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毎日来る副校長が、なぜか“会計の瞬間だけ消える”話  作者: おみき
第7章「同じ音、違う意味」
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第46話 見損なうなよ

同じ頃、世古も迷っていた。


高校のダチには、皇丸を隠していた。新進気鋭の族、皇丸の総長。それが自分だと知られたくなかった。だからこそ、皇丸の部下たちを最初から投入するわけにもいかなかった。


しかも、攫われたのは清水だ。ガタイがよく、目つきも悪い。けれど、優秀なダチの中でも飛び抜けて優秀なやつだ。弁護士になるはずの男。あいつを見捨てるなんて、最初から選択肢になかった。


世古は、一人で突っ込んだ。


まあ、大丈夫だろう。

そう思っていた。


予想は外れた。


清水だけじゃない。小沼も、岡野も、石川も、大村も、まとめて吊るされている。しかも、みんなやれる範囲で抵抗していた。話し合いで解決しようとした。金で収めようとした。最後には力ずくでも抗った。弱っちい連中なのに、友達のために必死で頑張ったのだと、世古はその場で理解した。


だから、決めた。


正体がバレてもいい。こいつらを救う。


「おい、チビメガネ! 優等生ってやつを見ると、オレらは無性に殺したくなる。だから死んでくれ、悪いな」


世古は、小さく肩をすくめた。


「ああ大丈夫だよ。俺もお前らみたいなの見ると壊したくなるから」


下品な笑い声。次の瞬間、先頭の男が襲いかかってくる。世古は軽く身体をかわし、カウンターを叩き込んだ。嫌な音がして、馬鹿が沈む。


そこからは早かった。ちぎっては投げ、ちぎっては投げ、二十人、三十人と沈めていく。だが、そこで流れが止まる。


「待ちやがれ! それ以上歯向かってみろ、大切なお友達が腐ったトマトみてーに潰れるのを見たいのか?」


人質。


世古は舌打ちした。


「クズだな。どこまでもガッカリさせる」


そのときだった。


「殺す殺す殺す殺す殺す……ぶっ殺すぅぐぇべェあ!?」


外道の顔面に、親衛隊隊長・山下為五郎の拳がめり込んだ。


世古は、ほんの少しだけ笑う。


「おお、山下。ありがとうな」


山下は軽く頷き、そのまま清水たちを降ろしていく。


全員を解放し終えたあと、世古は高校のダチたちに向き直った。


「ごめんな。早く助けてやれなくて。あと、俺が何者か分かっちゃったろ? お前らみんな賢いから」

少しだけ困ったように笑って続ける。

「俺はお前らの迷惑にならないよう、学校じゃもう話しかけないからよ。心配しなくていいぜ。今までありがとうな」


それは、世古なりの線引きだった。

自分が背負っているものを、普通のダチにまで被せたくなかった。


だが、その瞬間、清水が口を開いた。


「……待てよ、世古」


その声は震えていなかった。


「俺たちを見損なうなよ」

世古が目を見開く。

「お前が何であろうと、ダチのままだよ」


その一言で、場の空気が変わる。


清水は続けた。


「俺たちは仲間だ。俺たちも世古のチームに入れてくれよ」


世古は、本気で呆れた顔をした。


「何を言ってんだ? 馬鹿なのか?」

清水は少しだけ笑った。

「いいや。お前の言うとおり賢い人間の集まりだよ」


つまり、分かっているということだった。

何が本物かを。


世古は込み上げる何かを、喉の奥でぐっと飲み込んだ。


「……やれやれ、好きにしなよ」


そう言って歩き出す。


後ろでは、清水たちがまだ立っている。

助けられた側の顔ではなく、選んだ側の顔で。


その夜、清水は初めて、自分の理屈を超えて人を選んだ。

そして世古は、初めて高校のダチに“正体ごと受け入れられた”。


それが、二人の始まりだった。


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