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第73話 選ぶということ
夜の道を歩く。
街灯の下、同じ道を辿る。
見慣れた景色。
変わらないはずの帰り道。
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足は、迷わず進む。
考えなくても歩ける距離。
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それなのに。
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今日は、少しだけ足が遅い。
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理由は分かっている。
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考えているからだ。
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何を、というほどはっきりしていない。
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ただ。
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このままでいいのか、という感覚。
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ずっと前からあったもの。
でも、見ないようにしていたもの。
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信号で立ち止まる。
赤い光が、静かに点っている。
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周りには、同じように立ち止まる人たち。
誰もが、それぞれの場所へ向かっている。
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綾は、その中に立っている。
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同じように。
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でも。
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同じではない気がした。
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信号が変わる。
人が動き出す。
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綾も、一歩踏み出す。
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その一歩が、少しだけ重い。
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そして。
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少しだけ、軽い。
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矛盾している。
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でも、それでいい気がした。
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――選ぶ。
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その言葉が、ふと浮かぶ。
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選ぶなんて、大げさなことじゃない。
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どこに行くか。
何をするか。
何をやめるか。
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ほんの小さなこと。
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それでも。
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今までより、少しだけ意識している。
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それが、変化なのかもしれない。
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歩きながら、空を見上げる。
夜は、変わらない。
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それでも。
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同じ夜ではない気がした。




