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毎日来る副校長が、なぜか“会計の瞬間だけ消える”話  作者: おみき
第10章 HOPE ―同じ音の中で―
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第83話 見ている場所

北山学園の夕方は、静かだった。


授業が終わり、子どもたちの声が少しずつ遠ざかっていく。


⸻


世古は、校舎の裏手に立っていた。


⸻


特別な理由はない。


⸻


ただ、そこにいた。


⸻


少し離れた場所で、作業音が聞こえる。


⸻


規則的な音。


⸻


無駄のない動き。


⸻


父だった。


⸻


木材を整え、工具を扱う。


⸻


手つきは、まだ完全ではない。


⸻


それでも。


⸻


止まらない。


⸻


以前のような迷いはない。


⸻


世古は、何も言わない。


⸻


声をかけることも、近づくこともしない。


⸻


ただ、見ている。


⸻


しばらくして、父が作業の手を止める。


⸻


軽く息をつく。


⸻


空を見上げる。


⸻


その顔は、前とは少しだけ違っていた。


⸻


疲れている。


⸻


それでも。


⸻


止まってはいない。


⸻


世古は、ほんのわずかに視線を落とす。


⸻


それで十分だった。


⸻


確認するものは、もうない。


⸻


その場を離れる。


⸻


足音は、静かだった。


⸻


振り返らない。


⸻


必要がないから。


⸻


門を出る。


⸻


外の空気は、少しだけ冷たい。


⸻


夜に近づいている。


⸻


ポケットの中で、指がわずかに動く。


⸻


何かを確かめるように。


⸻


けれど。


⸻


取り出すことはしない。


⸻


そのまま、歩き出す。


⸻


知らない場所で、

知らない誰かが、少しだけ前に進む。


⸻


それでいい。


⸻


それで、十分だった。


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