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傾国の悪女になんかなりません! ~蛮族令嬢クリスティナは予言された破滅フラグを【カンスト】パワーでへし折ります~  作者: 川崎悠
四章 傾国の悪女になんかなりません!

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89 女伯爵クリスティナ②

 王都に凱旋し、アルフィナ伯爵を賜った私は、ひとまず王宮で滞在する部屋を与えられたわ。

 王位継承権五位はそのまま。

 しばらく継承権の放棄はしないでほしいという陛下のお達しね。


 まぁ、今はいろいろと国内が騒がしいままだし、問題が多いもの。

 教団の目的は信仰の破壊でしょうけど、それは同時に王国の破壊も狙っているのと同じ。

 レヴァンが王太子なのは変わらなくても、王位継承権保持者が数人健在のままの方が安定しているといえるから、教団にとって不都合な存在ってやつよ。


 教団関係の問題が解決しないかぎり、おいそれと王都は離れられない。

 とはいえ、私やエルトが邪神をことごとく叩き潰してきたのは意味があったはずで、当分大人しくしているか、或いは追いつめられて大胆な行動に出てくるか。そこは読めないわ。


 王宮が当面の目標として掲げているのは予言の聖女アマネの確保。

 アマネを確保したからって教団の尻尾が掴めるとも思えないけど、押さえておいて意味がないとは私も思わない。


 現在、一番あやしいのは何を隠そうマリウス家。私の実家よ。


「あ」

「どうされましたか、お嬢」


 王宮の部屋で寝泊まりするけど、王宮使用人を自由に使える立場とも違う。

 あくまでゲスト、客人扱いね。

 ただ近くの部屋にリンディスとセシリアに待機してもらっている。

 すでに一晩過ごし、これから活動しようっていうところ。


「私の今の正式な名前ってどうなるのかしら」

「……ええと」


 ちなみに爵位に付属する名と、爵位持ちの名前が必ずしも一致するとは限らないのよ。

 今回の場合、確実なのは私が『アルフィナ伯爵』であること。

 でも、アルフィナって名前は領地の名前だからね。


 私は変わらず『クリスティナ・マリウス・リュミエット』のままのはず。

 でも、勝手に名乗ったアルフィナ姓は無視されたものの、アルフィナ領は確かに賜った。

 さらに凱旋式に集まった大勢の前で陛下は私を『クリスティナ・イリス・リュミエット』と呼んだわね。


 マリウスの家名を外したのは、私がマリウス家に所属しているという印象を打ち消すためかしら?

 場合によってはマリウス侯爵家の取り潰しも考慮している様子だからね。


 マリウス家の取り潰しの可能性もあるからこそ、私の王位継承権を保留にしているのもあるでしょう。

 場合によっては私にマリウス侯爵家を継がせ、公爵にさせるなんてことも考えていると思う。

 その根拠は、陛下が私を見る表情ね!

 私の実のお父様、王弟アーサー殿下のことを慈しんでいらして、私にもその感情を向けているみたいだった。


 でも、流石に公爵位とマリウス領はねぇ……。

 今までその可能性を考慮していなかったから、あんまり魅力に感じないわ。

 裕福な領地だから、引き継いだら利益も大きいのでしょう。

 私の実のお母様、マリウス侯爵の姉であるセレスティアお母様はどう考えるかしら。


「確かめますか」

「そうね。せっかく王宮にいるのだから」


 足場を固めるという意味でも、自分の立場をはっきりさせておかないとね!



 陛下から賜った書状をもとに動いて、王宮内の担当部署に出向く。

 こういうのって面倒だけど、流石に爵位の管理は王宮でやらなきゃよねー。


 王宮内を歩いているだけで注目を浴びる。

 なんだかんだ王妃教育を受けていた頃もあるから、慣れたものなんだけど。

 婚約破棄騒動から時間も空いたから、私を見る目も変わったかしらね。


 然るべき手続きを取り、確認する。

 そうすると、どうやら記録上の私の名は変わらず『クリスティナ・マリウス・リュミエット』のままみたい。

 でも『アルフィナ伯爵』であることは正しい。

 爵位と名前が一致しないパターンってことね!


 伯爵位を個人として賜った時点で、マリウス籍を抜けるかどうかは私の意思でも決められる。

 マリウス侯爵は、私が婚約破棄されて王都を追放になった時に除籍してもよかったでしょうに。

 とくにその処理はしなかったみたいね? 何か理由があるのかしら。

 実子じゃなかった以上、王太子の婚約者でなくなった私に用なんてなさそうなものだけど?


 『イリス』の名は、流石に正式な名としては処理しないみたい。

 まぁ、洗礼名というか。神殿には記録されているかもしれないわね。


 陛下からの書状だけではなく、公式証書を王宮で発行してもらう。

 『私がアルフィナ伯爵よ』って書類ね!

