ー【第3節】史上最大の大宴会と大元帥の敗北、そしてエピローグ
第3節 史上最大の大宴会と大元帥の敗北、そしてエピローグ
「かんぱーい!!」
「うぉぉぉ! アッシュバーデン最高!」
戦場だったはずの場所は、巨大なビアガーデンと化していた。
アッシュバーデンの市民たちは、敵意など微塵も見せず、甲斐甲斐しく料理や酒を振る舞っている。
「ほら兄ちゃん、もっと食えよ!」
「おう、ありがとよおっちゃん! あんたら、こんな良いもん食ってたのか?」
「へへっ、アルス様のおかげさ!」
そこへ、森の方からズシンズシンと足音が響く。
「グルルッ(俺たちも混ぜろ)」
「ガウッ(酒なら持ってきたぞ)」
霧の樹海から、S級魔物たちが大量の果実酒や獲物を抱えて合流してきたのだ。
普通なら悲鳴が上がるところだが、すでに賢者タイムで理性が溶けている騎士たちは、魔物を見ても動じない。
「おお、でっかいワンちゃんだな! よしよし!」
「その酒、美味そうだな! 一杯くれよ!」
魔物が酒を注ぎ、騎士がそれを受け、ドワーフが肉を焼く。種族も立場も超えた、カオスで平和な大宴会が繰り広げられる。
後方で一人取り残された大元帥ヴォルターは、顔を真っ赤にして震えていた。
「お、おのれぇぇ……! 督戦隊! 予備兵力! あの腑抜け共を斬り捨てろ!」
彼は最後の手段として、後方に待機させていた精鋭部隊を投入した。
だが、彼らが宴会場に近づいた瞬間。
『……まだ足りぬか』
上空のグラン・ヴェルデがギョロリと睨む。
カッ!
再び放たれた波動により、督戦隊もまた、一瞬で賢者タイムへと突入した。
「……あ、焼きそばある」
「……ビール冷えてます?」
彼らもまた、吸い込まれるように宴の輪に加わっていく。
ヴォルターは呆然と立ち尽くした。自分の命令を聞く者は、もう誰もいない。
絶望と孤独に膝をついた彼の前に、一人の少女――いや、幼女が現れた。
牛の角を生やした、可愛らしい女の子だ。
「おじちゃんも、寂しそうだねぇ」
海淵の聖牛神ヴォル・アピス、通称アピスちゃんだ。彼女はとくとくとお猪口に酒を注いだ。
「ほら、飲みなよ。楽になるよ?」
「……う、うう……」
ヴォルターは震える手で杯を受け取った。一口飲むと、張り詰めていた何かがプツリと切れた。
「……美味い」
「でしょ? おかわりあるよ!」
数分後。そこには、アピスちゃんに酌をされながら、だらしなく笑う元大元帥の姿があった。
こうして、ルミナリア王国の侵攻作戦は、一人の死者も出すことなく、「二日酔いの大量発生」という結果で幕を閉じたのである。




