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【第3章】【第1節】鉄機帝国ゼノグラードとの死闘、ドブの悪魔と呼ばれる少年

第3章 戦場の錬金術師と腐敗する王国


第1節 鉄機帝国ゼノグラードとの死闘、ドブの悪魔と呼ばれる少年


ルミナリア王国の北端、荒涼とした大地が広がる国境地帯。ここは長年、隣国である鉄機帝国ゼノグラードとの間で紛争が絶えない場所だ。帝国の主力兵器は、魔力を動力とする巨大な機械兵団。対するルミナリアは、騎士の武勇と魔法、そして錬金術による支援で対抗していた。


しかし、現実は厳しかった。帝国軍の物量と火力に対し、ルミナリア軍は常に劣勢を強いられていた。補給路は度重なる奇襲で寸断され、前線の兵士たちはポーション不足に喘いでいた。


そんな地獄のような最前線に、一人の少年が降り立った。

アルス・ロウェル、五歳。史上最年少の宮廷錬金術師である。


「ここが、戦場……」


アルスは鼻をつまんだ。そこには、慣れ親しんだドブ川の腐臭とは違う、鉄と血と硝煙の混じった独特の臭気が漂っていた。

彼が配属されたのは、王国の精鋭部隊である「近衛騎士団」。団長ヴォルフ率いるこの部隊は、最前線で最も激しい戦闘区域を担当していた。


「おい、新入り! ぼさっとしてるな! ポーションの在庫はどうなってる!」


怒号と共に駆け寄ってきたのは、全身傷だらけの副団長だった。彼の鎧はへこみ、顔には疲労の色が濃い。


「在庫はありません。補給部隊が全滅しましたから」

「なっ……じゃあ俺たちは、このまま死ねってのか!?」


絶望する副団長に対し、アルスは淡々と答えた。

「大丈夫です。ここで作りますから」


アルスはその辺に生えている雑草と、足元の土を掴み取った。

「はぁ? 何言ってるんだ、正気か!?」

副団長が叫ぶのも無理はない。錬金術には専用の工房と、高価な機材、そして何より純度の高い素材が必要だというのが常識だからだ。


しかし、アルスには常識など通用しない。

彼の掌が淡い光を帯びる。


解析アナライズ……土壌成分抽出、薬草成分濃縮、合成シンセシス!」


カッ!

一瞬の閃光と共に、アルスの手には透明なガラス瓶が現れた。中には黄金色に輝く液体――最高品質のハイ・ポーションが満たされている。


「うそだろ……?」

副団長は目を疑った。泥と草から、一瞬で?


「はい、どうぞ。これなら即効性があります」

「お、おう……」


半信半疑でポーションを煽った副団長は、次の瞬間、目を見開いた。全身の傷がみるみる塞がり、疲労感すら消え失せたのだ。


「す、すげぇ……! なんだこれは、王都の高級品より効くぞ!」


その噂は瞬く間に騎士団全体に広まった。

アルスは戦場のあらゆるものを素材に変えた。岩石から簡易防壁を、枯れ木から爆発ポーションを、そして帝国軍の装甲を溶かす強力な酸性ポーションまでもを次々と生成した。


「右翼、敵襲! 機械兵団だ!」

「アルス様、酸性弾を!」

「了解! 生成クリエイト!」


アルスが放った緑色の液体瓶が、巨大な鉄巨人に直撃する。ジュウゥゥッ! という不気味な音と共に、鋼鉄の装甲が飴細工のように溶け落ち、機械兵は機能を停止した。


「ひいいっ! あいつだ、また『ドブの悪魔』だ!」

帝国兵たちの悲鳴が響く。かつて「ドブ臭い」と蔑まれた少年は、今や敵国にとって最大の脅威となっていた。


他の師団が物資不足で壊滅的な被害を出す中、アルスの支援を受けた近衛騎士団だけは、驚異的な生存率と戦果を叩き出した。「ほぼ無傷」での連戦連勝。それは間違いなく、五歳の少年の力によるものだった。

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