表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
毎日来る副校長が、なぜか“会計の瞬間だけ消える”話  作者: おみき
第10章 HOPE ―同じ音の中で―
84/177

第81話 最初の重さ

玄関の扉が開く音がした。


いつもより、少しだけ早い時間。



「……ただいま」


父の声。



綾は、部屋から顔を出す。


「おかえり」



それだけのやり取り。



父は、靴を脱いで上がる。


動きは、まだ少しだけぎこちない。



それでも。



前より、迷いがない。



テーブルの上に、封筒を置く。


白い封筒。


何の変哲もないもの。



「……これ」


短く言う。



それだけで、分かる。



綾は、ゆっくりと近づく。



封筒を見る。


触れない。



「……初めてだな」


父が、小さく言う。



「何が?」



「こういう形で、もらうのは」



一瞬、言葉の意味を考える。



そして、分かる。



“給料”。



綾は、何も言わない。



父も、何も言わない。



ただ、その封筒がそこにある。



それだけで、十分だった。



「……重いな」


父が、ぽつりと言う。



封筒を、少しだけ持ち上げる。



「重い?」



綾が聞く。



「金の重さじゃない」



短く、答える。



「……責任だな」



その言葉が、ゆっくりと落ちる。



軽くはない。



でも。



嫌な重さでもない。



父は、封筒をテーブルに戻す。



「……少しだけ、減らせる」



それだけ言う。



具体的な数字は出さない。



でも。



確かに、進んでいる。



綾は、小さく頷く。



「うん」



それだけ。



それで、十分だった。



しばらく、二人で座る。



会話はない。



でも。



前とは違う沈黙だった。



逃げているわけじゃない。



ただ、同じ場所にいる。



それだけでいい時間。



綾は、封筒に手を伸ばす。



少しだけ、触れる。



確かにそこにある。



現実。



そして。



ほんの少しの、希望。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