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毎日来る副校長が、なぜか“会計の瞬間だけ消える”話  作者: おみき
第10章 HOPE ―同じ音の中で―
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第85話 触れたもの

夜の部屋は、変わらず静かだった。


テーブルの上には、書類とメモ。


前より少しだけ整っている。


⸻


綾は、その前に座る。


⸻


何をするでもなく、ただ見ている。


⸻


数字。


言葉。


⸻


少し前までは、ただの“分からないもの”だった。


⸻


今は。


⸻


“向き合うもの”になっている。


⸻


「……」


小さく息を吐く。


⸻


完全に理解しているわけじゃない。


⸻


それでも。


⸻


逃げていない。


⸻


それだけで、少し違う。


⸻


ペンを手に取る。


⸻


一つ、数字に線を引く。


⸻


「ここから」


⸻


小さく呟く。


⸻


何かが終わるわけじゃない。


⸻


何かが始まるわけでもない。


⸻


ただ。


⸻


続いていく。


⸻


その中で。


⸻


少しずつ、変わっていく。


⸻


ふと、手を止める。


⸻


頭の中に、あの言葉が浮かぶ。


⸻


――必要なことを、選ぶ


⸻


その意味を、考える。


⸻


難しいことじゃない。


⸻


全部を選ばないこと。


⸻


一つだけ、選ぶこと。


⸻


それを、続けること。


⸻


それだけ。


⸻


それだけなのに。


⸻


今まで、できていなかったこと。


⸻


「……」


⸻


小さく笑う。


⸻


気づいたら、少しだけ楽になっていた。


⸻


何も解決していないのに。


⸻


それでも。


⸻


前よりは、息がしやすい。


⸻


立ち上がる。


⸻


窓を開ける。


⸻


夜の空気が、部屋に入る。


⸻


冷たくて、少しだけ気持ちいい。


⸻


空を見上げる。


⸻


同じ空。


⸻


それでも。


⸻


前とは違う場所から見ている気がした。


⸻


「……これでいい」


⸻


答えじゃない。


⸻


でも。


⸻


間違いでもない。


⸻


そう思えた。


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