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傾国の悪女になんかなりません! ~蛮族令嬢クリスティナは予言された破滅フラグを【カンスト】パワーでへし折ります~【書籍化】  作者: 川崎悠
三章 民なき領地

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69 再会

 邪神を討伐し、アルフィナ領が落ち着いてからしばらく。

 隣領を治めるエイガスト伯爵に協力してもらい、かつての領民がちらほら戻ってきているわ。

 といっても、まずは家の修復とか、もろもろ……大変だけどね!


 労働力に関しては、私の薔薇人形で補いつつ。

 食用薔薇を特産品として定着させるためにカイルがいろいろとやってくれている。

 あんまりお医者さんとしての仕事をさせられていないわねぇ。


 ヨナのためにいろいろと本を買ってきて、リンディスやセシリアに勉強を教えてもらう。

 フィリンたち侍女も力を貸してくれているわ。

 貴族としての教育を受けている侍女たちや、騎士団の会計を務めているドルクたちの尽力もあって領地としての基盤がどうにか成立しつつある。


 私たち仲間だけのアジトというより、アルフィナ領復興チームとしての側面が強くなっている感じね!

 相変わらず領主屋敷はボロのままだけど、掃除の手も行き届き始めたおかげで綺麗になっていっているの。


 以前までのアルフィナ領から大きく変わったことがあるといえば、邪神が通った跡ね!

 広範囲に森を轢き潰して侵攻してきた巨大な邪神。

 しかも黒泥が折れた樹木を腐らせて、溶かしてもいる。

 その状態で浄化によって汚染が除かれたことで、見事に切り開かれた土地が完成したのよ。

 手入れをすれば、そっちに人が生活する領域を増やしやすくなったの。

 それを見ながら私、思ったわ。


「ねぇ、邪神跡地と同じようにすればエーヴェル領とも街道をつなげられるかしら」


 今現在、アルフィナ領が接している領地は三つあるのだけど。

 主な街道はエイガスト伯爵領につながっているわ。

 他の領地とは森を挟んでいるから行き来は難しい。抜けられないことはないのでしょうけど。


「邪神を呼び出すのですか?」

「できないわよ、そんなこと」

「お嬢ならできるというか、やりだしかねないかと」


 失礼ね!


「クインに乗って空から薔薇で木を引っこ抜いていくとか、『怪力』でぶん殴って強引に森を開くことくらいはできそうなのよね!」


 そう私が切り出したのは領主屋敷の食堂よ!

 でも、あんまり貴族感のある食卓じゃなくて、侍女も騎士もみんなで席についているの。

 大家族って感じでいいわよね!


 私の提案に対して想像を膨らませているのか、みんなが黙り込む。


「クリスティナお姉ちゃんならできそうだよね」


 ヨナが最初にそう言ってくれた。


「そうでしょう? フフン!」

「お嬢は、とことん規格外というか……」

「薔薇の特性に、他の樹木の根を砕くようなものを持たせて、用が済んだら消してしまえば街道作りが楽になるかもしれないね。消してしまえば、あとに残る問題にはならないだろう」

「それはいいわね、カイル!」



 それから、まず実験として、どうやって森を切り開くのが効率的かをアルフィナ領側で試しておいて、今後の街道作り計画をエイガスト伯爵に通す。

 エーヴェル辺境伯にも許可を得てから、計画を実行!


「飛ぶわよ、クイン!」

『キュア!』


 空から一度、エーヴェル領まで飛んでみる。

 どういうルートを作るのが一番いいか、見ておかないとね!


「フンフン」

『キュアアア』

「目印薔薇!」


 これ! っていうルートに背の高い、薔薇の木を生やす。

 しかも、その薔薇は淡く発光する仕様よ!

 浄化の力を強く込めるんじゃなくて、少しだけ込めたの。

 そうして目印になる薔薇の木をルートに生やしていき、アルフィナ領へつなげる。

 あとは、このルートに沿って木々を引っこ抜いたり、ぶっ飛ばしたりして、森を貫けばいいわね!


「ルート見てきたわよー!」


 アルフィナ領に戻り、準備していた通りに森を切り開いていくわ!

 『毒薔薇』の【天与】で木を引っこ抜きつつ、支え、根元の辺りを締めつけて潰す。


「──フン!」


 ドゴッ!

 バキバキ……ドザァ!


 そうして下準備をしたあと『怪力』の【天与】で樹木をへし折る!

 スタートから次の目印薔薇の木までの樹木すべてに薔薇を絡ませてから、一本ずつ、ぶん殴っていくわ!


