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傾国の悪女になんかなりません! ~蛮族令嬢クリスティナは予言された破滅フラグを【カンスト】パワーでへし折ります~【書籍化】  作者: 川崎悠
三章 民なき領地

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73 レヴァンの謝罪

「ルーナ様!」

「はい!」


 エルトに腕から離れ、ルーナ様に呼びかける。

 彼女も私の考えがわかったみたいで邪神の残骸に向かって手をかざす。


「『聖守護』の【天与】──浄化の光よ!」

「『毒薔薇』の【天与】──浄化の黄金薔薇!」


 私とルーナ様の放つ光と薔薇が共鳴し合って、邪神の体を少しも残さず浄化し、霧散させていく。

 やっぱり協力した方が強力になるのは間違いないわね!

 これも女神の巫女だからってことかしら?

 本当に元々、三女神の力なのかもしれないわね!


 ダブル浄化で跡形もなく消したことで騎士たちから歓声が上がる。

 遅れてリンディスとクインがやってきて降り立った。

 クインにも別の歓声が上がっているわねぇ。


「クリスティナ、怪我はないか」

「ええ、エルト。私は大丈夫よ。そっちは?」

「俺は問題ない」

「よかったわ!」

「ああ、助かった」

「まぁ、私が助けるほどでもなかったみたいだけどね?」

「そうでもないだろう。今回のやつは、かなり性質が悪いようだったからな」

「そうなの?」

「ああ。切っても再生するのが奴らの特徴だが……今回は、それがより強力だった」


 そうだったのかしら。疑うわけじゃないけど、あっさり消滅していっているわよね。


「クリスティナの協力があったからだろう」

「なるほどねー」


 ルーナ様との相乗効果か、あるいは私の【天与】が強力なのかね。


「とりあえず……」


 邪神は消滅。ルーナ様たちも無事。

 ルーナ様が無事なら怪我人の治療もできるでしょう。

 エルトとは合流したところで手紙をもらったはず。

 王都からこっち、いろいろとあったんだろうってことはわかるわ。


「…………」


 私はエルトを見る。エルトも私を見ていたから、バチッと目が合ったわ。

 そのまま互いに目を逸らさずに見つめ合う。


「エルト、私は」

「そこまでよ、クリスティナ!」


 私が話そうとしたところでラーライラが声を張り上げて止めてくる。

 ええ……? 何かしら。


「私は認めないわよ!」

「何を?」

「だから……認めないわ!」


 うん、だから何を? わけがわからなくて首を傾げる。


「ライリー、お前は何を言っているのだ」

「くっ……! 言葉にしたくない……!」

「ライリーさん……」


 あら、ルーナ様とラーライラはいつの間にか仲良くなっているみたい。

 いえ、元々の二人の関係を知らないけどね、私。

 私とは別に王国中を旅してきた仲なのよね! ちょっと寂しいかも。


「……クリスティナ」


 集まってきたのは騎士たちだけじゃなく、レヴァンもだった。


「レヴァン」


 エルトとは二回会っているけど、レヴァンと会うのはあの日以来ね。

 そう、婚約破棄もどき(・・・)以来。

 正確には話が決まる前に私がぶん殴ったのよね!

 見事、私の有責・有罪による破棄だったのよ、ふふ。


「僕は……君に謝らなければならない」

「うん?」


 何を? 婚約破棄? あれはまぁ、私は後悔していないけど。

 それでも先に殴ったのは私だからねぇ。

 大人しくしていれば、もう少し有利に事を運べた可能性がある。

 でも殴ったのよ。


 私は話がわからないから、近くにいるエルトに視線を向ける。

 エルトは無言で首を横に振って、レヴァンと向き合うように促がした。

 これは『聞いてやってほしい』ということかしらね。


「何を謝るの?」


 レヴァンったら、申し訳なさそうに縮こまっている。

 王太子なんだからシャキッとしてほしいわね!


