第27話 作動テスト
その瞬間。
「……っ!」
数メートル離れたデスクに座っていた真緒菜の肩が、ビクンと大きく跳ねた。
キーボードを叩いていた彼女の手が止まり、マウスを握る手にギュッと力が込められる。
(おっと、少し驚きすぎじゃないか?まだ最弱だぞ)
俺はさらにスライダーを少しだけ上に動かした。
「んっ……」
真緒菜の口から、誰にも聞こえないほどの小さな吐息が漏れた。
彼女は慌てて足を組み直し、太ももをきつく密着させて振動を抑え込もうとしている。しかし、そんなことをすれば余計に押し付けられる形になり、敏感な部分を直撃するだけだ。
真緒菜はパソコンのモニターを睨みつけたまま、額にうっすらと汗を浮かべ、必死に平常心を保とうと耐え忍んでいる。
「どうしたんですか、網代主任?顔が赤いですよ。熱でもあるんですか?」
隣の席の後輩が心配そうに声をかけた。
「い、いえ……なんでもありません。少し、空調が効きすぎているだけです」
「そうですか?むしろ今日は少し涼しいくらいですけど……」
「大丈夫です。業務に戻ってください」
真緒菜は震える声で後輩をあしらい、再びモニターに向き直った。しかし、その呼吸は明らかに乱れており、グレーのスーツの下の胸元が浅く激しく上下している。
周りの社員たちは、彼女が役員会議のプレッシャーで緊張しているのだとしか思っていないだろう。
だが、俺だけが知っている。
あの鉄面皮の堅物女が、今まさに股間に仕込まれたオモチャの振動に身をよじらせ、俺の指先一つの操作で快感と羞恥のどん底に突き落とされていることを。
「くくっ……」
俺は手元のスマートフォンを操作しながら、腹の底から湧き上がる笑いを必死に噛み殺した。
午後からの役員会議本番。会社の重鎮たちがずらりと並ぶあの厳粛な場で、俺はこのスライダーを最大まで引き上げてやるつもりだ。
このオフィス全体を欺き、隙のないエリート女の身体を自分だけが密かに支配し、弄んでいる。
俺はこれ以上ないほどの圧倒的な優越感と背徳感に、脳髄が痺れるほど酔いしれていた。
+++
午後十四時。
本社最上階の第一会議室に向かう直前、俺は誰もいない給湯室の陰に網代真緒菜を強引に引きずり込んだ。
「ちょっと……亜久嶋さん、こんな所で何を……っ」
「しーっ、声が大きいぞ。もうすぐ役員会議が始まるんだからな」
俺は壁際に彼女を追い詰め、その耳元に顔を近づけた。真緒菜の身体は、すでに小刻みに震えている。
「いいか、真緒菜。今日の『クイック・シェフ』シリーズのプレゼン、絶対に失敗するなよ」
「わ、わかっています……っ。でも、お願いですから、会議中だけはスイッチを……」
「ダメに決まってるだろ?俺は君の限界が見たいんだ」
俺は彼女のすがるような言葉を冷酷に遮り、スマートフォンの画面をチラリと見せつけた。画面には、彼女のあられもない姿が収められた写真集のデータが表示されている。
「会議の最中、もし少しでも変な声を出したり、不自然な態度をとってプレゼンを台無しにしてみろ。その瞬間に、この画像を役員全員の端末に一斉送信してやるからな」
「ひっ……!」
「わかったら、いつもの隙のないエリート女の顔で、完璧にやり遂げるんだな」
真緒菜は絶望に顔を歪め、コクコクと必死に頷いた。その目には、逆らうことのできない絶対的な恐怖が浮かんでいる。俺は満足げに彼女の肩を叩き、会議室へと向かった。
+++
重厚なマホガニーのテーブルが鎮座する第一会議室。
東都フーズの中枢を担う役員たちがずらりと並ぶ中、真緒菜はプロジェクターの前に立ち、「クイック・シェフ」シリーズのプレゼンを開始した。
「――本シリーズの派生商品に関するターゲット層は、共働き世帯の増加に伴い……」
その声は、いつも通りの感情を交えない理路整然としたものだった。
俺は末席に座りながら、机の下で密かにスマートフォンを操作した。
アプリを立ち上げ、重要な役員会議の最中、真緒菜の下着の中に仕込まれたバイブレーターのスイッチをオンにする。それも、一気に最大出力のメモリまでスワイプしてやった。
「っ……!?」
その瞬間、真緒菜の肩がビクンと大きく跳ね、言葉が不自然に途切れた。
「……網代主任?どうかしましたか」
進行の停止に気づいた役員の一人が、訝しげに眉をひそめる。
「い、いえ……失礼いたしました。データ分析の、詳細について……っ」
真緒菜は声を震わせ、必死に言葉を紡ぎ出した。
彼女の額には、はっきりと大粒の汗が浮かんでいる。ポインターを握る手が微かに震え、グレーのスーツの下で両足をきつく交差させて、強烈な振動と快感に耐え忍んでいるのが遠目からでもわかった。
それでも彼女は、持ち前の鉄面皮を崩すまいと、完璧にプレゼンをこなそうと必死に耐え抜いている。




