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毎日来る副校長が、なぜか“会計の瞬間だけ消える”話  作者: おみき
第7章「同じ音、違う意味」
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第49話 命の重さ

白衣は、重さを消す。


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同じに見せるためのものだった。


⸻


誰が来ても。


⸻


どんな命でも。


⸻


同じ手順で扱う。


⸻


それが、医者だと思っていた。


⸻


でも。


⸻


違った。


⸻


井上は、分けていた。


⸻


助かる命。


⸻


助からない命。


⸻


意味のある命。


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そうでない命。


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無意識に。


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それが効率だった。


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それが現実だった。


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あの夜までは。


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目の前の患者を見る。


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重症。


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もう一人。


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軽症。


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優先順位は、明確だった。


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迷う必要はない。


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それなのに。


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手が、止まる。


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思い出す。


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あの夜。


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自分。


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終わるはずだった命。


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それを。


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理由もなく拾った男。


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選別もなく。


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ただ。


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そこにいたから。


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それだけで。


⸻


井上は、小さく息を吐く。


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「……両方やる」


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気づけば、そう言っていた。


⸻


スタッフが一瞬止まる。


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それでも動く。


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現場が変わる。


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負荷が上がる。


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非効率。


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それでも。


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止めない。


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井上は、手を動かす。


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一つ。


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もう一つ。


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両方。


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拾う。


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そのあと。


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静かになる。


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一つは助かる。


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もう一つも、繋がる。


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井上は、手を止める。


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白衣を見る。


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同じはずなのに。


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少しだけ重い。


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「……面倒だな」


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小さく言う。


⸻


それでも。


⸻


どこかで、分かっている。


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命は、選ぶものじゃない。


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少なくとも。


⸻


あの男の前では。


⸻


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