「……土木作業を一人でこなす、【天与】の使い方として合っているのでしょうか」

「さぁ。でもクリスティナが楽しそうだよ」

「それはそうなんですが……」


 へし折った木を薔薇人形で運び、積み上げていく。

 伯爵家からも人を借りて、然るべき処置をしてもらうわよ。

 材木も資源だからね! すぐには使えないけど、お金にはなるの。


 このルートは意外と平地が多いから、どうして今まで道をつなげなかったのかしらと思う。

 まぁ、エーヴェル領側にはメリットがないのかもしれない。

 でも、アルフィナ領側にはメリットがあったはずよ。

 ……以前の領主にやる気がなかったのねぇ。


 一日に十数本、樹木をへし折り、運ぶ。

 街道作りの邪魔になる木の根は、薔薇で引っこ抜いたり、絡ませて締め潰したりして除去していくわ。

 そうした作業をしばらく続けていけば、空から見て、もう街道らしきものが半分までできあがっている。


「このペースなら冬までにつなげられるわね!」


 ここまでいくと、経過観察をしていたエイガスト伯爵家も、エーヴェル辺境伯家も動いてくれる。

 街道ができたあとに向けた事業が進み始めたみたいね。


 たぶん、森の開通自体は、そうかからずに達成できるわ。

 でも、それはまだ樹木を撤去し、木の根を除去しただけの、整備されていない獣道。

 流石にそこからは私の出番ではなく、多くの人手を使って整備していくことになるでしょうね。



 森を開き、材木を買ってもらい、食用薔薇の流通ルートを確保し、量産計画を練る。

 資料を作りつつ、冬に向けた領地の整備を進めていくわ。

 なんだか一端の領主をやれているみたいで嬉しいわね!


 一ヶ月以上が経過して、その間、魔獣発生は落ち着いている。

 やっぱり邪神の影響だったってことなのよね。

 大量に発生するなんて予言だったけど、早々に打ち止めさせてやったわ! フフン!


 そうこうしているうちに、あっという間に森開通の日!


「ついにつながりますな、『クリスティナ街道』が」

「はい?」


 残りの作業があと少しということで、エイガスト伯爵が見学にやってきているの。

 正直、もう開通先も見えていて、エーヴェル辺境伯側にも見学者が大勢いるわ。


「伯爵、何かおかしな言葉が聞こえましてよ」

「おや、ご存知ありませんか。貴方が開いてきたこの道は今、『クリスティナ街道』という名で呼ばれているのですよ」

「ええ……?」


 何かしら、それ!


「どうしてそうなったのかしら」

「どうしてもこうしても。あれだけ目立っていましたので当然では?」

「そんなに目立っていたかしら……」

「ええ、とても」


 ちょっとドラゴンで飛び回って視察を繰り返して、光る薔薇の木で目印をつけて、『怪力』の【天与】でぶん殴って森を叩き開いてきただけなのに。


「……マリウス嬢が樹木を粉砕する度に轟音も響きますからね。嫌でも注目を浴びるかと」

「そういうものなのね!」


 確かに静音については配慮が欠けていたわ!

 一応、へし折る木が誰かに向けて倒れ込まないように薔薇で支えていたんだけどね!

 ぶん殴る時の衝撃音はどうしようもなかったのよ。


「ちょっとしたお祭りのようだったそうですよ、エーヴェル領の方では」

「それは……よかったのかしら?」


 そうして話している間に街道をつなげるための最後の一本の樹木に辿り着いた。

 どうして、この一本だけ残っているのかというと、エーヴェル家の方でも街道整備に取りかかってくれたからなの。

 あえて、街道の真ん中に立っている木を一本残したそうよ。

 私が【天与】で粉砕することで、街道開通をお祝いする予定なんですって。

 重労働だけど、楽しい日々だったわ!


「じゃあ、行くわよ!」


 後ろにも、木の向こうにもそれなりの見学者が集まっている。

 思えばアルフィナ領側もずいぶんと人が増えたものだわ。

 最初は五人だけだったのにねぇ。


「『毒薔薇』と『怪力』の【天与】!」


 最後の一本に薔薇を絡ませる。今回は大盤振る舞いで、浄化薔薇を使い、発光する薔薇の蔓で樹木を支えるわ。

 見学者たちには十分に距離をとってもらって、安全を確認してから。


「──フンッ!」


 ドゴォッ!


 街道の真ん中に残っていた木の根元を粉砕する。

 メリメリ、バキバキという、もう聞き慣れた音を立てて、木はエーヴェル領側へ倒れていく。

 両側にピンと張っていた薔薇の蔓が木の重さを支えながら、ゆっくりと地面に落した。

 トサッ、と。

 大木が倒れたにしては、かなり優しい音を立て、完全に横たわったの。


「フフン! 街道貫通よ!」

「「「「わぁあああああ!!!」」」」


 見学者たちが歓声を上げ、拍手してくれる。

 まるで英雄みたいな扱いねぇ! 領地境にある森を一筋、叩き開いただけなのに!


 そうして、私はその姿を見つけたの。


「あ」

クリス(・・・)! おめでとう!」


 私のことを『クリス』なんて呼ぶのは一人しかいない。


「フィオナ!」


 そう、そこには学園での唯一の友人で、親友。

 フィオナ・エーヴェル辺境伯令嬢が立っていたの!


「元気だった? 元気だったね。ふふ、久しぶりね、クリス」

「フィオナ、久しぶりね! 領地に戻っていたのね!」


 こうして私は親友に再会したのよ!


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― 新着の感想 ―
親友さん!改稿前はお名前だけであまりご活躍されていなかったので今回の登場嬉しいです。どんなエピソードになるのか今からワクワクしてます。
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