ー【第3節】禁書庫の古文書が明かす真の錬金術
第3節 禁書庫の古文書が明かす真の錬金術
禁書庫の中は、埃っぽい匂いと、古い紙の香りで満たされていた。薄暗い明かりの中に、ボロボロになった羊皮紙や、鎖で繋がれた分厚い魔導書が無造作に積まれている。
「ここは、歴史の闇に葬られた知識の墓場じゃよ」
ヘルメスはランタンを掲げ、一冊の本を手に取った。
「これは三百年前の『失われた錬金術』について書かれた本じゃ。解読できる者は、この国に数えるほどしかおらんが……」
アルスはその本を受け取り、パラパラとページをめくった。
文字は見たことのない複雑な記号の羅列だったが、『バベルの鍵』が瞬時に意味を脳内に投影する。
「……『物質の根源粒子における魔力干渉の定式化』? これ、すごく合理的だ!」
「なっ!?」
ヘルメスは目を見開いた。この難解な古代語を、一目見ただけで理解したのか?
アルスは興奮気味に読み進める。そこには、現代の錬金術が忘れてしまった「科学的アプローチ」が記されていた。詠唱や儀式ではなく、物質の原子構造に直接働きかける理論。マリモ師匠の教えと合致する、真の錬金術だ。
「すごい……これなら、もっとすごいことができる!」
アルスは禁書庫の本を次々と手に取った。古代の兵器設計図、絶滅した植物の効能、そして伝説の生物に関する記述。知識の奔流が彼を飲み込み、そして彼自身を新たな高みへと押し上げていく。
『バベルの鍵』と『禁書の知識』。二つが組み合わさった時、アルスの中で錬金術は「魔法」を超えた「科学」へと進化した。
ヘルメスは、一心不乱に読み耽る小さな背中を見つめ、震える声で呟いた。
「……恐ろしい子が生まれたものじゃ。この子は、いずれ世界の理すら書き換えてしまうかもしれん」
それから数ヶ月。アルスは禁書庫の知識を完全に吸収し、独自の実践理論を構築していた。五歳にして、彼の錬金術レベルは既に人類の到達点を超えようとしていた。




