81 告白
私はエルトの言葉に返事をしようとする。
「待て、クリスティナ」
「んあ」
でも、なぜかエルトに止められたわ。手を前に出して私の言葉を遮る。
「正しく伝わらなかった気配がする」
「……ええ?」
「すごいですね、ベルグシュタット卿。よくわかりましたね」
なんでリンディスが感心しているのかしら!
「クリスティナ」
「なぁに? エルト」
「俺はお前が好きだ」
「私も、」
「俺はクリスティナのことを異性として好意を持ち、恋愛感情を抱いている」
「…………」
「俺は一人の男として、クリスティナのことを、一人の女性として好きだ。これは恋愛感情だ」
「…………」
「だから、俺は個人としてお前が欲しい。ベルグシュタットの騎士隊長としてではない」
「…………」
なんかすごく言い切られちゃったわ!
私はエルトの目を見る。ジッと見る。無駄にちょっと睨んだりもしてみる。
あと無駄に笑ってみるのも。
でもエルトは私から目を逸らさなかった。
「……よくわからないわ」
「……そうなのだろうな」
かつてレヴァンと婚約者だった時。私はレヴァンと家族になりたかった。
でも、それはあの家で私が育ったから。
私が欲しいのは恋愛対象ではなく家族だった。レヴァンはその対象にすぎなかったの。
今はもうそんな気持ちはないわ。
だって私の家族はリンディスたちよ。
マリウス侯爵たちが私の実の親ではないことも知っている。
だからリカルドお兄様やミリシャのことだって、もう遠慮はいらないとも。
恋愛感情はよくわかっていない気がする。
もちろん、言葉では理解できるわ。他人のことなら、そういうものだと。
けれど自分の感情として受け入れられるかは別の話。
「俺を嫌うか、クリスティナ」
エルトは私の手を取る。力強く、でも私が振り払える程度の力で。
「……ううん。私は貴方が嫌いじゃないわ」
「俺もだ。では、俺と一緒に生きることは考えられないか」
「一緒に……」
「ともに並び、騎士として剣を持つのもいい。お前が望むなら、父に陞爵を受けるように伝え、侯爵位を賜ろう。その際、再びライリーと対立することにはなるが、ねじ伏せる。その時、お前は侯爵夫人となるが、お前らしく生きてくれればいい。そして」
エルトは私の手を取り、まっすぐに見つめたまま続ける。
「お前が爵位など要らないと。自由こそを求めるというのなら、俺はすべてを捨てよう。ベルグシュタットはライリーが継げばいい。俺がお前の隣に立つ。どこまでもお前を追いかけてみせよう。剣さえあれば、どこででも生きていける。俺は自由騎士となり、お前のそばにいる」
思いきりラーライラの人生が振り回されているわね!
でも、そっか。
エルトが一緒か。
それって、なんだか……すごく。
「……リンディスたちは私の家族なの」
「ああ」
「私が欲しかったのは家族だったわ。でも、その願いはもう叶っているのよ」
「ああ」
「だからこれ以上、望むものなんてない。でも」
「ああ」
「……エルトがいなくなるのは嫌だと思う」
「そうか」
「だからどうなのかって言われるとわからなくて、どうしようかしら?」
「そうか」
「私って、この告白を受けるべきだと思う? エルト」
「お前次第だが……」
「そうなのよね」
うーん。どうしようかしら?
「なるほど、わかった」
「うん?」
「クリスティナ、決闘だ」
「……うん?」
決闘?
エルトが私の手を離して、少し離れる。あら、ちょっと寂しいわね。
「俺はお前にもう一度、決闘を申し込む」
「決闘」
「俺が勝てば、俺と結婚してくれ、クリスティナ」
「あら」
それはシンプルでいいかもしれないわね!
「じゃあ、私が勝てば……」
「お前の望むように」
エルトは服のポケットから白い手袋を取り出し、私に手渡した。
決闘の申し込みのサインね!
うん、いいわね! それなら!
「私が勝ったら、エルト・ベルグシュタット! 貴方は私の……」
「クリスティナの」
「──婚約者になりなさい!」
そして、私は手渡された手袋をエルトの胸に投げ返した。
決闘の申し込み返しよ!
エルトは投げつけられた手袋を落とさずに受け止める。
「よし、いいだろう。その条件で決闘だ」
「フフン! 望むところよ!」
私は胸を張ったわ!
「いやいや、何を言っているんですか、貴方たちは!」
満足している私たちに対してリンディスだけ、なぜか騒いでいるわね!




