は見て見ぬふり。
冤罪は着せまくり。
私腹を肥やすためにあちらこちらへと賄賂を要求し。
断った者はやくざに襲わせて。
家に火をつけたり家族を拉致したり、殴ったり犯したり殺したり。
やりたいほうだい。
悪そのもの。
文官アイザックの一派以外からは誰からも必要とされない邪悪の化身と言える。
彼らは死ぬべきだ。
神の目線でそれを断言して執行するのが、貴族の役割というもの。
『ちょっとかわいそうかも』
『自業自得だ。こいつらは本当の悪だからな。でなければここまではしない』
ウォーレンの元には幾度となく市民からの訴状が届いていた。
裏を取るまでもなく。
その悪行は遠くの街にまで響いているほどのすさまじいものである。
アイザックは人間の屑だ。
これほどわかりやすくのさばっている悪人というのも珍しい。
アイザック文官の一味を粛清するためには。
まずは力を奪い、手足をもぐところからはじめる。
海賊。
山賊。
やくざ。
傭兵。
武装商人や工作員。
すべて潰さねばならない。
冤罪などというものは殺した後で考えておけば済むことだ。
「ウォーレン様。よろしいのですか?」
「まあ、たまにはな」
「ほどほどのところで切り上げさせたく思いますが」
「一時間ほどは好きにさせてやれ。ガス抜きにはちょうどよかろう」
事務所は死屍累々。
そこかしこからうめき声が聞こえている。
はだかの怪我人を弓で狩り立てたのだから当然の結末である。
物陰や個室からは年若い女の悲鳴があがり。
手縄でしばられた美女などは、滂沱と涙を流しつつ屈辱の憂き目に耐えている。
そして。
げらげらと。
僕たちは勝者の笑い声をあげて、ぞんぶんに捕虜をなぶって楽しんだ。
『いやあ、いいことしたなあ』
『この光景をいいことだと評するマスターにドン引きなんですけど』
『悪が滅びたのだ。いいことだぞ』
『あくって……いやまあ、へんに相手の事情を汲み取っちゃうと鬱になるから、気持ちはわかるけどね』
妖精さんがぶつくさと言っているが。
うむ。
この世界に来た当初のことを思えば、彼女も丸くなったものだ。
『さっさと探せ』
『へーい』
麻薬の証拠、密輸入の証拠、市民階級を含めた人身売買など。
出るわ出るわ。
違法商売のあれこれが山と発見される。
隠し棚からは、港の文官あての賄賂に関する領収書などもあふれてきた。
「あきれたものだな」
「ウォーレン様。すぐに追及の用意をなされますか?」
「いや、今は伏せておく。厳重に保管しておけ」
「わかりました」
「他に何かあるか?」
「この事務所本来の持ち主から、返還要求があるかと思われますが」
「無視しろ。1年後にでも返すと伝えて置け」
ここは僕たちが使うのだ。
今現在は、戦闘の結果としてボロボロの状態になっているが。
手入れすればすぐに使える。
掃除、整理、洗濯など。
メイドを雇うまでの間は、とりあえず正規兵を使って基盤を整えていく。
『次はどうするの?』
『また襲撃だ。どうしてもな。お前と僕が行かなければ財産を根こそぎにできん』
財産を残したやくざ勢力は必ず再起する。
金があるからだ。
うらみももちろんある。
よくも仲間を。
家族を。
友達を。
そんな復讐心から公務員を闇討ちにして回るので、迷惑極まりない。
しかし。
金がなければ無理だ。
まとまれない。
テロ活動をするにしても金は必要なのだ。
組織化されていないやくざは単なる貧民である。
自警団が殴りつければそれで済む。
『この中から選べ。候補のうちで、いちばん金の匂いがするのは?』
『ここ』
広げられた地図を一瞥し、妖精さんはいつものごとく、行動の指針を示した。




