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傾国の悪女になんかなりません! ~蛮族令嬢クリスティナは予言された破滅フラグを【カンスト】パワーでへし折ります~【書籍化】  作者: 川崎悠
三章 民なき領地

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62 ドラゴンとクリスティナ

 そこにいたのは白銀の鱗を持つドラゴンだった。

 断っておくけれど、リュミエール王国にドラゴンなんて本来は生息していないわ。

 でも、どこかの国にはいるとかいないとか。

 実際に見るのはこれが初めてよ!


 全体の色は白銀で輝いている。

 首が長めで、体は少し横幅がある。翼はドラゴン特有の、あの蝙蝠みたいな翼ね。

 翼とは別に前脚となる部分もあるわ。爪がギラリと生えているみたい。


「あれも大地の傷から出てきたのかしら?」

「状況的にはかもしれませんが……」

「でも、その気配はないわね?」


 大地の傷が開き、魔獣の群が現れる時、私はそれがわかるの。

 だからこそ開かれた大地の傷を浄化薔薇で塞ぎに行ける。

 でも、今回はそれがなかったわね?

 魔獣災害とは別件?


 アルフィナ領はエーヴェル辺境伯領と同じ、王国の西の果てだ。

 国境に近い位置にある。

 この山の向こうは国境領域で、正確にはリュミエール王国の領地とは言い難いの。

 かといって隣国の領地というわけでもない領域ね。

 エーヴェル家が面している国境では紛争が長く続いているらしいわ。


「山の向こうからリュミエール王国に来たのかしら」

「つまり、ドラゴンが棲んでいるのですか」

「この山にいるとは限らないけど、そうじゃない?」


 魔獣災害で生まれた子じゃない。ということは。


「リン、あの子は私が世話をするわよ!」

「は?」


 フフン! ドラゴン! 綺麗だし、なんだか可愛い様子!

 私は決めたわ! あの子、私が飼う!


「いや、お嬢、相手はドラゴン……」

「薔薇よ!」


 木立性の薔薇をその場で高く生やし、片手は蔓性の薔薇でその先端に結ぶ。

 成長するスピードによって私の体を高く飛び上がらせる。


「お嬢!?」

『キュア?』


 飛び上がる角度は斜め向きだったので、私の体は山なりの軌道でドラゴンの上へ。

 私の動きに合わせて見上げてくる白銀のドラゴン。


「とぉおう!」

『キュア!?』


 そして私はドラゴンの背に飛び乗ったの!


『キュアアアア!?』

「薔薇よ!」


 私の両手を巻き込みながら蔓性の棘なし薔薇を咲かせ、手綱の代わりにする。


「どうどう! どうどうよ!」

『キュアアア!』


 ドラゴンの背に乗り、手綱代わりの薔薇を掴みながら、暴れ回るドラゴンを制する。


『キュアアアア!』

「あははは!」


 振り回す、飛び跳ねる、走り回る!


「楽しいわね!」


 暴れ馬よりもエキサイティングだわ!


『キュアアアアアア!』


 そしてドラゴンは私を背に乗せたまま、空へ!


「お嬢!」

「クリスティナ!」

「「「クリスティナ様!」」」


 ものすごい勢いで飛び上がり、風を切る!

 私を振り落とすことが目的で、急激な旋回と、急降下・急浮上を繰り返すわ!


「やるわね、貴方! いいわよ、その調子! とっても楽しいわ!」

『キュアアアア!』


 どんなに暴れても、手綱代わりの薔薇は切れない。

 というより、切れかかったそばから補強するように新たな薔薇が生える。

 無尽蔵に即座に回復する薔薇の手綱よ!


「貴方、私のドラゴンになりなさい! 大事にするわ!」

『キュアアア!』

「納得するまで背中から降りないわよ!」

『キュア!?』


 あ、この子、私の言葉がわかるんじゃない? ちょうどいいわね!


