44/177
第44話 線の外にいる
県内有数の進学校。優秀な生徒ばかりが集まる場所だった。
弁護士を目指す者。医者を目指す者。デザイナー、エンジニア、広告代理店経営。明るくて、頭がよくて、将来に向かってまっすぐな連中。清水は、そんな高校の仲間たちが好きだった。今だけじゃなく、この先も付き合っていくと、自然に思える相手たちだった。
その中に、一人だけ異物がいた。
世古公士。
真面目なのに優等生っぽくない。頭は切れるのに、それを誇らない。妙なところで立ち止まり、妙なところに首を突っ込む。近寄ってくる癖に、媚びない。探らない。けれど、ちゃんと見ている。
最初、清水は距離を取った。
面倒そうだな、と本気で思っていた。
だが気づけば、隣にいる。グループ課題で自然に同じ班になる。昼休み、いつの間にか近くの席にいる。清水が本を読んでいると、横から覗いてくる。
「それ、面白い?」
「人による」
「清水は?」
「面白い」
「じゃあ面白いんだろうね」
意味が分からない。
ある日、清水は少しだけ苛立って言った。
「お前、なんなんだよ」
「なにが?」
「なんでそんな自然に入ってくるんだ」
「嫌だった?」
その問いに、清水は詰まった。
嫌ではない。ただ、説明できない。この男は、人との距離の詰め方が変だった。気持ち悪くて、少しだけ楽だった。
その感覚に、まだ名前はなかった。




