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傾国の悪女になんかなりません! ~蛮族令嬢クリスティナは予言された破滅フラグを【カンスト】パワーでへし折ります~【書籍化】  作者: 川崎悠
三章 民なき領地

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61 森を叩き開く

 戦力が増えたことで余裕が生まれたわ!

 それを機に森の奥深くへと進軍する計画を立てる。

 予言を含めた情報をもとにした予測では、魔獣発生がこのままだと終わらない。


 逆に最奥に存在するだろう元凶をどうにかすることができれば、いつまでも魔獣発生に怯える必要なく終わらせることができる。


「ベルグシュタット卿とクリスティナ様が対峙されたという邪神ですか……」

「ええ! 王国全土を襲う魔獣災害の元凶がこれだと思っているわ! ちなみに根拠は私の勘ね! 『予言』の【天与】もあるけど!」


 フフン! と私は胸を張ったわ!


「【天与】の……。それでは無視はできませんね」

「あら、貴方は私を信じるのね」

「ベルグシュタット卿が信じておられますから。部下の我々も貴方様を信じております。それにおそらく王国の民も多くがクリスティナ様を信じるかと」


 ん?


「なんで王国の民が?」


 自慢じゃないけど、世間での私ってたぶん『傾国の悪女になる女』よね!

 予言の聖女アマネの功績は大きく、その聖女が私をそう評した。

 あの一件を知っている人はそれなりにいるでしょうし、世間でもそう評価されるんじゃない?


「理由はいくつかあります。確かに、その。貴方が王都を追放されたあとすぐは、世間では恐れられておりました」

「そうでしょうね!」

「あまり肯定するところではないですよ、お嬢」


 ただの事実ってものよ!


「しかし、貴方は各地で魔獣を倒しながら西へ進んだ。我々の手が届かなかったところで暮らす人々を助けてきたのです。ここに集った女性たちもそうです。そのことが噂となって広がっています」

「へぇ……」


 ここまでの旅も無駄じゃなかったのねぇ。


「加えて薔薇の【天与】の発現も噂になっております」

()薔薇ね! まぁ、あんまり毒としては使わないけど!」

「ラトビア男爵令嬢は、光を主体とした【天与】で、クリスティナ様は薔薇。ラトビア嬢の功績が広まれば、その名と【天与】も広まり、加えて……もう一人」


 もう一人?


「ルフィス公爵令嬢が新たに【天与】を発現されたそうです」

「まぁ!」


 三人目ね! 【天与】持ちってそんなに多くないのよ。

 だからこそ女神からの授かり物なんて大層な名前がつけられるし、王族の婚姻相手として名を連ねることになるの。

 それなのに同じ時代に三人も?

 歴史的にそんなこと今までなかったんじゃない?


「ルフィス公爵令嬢が発現したのは『光翼蝶(こうよくちょう)』の【天与】」

「光翼蝶? 蝶々……?」

「はい、蝶をモチーフとした【天与】です。具体的な効果は聞いておりませんが、確かなことだと噂が流れました。そして、三人の〝天子〟が揃いました」


 リュミエール王国では三女神を崇めているわ。

 女神イリスは、剣と薔薇の女神。

 女神メテリアは、光の女神。

 女神シュレイジアは、蝶の(・・)女神。

 それぞれの女神を象徴するモチーフが薔薇、光、蝶なのよ。


「貴方たち三人の天子は女神の巫女と呼ばれております。三女神が地上に降り立った存在であると」

「あらまぁ」


 なんだか私の知らない間に世間の評価が逆転しているわねぇ。

 ちなみにルフィス公爵家というのは、今は王国唯一の公爵家よ。

 三人の女神を象徴する【天与】は『聖守護』『毒薔薇』『光翼蝶』ってことになるわね。


 ……私だけ毒入りね! ルーナ様たちは綺麗な感じなのに。


「じゃあ、王国の民は今、お嬢を疎んではいないのですね」


 リンディスが少し嬉しそうにする。


「はい、少なくとも私の知る限りでは。ラトビア嬢やベルグシュタット卿も、救国の旅を続けながらクリスティナ様を評価する言葉を繰り返していますし」

「そんなことをしているの、あの二人?」

「ええ! それはもう!」


 まぁ、まぁ、まぁ!

 じゃあ思ったより王都に帰ったとしても受け入れられそうねぇ。

 社交界はダメな気がするけどね!

 だって王太子(レヴァン)をぶん殴ったのは事実だもの。フフン!



 いつの間にか世間の潮目が変わってきたのは、まぁ朗報として。

 私は今、すべきことをするわ。


「──フン!」


 ドゴォ!


「「「おおお……!」」」


 パチパチと拍手が鳴る。


「フフン!」


 私は、山側に生える樹木に向かって『怪力』の【天与】を纏った拳を叩き込んだの!

 もちろん、人がいる方向に倒れないように『毒薔薇』の蔓で支えた状態でね!


 メキメキメキ……ドォン!


 樹木がへし折れて倒れる。

 何をしているかって?

 森の奥への道を叩き開いて(・・・・・)いるわ!


 この先に邪神が待っているとして、入り組んだ森の地形では戦いづらいもの。

 だから、ある程度の道を作り、開けた空間を作っておく。

 発生する魔獣の群れと戦う時も視界が開けていた方がいいでしょう?


「薔薇人形たち! 倒れた木を運びなさい!」


 労働力としても使える薔薇人形を作って木を運ばせる。

 残念だけど、視界に入れていないとコントロールできない人型ね。

 こう、放っておいても動くとかそういうのじゃないの。

 私が見て操っている、ただ人型に固まった薔薇ね。


 倒した木は、いずれ素材にする予定だけど、乾かさないと使えないのよね。

 ……薔薇で木から水分を吸い取るとかできるかしら?

 できても木材にするには適さないかもしれないわね。

 いつか使えるように屋根がある場所の下にまとめて乾かしておく。


 魔獣との戦いがてら、森を叩き開き、道を作っていったのよ!

 そうしていたらね。


『キュアアアアア!』

「……うん?」


 なんだか聞き覚えのない鳴き声を聞いたわ!


「あっちから聞こえたわね!」

「はい」

「じゃあ、見に行くわ! 新しい魔獣かもしれないから!」

「わかった」

「承知しました」

「「「了解!」」」


 戦闘チームで開いた森の奥へ向かう。

 馬は森の外へ置いてきているわよ!


 やがて、私が叩き開いた場所じゃないのに視界が開けた場所に出る。

 そこには。


『キュアアアア!』

「あれは……ドラゴン!」


 白銀の鱗を持つドラゴンが一頭、そこにいたの。

 なんだかとっても綺麗ね!


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