ー【第4節】エピローグ:ドブ川の錬金術師、世界を旅する
第4節 エピローグ:ドブ川の錬金術師、世界を旅する
この「大宴会の戦い」を経て、ルミナリア王国の権威は地に落ちた。
10万の兵士たちはアッシュバーデンの豊かさと、アルスの力に魅了され、多くがそのまま帰順するか、王都に戻っても戦うことを拒否したからだ。
アッシュバーデンは王国の一部でありながら、事実上の独立自治権を獲得。アルスは王国の経済、流通、そして軍事力(魔物含む)の全てを掌握する「裏の支配者」となった。
一方、植物状態だった国王ルシウスは、後にアルスがこっそり送った解毒薬で回復した。目覚めた彼は、娘のエリス王女や賢明な家臣たちから事の顛末を聞き、深く恥じ入った。
彼は腐敗した皇后一派や貴族たちを粛清し、国を根本から改革することを誓った。その第一歩として、アッシュバーデンとの正式な和解と、アルスへの謝罪を行ったという。
そして数ヶ月後。
平和になったアッシュバーデンの丘の上に、旅支度を整えたアルスの姿があった。
「本当に行くのかい、アルス?」
シークフリートやガンドル親方、そして大勢の市民が見送りに来ている。
「うん。この街はもう大丈夫だし、僕がいなくても回るよ。それに……」
アルスは隣に浮かぶ白い毛玉――マリモを見つめた。
「世界にはまだ、僕の知らないことがたくさんある。師匠と一緒に、もっと色んな景色を見てみたいんだ」
『フン、殊勝な心がけだ。付き合ってやるぞ、弟子よ』
「アルスく〜ん! 私も行く〜!」
海の方からアピスちゃんも走ってくる。
「ははっ、賑やかな旅になりそうだね」
アルスはリュックを背負い、輝くような笑顔で振り返った。
かつてドブ臭いと蔑まれた少年は、今や世界で一番自由で、豊かな錬金術師となっていた。
「行ってきます!」
アルスたちの乗る馬車が(動力は謎の魔導エンジン)、地平線の彼方へと走り出す。
その荷台には、溢れんばかりの夢と、最強の仲間たちが詰め込まれていた。
ドブ川の錬金術師の物語は、ここで一旦幕を閉じる。
だが、彼の作り出す奇跡と伝説は、これからも世界中で語り継がれていくことだろう。
(完)




