【第4章】【第1節】アッシュバーデン浄化機構の起動と奇跡の変貌
第4章 汚染された最下層の浄化と繁栄
第1節 アッシュバーデン浄化機構の起動と奇跡の変貌
王宮を飛び出し、マリモ師匠と共に故郷アッシュバーデンへと戻ったアルス。彼を迎えたのは、相変わらず上層から降り注ぐ汚水と排気ガス、そして鼻を突く腐臭だった。
「ただいま、みんな」
ボロ布を纏った痩せこけた住民たちが、力なく手を振り返す。かつて自分が救った集落も、根本的な貧困と汚染は変わっていない。このままでは、またいつか疫病が流行り、大切な人たちが死んでしまう。
「……変えるよ、師匠。この場所を、世界で一番豊かな街に」
『フン、大言壮語だな。だが、今の貴様になら不可能ではない』
アルスは街の最深部、全ての汚水が集まる巨大排水口の前に立った。
そこは、かつて師匠と出会った場所であり、都市の汚濁の心臓部でもある。
「始めるよ。……『アッシュバーデン浄化機構』、起動」
アルスは地面に手を突き、全魔力を解放した。禁書庫で得た古代錬金術の知識と、独自に開発した理論を融合させた、超大規模な術式が展開される。
「第一段階、重力偏析陣!」
ゴゴゴゴ……!
大地が低く唸る。排水口を中心に、目に見えない重力の渦が発生した。上層から流れ込む真っ黒なヘドロが、その渦に巻き込まれ、猛烈な勢いで回転を始める。
「分離しろ!」
遠心力と魔力操作により、汚水に含まれる重金属や有害物質が物理的に引き剥がされていく。キラキラと輝く粒子が集まり、やがて純度の高いインゴットとなって排出された。
ミスリル、オリハルコン、ダマスカス鋼……。中層の工場群が喉から手が出るほど欲しがるレアメタルたちが、ゴミの中から次々と生まれていく。
「次は有機物だ! 有機構造賦活解析!」
残ったドロドロの液体に、今度は緑色の光が注がれる。腐敗した生ゴミや排泄物が、分子レベルで分解され、再構築されていく。
悪臭が消え、芳醇な香りが漂い始めた。
生成されたのは、栄養価の高いペースト状の食糧と、強力な有機肥料だ。貴族たちが好む高級食材の原料となる「ロイヤルペースト」、労働者向けの「パワーフード」、そして魔獣たちが好む「ビーストチャオ」。
「最後は、水!」
不純物を完全に取り除かれた液体は、透き通るような輝きを放つ「100%ピュアウォーター」へと変わった。
「す、すげぇ……!」
「ドブ川が、光ってるぞ!?」
集まってきた住民たちが驚嘆の声を上げる。かつて死の川と呼ばれた場所が、今や清らかな水を湛え、岸辺にはレアメタルの山と、食糧の山が築かれているのだ。
「みんな、これを使って! 水も食糧も、もう心配いらないから!」
アルスの言葉に、歓声が爆発した。
ドブ臭いと蔑まれた少年が起こした奇跡。それは、アッシュバーデンの歴史が変わる瞬間だった。




