ー【第2節】物流革命と最下層の経済支配、そして温泉リゾート化
第2節 物流革命と最下層の経済支配、そして温泉リゾート化
浄化機構の稼働により、アッシュバーデンは劇的に変化した。
しかし、アルスの計画はそれだけでは終わらなかった。
「作った資源を、高く売らなきゃ意味がない」
彼は次に『物流分配錬金術(ロジスティクス・ディストリビューション・アルケミー)』を構築した。
地下に張り巡らされた配管を利用し、生成された資源を自動的に最適な場所へ輸送するシステムだ。
中層の工場にはレアメタルを、上層の貴族街には高級ペーストを、そして近隣の農村には有機肥料を。
これらを市場価格より安く、しかし安定して供給することで、ルミナリアの経済はアッシュバーデンなしでは回らなくなった。
「おい、またアッシュバーデンから納品があったぞ!」
「品質最高だ! 王都の業者はもう使えん!」
莫大な富が最下層に流れ込み始めた。
アルスはその資金を惜しみなく街の整備に充てた。
ボロ家は清潔な石造りの家に建て替えられ、道路は舗装され、街灯が灯る。
かつてのヘドロまみれの荒野は、有機肥料によって肥沃な農地へと生まれ変わり、色とりどりの野菜や果物が実るようになった。
さらに、地熱を利用した温泉施設も建設された。
「『極楽湯アッシュバーデン』、本日オープンだよ!」
アルスがテープカットを行うと、住民だけでなく、噂を聞きつけた中層の商人たちも列を作った。
「かーっ! いい湯だ!」
「肌がツルツルになるわ!」
「ここの飯は王都より美味いぞ!」
ドブ川は清流となり、小魚が泳ぎ、川岸には花が咲き乱れる。
かつて「掃き溜め」と呼ばれた場所は、今や一大リゾート地となり観光客で賑わっている。
自警団の活躍もあり、治安も劇的に改善された。というか、スラム特有の「食うための犯罪」が、食料の無料配給と雇用の爆発的増加によって消滅したのだ。
元団長の『岩砕き』の異名を持つバルカス・ガストンらが、アルスに心酔し協力を申し出たからだ。
「アルス様のためなら、命を懸けてこの街を守る!」
彼らの活躍により、犯罪組織は壊滅し、街は平和そのものとなった。
アルスは街を見下ろす丘の上で、マリモ師匠と並んで座っていた。
「どうかな、師匠。結構いい街になったでしょ?」
『フン、悪くない。だが、まだ足りんな』
「えっ、まだ?」
『我の住処である樹海との連携だ。……ついて来い、小僧』
マリモ師匠は、霧の樹海の方角を指差した。