「今から貴方は、私の子分(・・)! 私に従うなら……美味しい薔薇を食べさせてあげるわ!」


 私は食用薔薇を作る技術の応用で薔薇を咲かせる。


「この子のお腹を満たす薔薇よ! 咲きなさい!」


 手綱の先から蔓性の柔らかい食感をした薔薇が咲く。

 もちろん棘はなし! 栄養・味、それらがドラゴン用にチューンされた専用薔薇!


「──竜餌(りゅうえ)薔薇!」


 それはドラゴンの体色に合わせるかのように銀色に咲き、輝いた。


『キュア……!』

「たんとお食べ!」


 食べさせるというより、口の中に捻じ込むように咲かせたわ。

 飛びながらモシャモシャと咀嚼するしかなくなったドラゴンは、仕方なく竜餌薔薇を食べる。


『キュア……』


 すると、だんだんと大人しくなり、暴れ回るような飛び方ではなく、ゆっくりと大きな旋回軌道をし始める。

 いい感じね!


「私の子分になれば、これからも竜餌薔薇を食べさせてあげるわ! お水も用意してあげるし、貴方の敵がいたら私がぶん殴ってあげるわよ!」

『キュアアア……』


 んー。うん。うん? たぶん、オッケーね!


「じゃあ、貴方の名前は……クインよ! 今日から貴方はクイン! ドラゴンのクインね!」

『キュアアア!』

「子分であり、仲間で、家族(・・)よ!」

『キュアアアアアア!』


 あら、家族という言葉に反応したのかしら。


「もしかして家族と離れ離れになったの?」

『キュア』


 そうかもしれないわね!


「じゃあ、貴方の家族も捜してあげる! 山の向こうにいるの?」

『キュアアア……』


 わからないのかしら。どこから来たのかしらねぇ、この子。

 少なくとも大地の傷から生まれたわけじゃないわね。


「貴方の家族が見つかるまで、私と、私の仲間が貴方の家族よ! クイン!」

『キュア……!』


 うん。うん……うん。たぶん、オッケー!


 というわけでドラゴンのクインが私の家族になったわ! フフーン!



 しばらく、クインが納得するまで、空を一緒に飛んだ。

 狭いアルフィナ領を越えて、隣の領地まで飛び、旋回してまた戻ってくる。


 私は、ふと山の向こうを見た。

 すると、山の中腹に何かいつもの嫌な予感を覚えたの。


「……もしかして、あれがアルフィナの魔獣災害の元凶かしら」

『キュア?』


 空から見れば、そこだけ異様な雰囲気を発しているのがわかった。

 でも、あの地点に地上から行くにはけっこう距離がある。

 あそこまでの道を叩き開くのには時間がかかりそうよ。


「せめて迷わないために目印が必要ね! 浄化の……黄金薔薇!」

『キュアアア!』


 クインの背から森へ向かって手をかざし、薔薇を咲かせる。

 それは浄化の光を放つ黄金の薔薇の道標。


「うん! あれを辿れば地上から、あの場所への道が……」



 ──バキ。


「……!」


 私が浄化の黄金薔薇を咲かせ、道筋を整えた途端。

 空に響き渡ったのは、まるで壁にヒビ割れが起きたかのような異音。


 バキバキバキ……。


「大地の傷が開く……!?」

『キュアアア!』


 クインの背に乗って空から私はその光景を見る。

 今まで戦った規模とは桁の違う存在感。

 それは過去、二度ほど相対した邪神の気配と同一のもの。


 バキバキバキ、バキィ!


 空がヒビ割れたかと思うと、空の一部に闇のような〝穴〟ができる。

 そして、そこから手を伸ばしてくるのは、ドロリとした黒い泥。

 マリルクイーナ修道院でエルトと一緒に戦った人型の邪神の同型だわ!


「そっちから出てくるなんて、いい根性しているわね!」


 想像以上に早く相対することになった邪神との戦いが始まりそうよ!


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