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傾国の悪女になんかなりません! ~蛮族令嬢クリスティナは予言された破滅フラグを【カンスト】パワーでへし折ります~【書籍化】  作者: 川崎悠
三章 民なき領地

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81 告白

 私はエルトの言葉に返事をしようとする。


「待て、クリスティナ」

「んあ」


 でも、なぜかエルトに止められたわ。手を前に出して私の言葉を遮る。


「正しく伝わらなかった気配がする」

「……ええ?」

「すごいですね、ベルグシュタット卿。よくわかりましたね」


 なんでリンディスが感心しているのかしら!


「クリスティナ」

「なぁに? エルト」

「俺はお前が好きだ」

「私も、」

「俺はクリスティナのことを異性として好意を持ち、恋愛感情を抱いている」

「…………」

「俺は一人の男として、クリスティナのことを、一人の女性として好きだ。これは恋愛感情だ」

「…………」

「だから、俺は個人としてお前が欲しい。ベルグシュタットの騎士隊長としてではない」

「…………」


 なんかすごく言い切られちゃったわ!

 私はエルトの目を見る。ジッと見る。無駄にちょっと睨んだりもしてみる。

 あと無駄に笑ってみるのも。

 でもエルトは私から目を逸らさなかった。


「……よくわからないわ」

「……そうなのだろうな」


 かつてレヴァンと婚約者だった時。私はレヴァンと家族になりたかった。

 でも、それはあの家で私が育ったから。

 私が欲しいのは恋愛対象ではなく家族だった。レヴァンはその対象にすぎなかったの。


 今はもうそんな気持ちはないわ。

 だって私の家族はリンディスたちよ。

 マリウス侯爵たちが私の実の親ではないことも知っている。

 だからリカルドお兄様やミリシャのことだって、もう遠慮はいらないとも。


 恋愛感情はよくわかっていない気がする。

 もちろん、言葉では理解できるわ。他人のことなら、そういうものだと。

 けれど自分の感情として受け入れられるかは別の話。


「俺を嫌うか、クリスティナ」


 エルトは私の手を取る。力強く、でも私が振り払える程度の力で。


「……ううん。私は貴方が嫌いじゃないわ」

「俺もだ。では、俺と一緒に生きることは考えられないか」

「一緒に……」

「ともに並び、騎士として剣を持つのもいい。お前が望むなら、父に陞爵を受けるように伝え、侯爵位を賜ろう。その際、再びライリーと対立することにはなるが、ねじ伏せる。その時、お前は侯爵夫人となるが、お前らしく生きてくれればいい。そして」


 エルトは私の手を取り、まっすぐに見つめたまま続ける。


「お前が爵位など要らないと。自由こそを求めるというのなら、俺はすべてを捨てよう。ベルグシュタットはライリーが継げばいい。俺がお前の隣に立つ。どこまでもお前を追いかけてみせよう。剣さえあれば、どこででも生きていける。俺は自由騎士となり、お前のそばにいる」


 思いきりラーライラの人生が振り回されているわね!

 でも、そっか。

 エルトが一緒か。

 それって、なんだか……すごく。


「……リンディスたちは私の家族なの」

「ああ」

「私が欲しかったのは家族だったわ。でも、その願いはもう叶っているのよ」

「ああ」

「だからこれ以上、望むものなんてない。でも」

「ああ」

「……エルトがいなくなるのは嫌だと思う」

「そうか」

「だからどうなのかって言われるとわからなくて、どうしようかしら?」

「そうか」

「私って、この告白を受けるべきだと思う? エルト」

「お前次第だが……」

「そうなのよね」


 うーん。どうしようかしら?


「なるほど、わかった」

「うん?」

「クリスティナ、決闘だ」

「……うん?」


 決闘?

 エルトが私の手を離して、少し離れる。あら、ちょっと寂しいわね。


「俺はお前にもう一度、決闘を申し込む」

「決闘」

「俺が勝てば、俺と結婚してくれ、クリスティナ」

「あら」


 それはシンプルでいいかもしれないわね!


「じゃあ、私が勝てば……」

「お前の望むように」


 エルトは服のポケットから白い手袋を取り出し、私に手渡した。

 決闘の申し込みのサインね!

 うん、いいわね! それなら!


「私が勝ったら、エルト・ベルグシュタット! 貴方は私の……」

「クリスティナの」

「──婚約者(フィアンセ)になりなさい!」


 そして、私は手渡された手袋をエルトの胸に投げ返した。

 決闘の申し込み返しよ!

 エルトは投げつけられた手袋を落とさずに受け止める。


「よし、いいだろう。その条件で決闘だ」

「フフン! 望むところよ!」


 私は胸を張ったわ!


「いやいや、何を言っているんですか、貴方たちは!」


 満足している私たちに対してリンディスだけ、なぜか騒いでいるわね!


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