93 エルトとのデート②
私とエルトが王都を歩いていると、それなりに注目を浴びる。
けどだからって気軽に近付いてくる感じじゃないわね。
遠巻きにして噂してくる感じ。
こういうのは慣れているから気にならないわ。エルトの方もそうみたい。
「では、まず気に入った店から入ろう」
「ええ!」
「こういう時に女性は何を望むのか、という情報収集を部下から行ったのだが」
「情報収集」
「ちなみにライリーは協力してくれなかった」
「ふふ! ラーライラらしいわね!」
「一通り、定番のスポットらしい場所は押さえている」
「エルトが?」
「ああ」
「ふふふっ!」
なんだか似合わないわね! そういうことするんだ、エルトって。
「だからこそクリスティナの望むものを知りたかったのだが」
「そうねぇ……。それってあれよね、一般的なデートに対する女性の反応について、よね?」
「まぁな」
私はこれまでの自分の経験を思い浮かべる。
私には幼い頃から婚約者がいた。
その婚約はもうなくなっているけど、他の異性と交流する機会はとても少なかったと思う。
加えて……私が一般的な女性の感性を理解しているかはあやしいわね。
だいたいフィオナの受け売りなことが多い。フィオナこそ『女の子!』って感じの子なのよ。
私とは本当にタイプの違う人間で、でも芯のところは強い。
だからこそ私でも付き合いやすい友人だった。
「エルトが押さえているっていうのは?」
「まず有名だというスイーツ店だ」
「スイーツ店!」
およそエルトの口から聞けるとは思えなかった単語が飛び出てきたわね!
「嬉しいか」
「甘い物は嫌いではないわね!」
「なら行こう」
「うん!」
デートの内容は、エルトが調べてきたという定番の内容を踏まえたものだったわ。
スイーツ店でカフェを食べたわ。美味しかった。
それから服を見に行ったの。
貴族は服を買う時は商人を呼ぶものだけれど、こうして店に出かける場合もある。
「クリスティナ」
「なぁに?」
「戦勝祝賀会を兼ねた、王家主催のパーティーがある。お前にもその話は来たか?」
「ええ、報せは受けたわ。正式な招待状はまた後日らしいわね」
「そうか。参加する気はあるか」
「もちろん」
「なら、お前にドレスを贈りたい」
「……いいの?」
「当然だ」
「嬉しいわ!」
「……ああ」
私が喜ぶと珍しくエルトも頬を緩める。ふふ、こういう関係も悪くないわね!
そうして王都を巡って、なかなかに楽しめたと思う。
ふふふ、一般的なデート! やったわよ、フィオナ! 私でも楽しめたわ!
「クリスティナ」
「うん?」
「……話がある」
「話?」
今日一日、ずっと話していたけれど。
「俺たちの婚約についてだ」
「ああ」
エルトは真剣な顔つきをして、私の目をまっすぐに見つめる。
「俺の親と会ってくれるか」
「ええ!」
「今から」
「今から?」
首を傾げる。実は、離れてついてきていたリンディスとセシリアの方に視線を向けた。
二人とも、無言で距離を取って尾行するのが得意なのよね。
「じゃあ、行くわ!」
「よし」
「いやいや! お嬢、判断が早すぎます!」
あ、たまらずリンディスが声を張り上げたわ!
エルトとのデートで王都に出てから初めてね!




