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傾国の悪女になんかなりません! ~蛮族令嬢クリスティナは予言された破滅フラグを【カンスト】パワーでへし折ります~  作者: 川崎悠
四章 傾国の悪女になんかなりません!

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88 女伯爵クリスティナ

「こちらで手続きを済ませ、伯爵位を得た以上、領地に帰ることもできる。だが、クリスティナ。其方にはしばらく王都に滞在してもらいたい」

「教団の対処ですね?」

「そうだ」


 邪神ロビクトゥスとやらを信仰する邪教団。

 それが王国を苦しめていた一団となっている。

 魔獣災害と各地の邪神を倒したことにより、あとは連中を潰すだけになったわ。


 ただ、またあの邪神が現れるかもしれない。

 そういった時のために王都の守護として残った方がいいっていう話ね。


「伯爵としての身分と同時に、この一件の対処に当たる役職を任せ、クリスティナの、王宮での出入りを自由にする権限を与えるつもりだ。無論、王宮に部屋も用意する」


 これは陛下の、王弟殿下の娘としての憂慮も多分にありそうね!

 どの道、やるべきことだったし、押しつけられたというより、元から欲しかったものを用意してもらっていた感覚よ。


「そちらもお受け致しますわ、陛下」

「……ありがとう。感謝する、……伯爵」

「ふふ、はい、陛下」


 女伯爵クリスティナよ!

 女性が爵位を持つこと自体はできるけれど、少数だからね!

 これは目立つし、自慢になるわよ~?


「それから、ラトビア嬢」

「は、はい。陛下」


 部屋に一緒にいたルーナ様に今度は話を振る陛下。

 今さらだけど国王陛下、王太子を前に、私とルーナ様が揃っているってすごいわね。

 壁側には使用人たちが控えているとはいえ、王太子ぶん殴り事件もなんのその。

 信頼されているのがわかるわ。


「其方にも爵位を授ける案が出ている。だが……」

「は、はい……爵位……」

「ラトビア男爵との話し合いが必要だ。それに、ここだけの話にまだ留めてもらいたいのだが」

「はい」

「ラトビア男爵家そのものに陞爵(しょうしゃく)の話もある。ラトビア嬢の功績を家門に与えるという形だな。……その際、近隣の領地を接収して、伯爵位を与えることになる」

「えっ」


 近隣の領地を接収!?

 簡単におっしゃるけど、国王陛下だっておいそれとできることじゃないわよ?


「驚くのも無理はない。レヴァンもラトビア嬢、ラトビア領の隣領であるディグル子爵家を覚えているか?」

「ディグル子爵家……。あ、もしかして」


 レヴァンには心当たりがあるみたいね。

 ルーナ様は家名を聞いただけで少し体が強張っているわ。


「ルーナに結婚を迫っていた子爵令息の家ですか」

「そうだ。……聖女が、ラトビア嬢が追い詰められていることを予言し、かつ【天与】を目覚めさせるとレヴァンに救出へ向かうように言った。実際にディグル子爵令息は身分を盾にラトビア嬢との婚姻を迫って困らせていた」


 これは私に向けての説明ね。

 そういえば最初にチラリと聞いたことがあるような。

 それに『予言』の【天与】でも視たような。


「そのディグル子爵家だが、……これも聖女の予言があり、調べさせていた」

「もしかして爵位剥奪レベルの悪事を?」

「……ああ。脱税・不正申告、それにラトビア家への過干渉の継続。加えて教団に与していた痕跡が出ている」

「うわぁ……」


 そんなところに教団の影が。


「アマネの功績ですわね?」

「……そう、なのだが」

「アマネが内通していたわけではないと思いますわ、陛下。ディグル子爵とアマネが取引をしていて実態を知っていたとか。そういうのではありません。アマネは本物の異世界人で、予言書は確かに見ています」

「……そうか」


 陛下もアマネを褒めればいいのか、罰すればいいのか悩むわね。


「そのため、というわけではないが、都合よくラトビア領の隣領ディグル子爵家が取り潰しとなることは決まっている。調査の終了はまだ先だがな。一時、領地は王家預かりとなるが、ラトビア嬢の功績に見合うものとして接収した領地をラトビア家に委ね、男爵家・子爵家を合わせた領地を管理する者として伯爵に据えるつもりだ」


 なるほど。これってアレだわ。

 ルーナ様を王太子レヴァンの婚約者にするための準備ね!