 ちなみに陛下の勅許印(ちょっきょいん)が必要になるのよ。

 軽々しく発行される物じゃないからね。とくに伯爵位以上になると。


 ただ、それは事前に用意されていたらしく、印が押された状態ですぐに発行してもらえたわ。


 次に必要な物といえば……そうね。


「紋章院への登録かしら」

「……そうですね」


 伯爵位より上の貴族になると固有の紋章、つまり家紋があるの。

 私が王都を出る時に渡された黄金のペンダント『貴族の証明』に固有の紋章を刻み込んで証明にできるわ。

 騎士団を保有していれば、騎士のマントや旗にその紋章が使われることがあるわね。

 あと伯爵として活動するには印章が必要になるかしら。

 書類に押す爵位持ち当人固有のスタンプね。

 印章も王宮で登録していたら『伯爵である私が認めたわ!』って意味で使えるのよ。

 それも紋章院の管轄ね!


「家紋と印章作り、ですか……」

「すごいでしょう、リン? 伯爵様だもの、私! フフン!」

「……普通にすごいことなので褒めにくいですね」

「なんでよ!」


 素直に褒めない癖がついているわね、リンディスは。


「あとはマントにも欲しいわねー!」

「よろしいのですが、お嬢にそのようなものを準備できる資産がおありで?」

「……ないわね!」


 領地収入なりがあって、そういうのを準備するのよね。

 王宮がやってくれないのかと思うけどケースバイケース。

 ただ、そういった手続きくらい自分でこなせなくて何が伯爵? という問題もある。

 要するにそれくらい伯爵になるつもりなら自分で揃えてみせろ、っていうこと。


 この場合、いくつか案はあるわ。

 その一、陛下におねだりする。

 王弟の娘補正で陛下は私にかなり甘くなっている。

 おねだりすればいけそうだわ! やったことないけど!


 その二、エルトにおねだりする。

 まだ正式な婚約手続きも済んでいないのに、それはしたくない!

 受け入れてくれそうな雰囲気があるから余計に頼めないわ!


 その三、自分で稼ぐ。

 今の私は【天与】を使いこなしているし、ドラゴンのクインに乗って遠出も簡単。

 ギルドなどで仕事を請け負ってお金を稼ぐのもいいかも!


「やっぱり自分で稼がないと格好がつかないわよねぇ」


 じゃあ、行こうかしら、ギルド! 久しぶりだわ!


「あのぅ、クリスティナ様」

「ん?」


 王宮の廊下で文官の一人に呼び止められた。


「お部屋にいらっしゃらなかったので、こちらを……」

「なぁに?」


 書類を手渡される。


「王命の遂行、並びに魔獣災害の解決に尽力されたことに関する褒賞金(ほうしょうきん)についてです」

「褒賞金!」


 私は書類を確認する。王宮の廊下で。

 リンディスやセシリアたちと一緒に見ると、まぁ、けっこうな額ですこと。


「クリスティナ様は現在、王宮の部屋を拠点とされているとのこと。そのまま部屋にお運びするか、或いは王宮でいくぶんか管理を任せたまま、受け取りを後日になさるか」

「そうねー……」


 地方ならともかく、王都にならお金を預ける施設もある。

 でも私の場合、王宮管理にしてもいいのかしら。

 この資金は私が伯爵として活動するための資金に充てることになるわよね。

 今すぐにアルフィナ領に還元するには、ちょっと何から手をつけていいか。


 大きな買い物をする時は、正式な手続きを取って王宮で金銭を受け取って、といえる。


「だいたい管理を任せたいけれど、いくらか運んでもらうわ。あとで正式に手続きを進めるけど、どこに届け出ればいいかしら」

「それでしたら……」


 というわけで!

 どうやら王都での活動資金は得られるみたい!

 フフン! そうしたら次は家紋と印章の作成ね!


「リン、セシリア、私ちょっと楽しくなってきたわ!」

「……何よりです」

「はい。そのまま婚約についてはお忘れください、お嬢様」

「忘れないわよ!?」


 でも、エルトだってようやく王都にきちんと帰ってこられたんだもの。

 家でゆっくりする時間は必要だろうって昨日は返したのよね!


「それから」

「あら、他にも何か?」

「これはまだ口頭伝達となりますが……。近々、王家主催のパーティーが開催されることになる予定です」

「パーティー」

「戦勝祝賀会に近いものですね。クリスティナ様にはぜひ参加していただきたいとのこと」

「あー……」


 当然あるわよねぇ、そういうパーティー。

 ということはドレスとか用意しないと?

 マリウス家に戻る気はないから余計に。


「なんだかいろいろと大変ね!」


 新米伯爵として忙しい日々だわ!


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