85 王都への凱旋
カイルとヨナをアルフィナ領に残し、離れる。
エルトを隊長とした第三騎士団にルーナ様、レヴァンと一緒に王都へ向かうことになったの。
私と一緒に来てくれるのはリンディスとセシリアが同行してくれる。
アルフィナ領に来てくれていた騎士三人も一緒に帰還よ。
そして私はクインを連れての帰還。もうそれだけで目立つこと。
竜騎士って奴よね、私! 騎士爵持ってないけど!
王都からアルフィナ領までは一ヶ月かかった。
でも帰りはそこまでかからないみたい。
まっすぐ帰るからっていうのもあるわね。
そういえば行きの時はジグザグに進んだんだったわ。
今はクインに乗って飛び回れるから行き道と同じ動きをする必要がない。
それにルーナ様たちも、もう遠征は手慣れたもの。
大所帯だけど野営に苦労することはないし、魔獣が出てきても戦力が十分だから対処には余裕があるわ。
そうして進んで、アルフィナ領を出てから二週間ほど。
行きの半分もかからない時間で王都がもうすぐそこまでの場所まで辿り着いた。
ここに来るまで邪神と遭遇することもなかったわ。
私とエルト、ルーナ様とで壊滅させた分で打ち止めってところかしら。
『予言』の【天与】で視た、アマネが知っているはずの予言。
そこでは魔獣災害が一段落したあと、『救国の乙女』と人々に呼ばれるようになったルーナ様がレヴァンの婚約者に決まる……未来もあるはず。
でも、この状況だと、それはどうなるのかしらね。
あんまりアマネの言うように決めつける気もしないし。
ルーナ様はどう考えているのかしら。
私とレヴァンが再婚約することはないわ。
もう私はエルトと交際しているわけだし。正式な婚約はまだだけど!
王都側の状況をまとめると、こうよ。
まず、予言の聖女アマネは失踪中。
マリウス侯爵家に潜伏している疑惑はあるけど、確かではない。
『光翼蝶』の【天与】を持つ、フェリシア・ルフィス公爵令嬢は教会入りしているらしいわ。
どうやら公爵家ではなく教会を後ろ盾に動いているみたいだけど、なぜそうしているのかは不明。
フェリシア様の母親は、公爵家に嫁いだ王妹殿下。
でも、私の実親で、王弟だったというお父様と同じく亡くなっている。
その口振りから、母親の仇である教団をどうにかしたがっている様子。
私の本当の両親について。
実父がアーサー・ラム・リュミエット王弟殿下。
実母がセレスティア・マリウス・リュミエット侯爵令嬢。現侯爵の姉。
籍を入れていたかまでは不明だけど、二人は隠れて結ばれ、私が生まれた。
お母様は女騎士だったみたいね。
私の両親はともに、すでに亡くなっているわ。
お母様のことはともかくとして、お父様のことは大々的に王都で知れ渡っているらしいのよ。
私は、とっても面倒くさいことに王位継承権を有しているみたい。
王太子であるレヴァンが考えてくれたんだけど。
王位継承権一位がレヴァンで、その妹の王女殿下が二位。
三位がルフィス公爵家にいるというフェリシア様のお兄さんで、フェリシア様が四位。
なんと私は、王位継承権五位になるという。
ルフィス家の二人が私より継承順位が上なのは公爵家だからね。
元々、公爵家というのは王家の血筋を残すためにある家門だから。
そういう事情だからフェリシア様は、私が公爵位を賜ることもできると考えているようだった。
また、私たちの持つ特異な力、【天与】についても影響がある。
リュミエール王国の国教は三女神教。
三柱の女神、イリス神、シュレイジア神、メテリア神を信仰しているの。
神殿の影響力は大きくて、ある意味で王家以上の時もある。
そんな三女神の象徴となるのが『光』『薔薇』『蝶』なのよ。
私とルーナ様、フェリシア様の【天与】がそれらに合致している。
『毒薔薇』の【天与】。
『聖守護』の【天与】。
『光翼蝶』の【天与】。
これがあるため、私たち三人は女神の現身、代行者、女神の巫女だなんだと様々な呼び方をされているみたい。
つまり、宗教的な超重要人物扱いね!
さらに私が邪神と戦って倒していることまで見られて、広まっているみたい。
主にフェリシア様のせいで。
そういう、いろいろがあったせいで私の名誉はとうに回復しているらしいわ。
王太子であるレヴァンが正式な謝罪を私にしたことも大きい。
しかも、その光景もまたフェリシア様のせいで広まったとか……。
何してくれているのかしらね。
王家の立場が危ういということで、私とレヴァンの再婚約がー、なんて話もそこにつながってくるの。でも、それはもうないってこと。
そうして、とうとう王都に辿り着く。
長かったんだか、短かったんだか。なんだか懐かしいわ。
人々の熱狂に迎えられながら救国の乙女、ルーナ様たちが王都に帰還する。
彼女のそばに控えて白い馬に乗るのは姫騎士ラーライラ・ベルグシュタット。
どこかの国のお姫様のようにさえ見えるラーライラが、屋根のない馬車の上に立って人々に手を振るルーナ様を護衛している。
それに続いて凱旋用のマントに身を包んだ第三騎士団が華々しく王都の表通りを練り歩いた。
騎士たちの先頭では、立派な黒馬に乗り、黒地に黄金の装飾で飾った騎士服のエルトが行く。
誉れ高き黄金の獅子。金色の髪と翡翠の瞳を携えた美男子。
金獅子のエルト・ベルグシュタット。
「ふふ。輝いてるわね! クイン。あれが私の婚約者よー」
『キュルァ!』
「ルーナ様より目立っちゃダメなのにねー。ん? 目立っていいのかしら?」
『キュルゥ?』
凱旋する彼らの光景を、私は空高く飛んでいるクインの背中から見下ろしているのよ!
一緒に帰るんじゃなくて、ドラゴンの背に乗っての帰還ね!
「中央広場に差しかかったわねー。じゃあ、そろそろ行くわよ! クイン!」
『キュルゥアア!』
白銀のドラゴンに乗り、エルトから贈られた赤いマントと宝石を飾った装い。
ふふ、マントって格好いいわよね!
『キュルァアアアア!』
人々が空から舞い降りる白銀のドラゴンの登場に驚き、見上げる。
凱旋するエルトたちの前に開けた場所へ、私はクインと共に降り立ったわ!
「クリスティナ・イリス・アルフィナ・リュミエット! 王都に帰還したわ!」
フフン! と私は胸を張ったわよ!