 【天与】を発現すれば王族の伴侶になれるのがリュミエール王国よ。


 でも、王妃となるからには実家が太い方がいいのは間違いない。

 というわけで、都合がいいから伯爵にしちゃおう作戦ね!


「ラトビア嬢も一度は実家に帰ってかまわないが。今後について両親とともに話し合いたい。王宮に滞在するための部屋も用意しておく」

「は、はい、陛下。ご配慮痛み入ります」


 陛下がまたちらりと私に視線を向ける。

 何かを探るような感じ。あれかしら。

 ルーナ様がレヴァンの婚約者ロードを邁進しているけど、文句はないな? あるならぜひ言ってくれ的な。

 私はニッコリと陛下にスマイルを返してあげたわ! ノーセンキューよ!


「……はぁ。それはそうと、クリスティナ」

「はい」

「……ベルグシュタット卿と婚約するそうだな」

「はい、陛下。おっしゃるとおりです」

「では、いよいよベルグシュタット家も陞爵を受け入れてくれるだろうか」


 はて。

 ベルグシュタット家は今まで陞爵の話を断ってきた歴史があるのよね。

 でも、いろいろおあって伯爵に留まっていたの。

 それがなぜ急に心変わりすると思うのか。


「クリスティナが望むなら、エルトは喜んで侯爵になると思うよ」

「……ええ?」


 レヴァンが補足してくれる。

 エルトとレヴァン、親友らしいから考えがわかるのね!

 でも、正直に言って何も決めていない。

 アルフィナ領に帰る気もある。でも、それだとエルトと結婚する場合、どうするか。


「……すぐに決めずともいい。クリスティナ。今日は王宮へ泊まるか? マリウス家には行かないだろう。自由に使える部屋を用意している」

「ありがとう存じます、陛下」



 陛下との会談が一旦終わり、自由行動の時間になる。

 ルーナ様はレヴァンと残って話をするみたい。

 ずっと黙って控えてくれていたリンディスとセシリアを連れて、王宮に用意された部屋へ移動する。


「フフン! どう? 私、アルフィナ女伯爵になったわ!」

「おめでとうございます、お嬢様」

「今回は流石におめでとうございます、お嬢」


 今回は流石にって何よ!


「想いの外、高い爵位を得て、アルフィナ領も正式に受領したけど。王都でやることができちゃったわね」

「はい、そうですね」


 領地にはカイルとヨナがいる。

 いずれ帰るのは間違いないとして、それはいつになるかしらねぇ。


 王宮の部屋を物珍しく物色して、今日はここに泊まるのかしら、なんて話をしていたら。

 コンコン、とノックが聞こえてくる。

 セシリアに扉を開けてもらうと、そこにはエルトがいた。


「あら、エルト」

「……陛下との話は終わったか、クリスティナ」

「ええ! どうしたの?」

「……お前に会いに来たのだが?」

「私に会いに」


 凱旋式が終わってから陛下に呼び出されて会談した。

 凱旋式の時点で会っているから、別に半日も離れていないわよ?


「クリスティナ」

「なぁに?」


 エルトが部屋に入ってきて、私の手を取る。


「これから、お前ともっと一緒に過ごしたい。宝石以外にも欲しいものがあれば言え」

「……あらぁ」


 エルトって、けっこうまめな性格しているわよね!

 アルフィナ領にいた時もいろいろと支援を考えてくれていたし。

 こうして王都で、つまり近くにいたら、もしかしてタガが外れるのかしら!


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