「僕は、あの時……婚約者である君を信じ切れなかった。そして、君を軽んじた。だから、そのことを謝りたい。すまなかった!」


 そうして素直に頭を下げるレヴァン。

 別にもう、そのことはいいのだけれど……。とは、言わない方がいいかしら。

 私はレヴァンをまっすぐに見る。


「レヴァン・ラム・リュミエット王太子殿下」

「あ、ああ」

「背筋が曲がっていてよ?」

「え……」


 ニッ! と笑ってみせる私。


「私も以前とは違うわ。今では【天与】を使いこなせている。あの時の貴方の考えに思うところはあるけれど、それはもう過ぎたこと。あの時点での私を信じられないことくらい、私にも理解できているわ。でも、ごめんあそばせ。私は、あの時、貴方を殴ったことを後悔しない。これから貴方の行く道が、もし間違っているのなら、何度でもぶん殴って(・・・・・)さしあげますわ」


 フフン! と言い切って胸を張る。

 王太子相手に偉そう、というやつよ! リンディスから無言の訴えが聞こえてきそうだわ!


 レヴァンは目を見開いて驚く。自信満々な私を呆然と眺めてから……。


「……はは。敵わないな、君には」


 苦い笑顔を浮かべる。

 まぁ、ケジメをつけておくのは大事よね! 気持ち的に!

 レヴァンも悩んでいたみたいだし、私も恨みはないから。


「今の生活を楽しめているし、悪くないと思っているの。だから気にしないで……と言ったら貴方の苦悩にケチをつけてしまうけど。前を向いて、レヴァン。貴方は王太子なのだから。他に考えを回すべきことは多いはずよ」

「……ああ」


 うんうん。一件落着! 邪神も倒したし、言うことなし!


「それはそうと、王都がずいぶんと騒がしいって聞いたわ? エルトもいろいろとしているみたいだけど」


 私はみんなの顔を一通り見てからエルトに視線を戻す。


「聖女がいなくなったのだ」

「聖女……アマネが?」


 うん? なんで?


「王宮の部屋で謹慎、処遇を保留中だったらしい。だが、警備もいたはずなのに忽然と部屋から消えたようでな」

「ええ……?」


 どうやってかしら? そんなことできるの?


「……アマネ様の立場は悪くなっていたのです。その、クリスティナ様とアマネ様、どちらを信じるのかという話が王都中に広がっていて」


 ルーナ様がそう補足してくれる。それもフィオナから聞いているけど。そんなに?


「聖女の予言ルートを外れて行動したところ、各地であの邪神らしきものと遭遇するようになった。邪教の一部も捕らえ、全体の洗い出しの最中だ。二体ほど潰したところで、レヴァンとラトビア嬢を引き上げさせた。明確に聖女の予言を信じるわけにはいかないとなったからな」


 うんうん。


「それで別々に動いて、調査して、また合流して、ここに来たの?」

「そうだ」

「それでまたアイツが出てきた?」

「前回までの件と、他の場所で捕まえた連中の情報があるからな。今回はレヴァンの権限のもと修道院内を強制捜査することになっていた。だが、そこでアレだ」

「アレね」

「そうです! まだ修道院の中の人たちを治療しませんと!」


 ルーナ様がそこでハッとして声を上げる。

 今、話を聞いたかぎりでは何も解決しない段階で邪神登場だったみたいね。

 とすると中は、まだめちゃくちゃのままかしら。


「リン、貴方は前回、修道院の中に潜入できていたわね。彼らの調査に協力してくれる?」

「……わかりました、お嬢」


 うん。


「急に来ちゃって悪いわね。まずは処理するべきことをしてから、落ち着いて話をしましょう。そういうことでいい? レヴァン」

「ああ、すまない、ありがとう、クリスティナ。……エルト」

「わかった」


 そうしてエルトもレヴァンも修道院内の調査に移る。

 ルーナ様も怪我人が出た場合の治療のために同行するみたいね!

 私も中に入ろうかしら? 『予言』の【天与】で建物内を視たことがあるのよね!


「それで。どうして貴方は私のそばに残るのかしら、ラーライラ?」


 エルトの妹、『姫騎士』の二つ名を持つラーライラ・ベルグシュタットが立っている。

 ずっと私に向けて、こう……なんだかわからない感情を向けたまま。

 何かしらねー。悪意とはまた違う、この感じ。


「クリスティナ・マリウス・リュミエット」

「ええ」

「……決闘よ!」


 ペチン! と。ラーライラの手袋が私の胸に叩きつけられる。

 あらまぁ。

 私は薔薇を操作して手袋を拾い上げて、ギュッと掴む。


「わかったわ! じゃあ、今からね!」


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