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毎日来る副校長が、なぜか“会計の瞬間だけ消える”話  作者: おみき
第9章 HOPE ―変わり始める日常―
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第78同じ側

テーブルの上に、紙を広げる。


数字の並んだ書類。


見慣れない言葉。



綾は、その前に座っていた。


少しして、父が向かいに座る。



しばらく、何も言わない。



時計の音だけが、小さく響く。



「……どこからだ」


父が、低く言う。



「分からない」


正直に答える。



それでよかった。



父は、紙に手を伸ばす。


一枚、ゆっくりとめくる。



指が止まる。



「ここだな」


小さく言う。



綾は、覗き込む。



「この金額は……元のやつだ」



「元?」



「最初に借りた額だ」



短い説明。



それでも、少しだけ見えてくる。



父は、次のページをめくる。



「こっちは、利息だな」



綾は、黙って聞く。



難しい。


分からない。



それでも。



“分からないままにしない”ことは、できる。



「……全部、返さないといけないの?」



ふと、聞く。



父の手が、一瞬止まる。



「……ああ」



短い答え。



重い事実。



それでも。



前ほど、怖くはなかった。



「……じゃあ」



言葉を選ぶ。



「どうすればいい?」



父が、顔を上げる。



ほんの一瞬だけ、目が合う。



その目に、少しだけ驚きがあった。



そして。



少しだけ、違うものも。



「……少しずつだな」



ゆっくりと、言う。



「減らしていくしかない」



現実的な答え。



きれいでも、簡単でもない。



でも。



ちゃんと“進む答え”。



綾は、小さく頷く。



「……うん」



それだけ。



それで、十分だった。



父は、もう一度紙に目を落とす。



「……分からんとこは、聞け」



ぽつりと、言う。



「一人で考えても、余計分からん」



その言葉に、少しだけ力があった。



綾は、もう一度頷く。



「……うん」



同じ返事。



でも、意味は違う。



部屋の空気が、少しだけ変わる。



問題は、何も解決していない。



それでも。



同じ場所にいるはずなのに、

少しだけ“同じ側”に立っている気がした。


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