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毎日来る副校長が、なぜか“会計の瞬間だけ消える”話  作者: おみき
第9章 HOPE ―変わり始める日常―
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第77 もうひとつ

夜の部屋は、静かだった。


照明の下、テーブルの上に紙が広がっている。



あの封筒。



開けずにいたもの。



昨日までは、それでよかった。


見なければ、考えなくていい。



それでも。



今日は、少しだけ違う。



「……必要なことを、選ぶ」


小さく呟く。



誰に聞かせるでもない言葉。



指先が、封筒に触れる。



ほんの少しだけ、ためらう。



けれど。



そのまま、開けた。



中身を取り出す。



数字が並んでいる。



やっぱり、分からない。



でも。



分からないままにしておく理由も、もうない気がした。



スマートフォンを手に取る。



連絡先を開く。



しばらく迷う。



そして。



一つの番号を押す。



呼び出し音。



数回鳴って、繋がる。



「……はい」


父の声。



「……あの」


少しだけ、言葉が詰まる。



「これ、少し一緒に見てもいい?」



沈黙。



長くはない。



けれど、重さのある間。



「……ああ」



短い返事。



それだけで、十分だった。



通話を切る。



部屋の中が、少しだけ広く感じる。



何も解決していない。



借金も、現実も、何も変わっていない。



それでも。



“見ないでいる”ことは、やめた。



それだけ。



ほんのそれだけで、

少しだけ前に進んだ気がした。


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