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24/177

第24話 施されている

流れがある。


そう思ったのは、初めてだった。


⸻


自分の意思とは関係なく、

何かが進んでいく。


⸻


そんな感覚。


⸻


昼過ぎ。


スマートフォンを見る。


⸻


母からのメッセージ。


『術後検査、問題なかったって』


⸻


短い言葉。


⸻


それだけ。


⸻


それなのに。


⸻


止まらない。


⸻


私は、しばらく画面を見ていた。


⸻


「……早すぎる」


小さく呟く。


⸻


あり得ることなのか。


分からない。


⸻


それでも、現実としてそこにある。


⸻


仕事に向かう。


いつも通りの道。


⸻


それでも、足が少しだけ重い。


⸻


レジに立つ。


いつも通りの場所。


⸻


その人はいない。


⸻


来ない。


⸻


当然だと思う。


⸻


自分で、線を引いたから。


⸻


それでも。


⸻


何かが、残っている。


⸻


昼過ぎ。


同僚の声が聞こえる。


⸻


「聞いた? あの病院」


⸻


私は、手を止めない。


⸻


それでも、耳だけがそちらに向く。


⸻


「紹介じゃないと、まず入れないらしいよ」


⸻


その言葉に、胸がわずかにざわつく。


⸻


「すごい先生いるんだって」


⸻


笑いながらの会話。


ただの雑談。


⸻


それでも。


⸻


私は、少しだけ呼吸を忘れる。


⸻


――紹介。


⸻


頭の中で、言葉が重なる。


⸻


「できますよ」


⸻


短い一言。


⸻


それだけで、何かが動いた。


⸻


私は、ゆっくりと息を吐く。


⸻


偶然。


⸻


そう思おうとする。


⸻


でも。


⸻


それだけでは、足りない。


⸻


夜。


店を出る。


空気が、少しだけ冷たい。


⸻


歩きながら、考える。


⸻


――頼んでいない。


⸻


あの人に。


⸻


はっきりと、頼んだわけじゃない。


⸻


それでも。


⸻


進んでいる。


⸻


手術も。


ドナーも。


⸻


全部が。


⸻


少しずつ。


⸻


自分の外で。


⸻


ふと、足を止める。


⸻


胸の奥が、ざわつく。


⸻


これは。


⸻


私の力じゃない。


⸻


そう思ってしまう。


⸻


思ってしまった。


⸻


私は、ゆっくりと息を吐く。


⸻


考えないようにする。


⸻


そうしないと。


⸻


どこまでが自分で、

どこからが自分じゃないのか。


⸻


分からなくなる気がした。


⸻


家に帰る。


ドアを閉める。


静かな部屋。


⸻


それでも、どこかだけ落ち着かない。


⸻


私は、スマートフォンを手に取る。


⸻


連絡先を開く。


⸻


そこに、名前はない。


⸻


それでも、浮かぶ。


⸻


あの人のこと。


⸻


指が、少しだけ動く。


⸻


止まる。


⸻


――違う。


⸻


これは。


⸻


自分で決めたことじゃない。


⸻


そう思う。


⸻


それでも。


⸻


どこかで。


⸻


自分も、その流れに乗っている。


⸻


そんな気がした。


⸻


私は、ゆっくりと画面を閉じる。


⸻


何も押さない。

何も選ばない。


⸻


それでも。


⸻


何かが、確実に進んでいる。

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