第82話 分け合う重さ
テーブルの上に置かれた封筒は、
昨日と同じ場所にあった。
⸻
けれど。
⸻
昨日とは、少しだけ違って見える。
⸻
綾は、ゆっくりと椅子に座る。
⸻
封筒に手を伸ばす。
⸻
今度は、迷わなかった。
⸻
そっと、持ち上げる。
⸻
軽くはない。
⸻
でも。
⸻
思っていたほど、重くもなかった。
⸻
「……」
言葉にはならない。
⸻
ただ、その重さを確かめる。
⸻
中身を取り出す。
⸻
紙の感触。
数字。
⸻
まだ全部は分からない。
⸻
それでも。
⸻
“自分に関係のあるもの”だと、はっきり分かる。
⸻
「……これ」
父に向かって言う。
⸻
「少し、こっちでも出せると思う」
⸻
父が、顔を上げる。
⸻
一瞬だけ、驚いたような表情。
⸻
「……いい」
短く、言う。
⸻
「でも」
綾は、続ける。
⸻
「一緒にやった方が、早い」
⸻
理屈ではない。
⸻
ただ、そう思った。
⸻
父は、しばらく何も言わない。
⸻
考えているのか、迷っているのか。
⸻
それでも。
⸻
逃げてはいない。
⸻
「……少しだけな」
⸻
やがて、そう言う。
⸻
完全な肯定じゃない。
⸻
でも、否定でもない。
⸻
それで、十分だった。
⸻
綾は、小さく頷く。
⸻
「うん」
⸻
封筒を、もう一度テーブルに戻す。
⸻
二人の間に置かれる。
⸻
誰のものでもなく。
⸻
でも。
⸻
どちらのものでもある。
⸻
部屋の空気が、少しだけ変わる。
⸻
重さは、消えない。
⸻
それでも。
⸻
一人で持つより、軽くなる。
⸻
綾は、ふと息をつく。
⸻
深く吸い込んでも、胸は痛まない。
⸻
それだけで、少しだけ救われた気がした。




