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毎日来る副校長が、なぜか“会計の瞬間だけ消える”話  作者: おみき
第10章 HOPE ―同じ音の中で―
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最終話 第87話 同じ音のままで

自動ドアが開く音で、顔を上げる。



いつも通りの音。



変わらないはずの音。



「いらっしゃいませ」



声を出す。



同じ言葉。


同じ動作。



レジに立ち、バーコードを通す。



ピッ、という音が、規則正しく響く。



目の前には、いつもの客。



特別なことは、何もない。



それでも。



この場所に立っている理由は、少しだけ変わっていた。



「袋、お願いします」



「かしこまりました」



自然に手が動く。



迷いはない。



前と同じはずの動作。



でも。



“選んでここにいる”という感覚がある。



それだけで、違う。



会計を終える。



商品を渡す。



「ありがとうございました」



声が、ちゃんと届く。



レジの前が途切れる。



ほんの短い時間。



ふと、息をつく。



深く吸い込んでも、胸は痛まない。



それだけで、十分だった。



自動ドアが開く。



反射みたいに顔を上げる。



――誰かが入ってくる。



知らない客。



それでも。



少しだけ、目で追ってしまう。



違う。



それでいい。



綾は、小さく息を吐く。



考えない方が楽なこともある。



それでも。



考えてもいいと思えることもある。



同じ場所。


同じ時間。



それでも。



同じではない。



バーコードの音が、また響く。



ピッ、ピッ、と続くリズム。



その中で。



ほんの少しだけ、確かに思う。



ここから、続いていく。



終わるわけじゃない。



変わり続ける。



その中で。



選び続ける。



それでいい。



自動ドアが閉まる。



音が、静かに残る。



同じ音。



それでも。



もう、同じようには聞こえなかった。


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