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漸減要撃作戦が功を奏したようだった。
丁度、挟撃状態となって、野盗共の艦隊はその数を減らし、今はこちらの輪形陣の中で残り少なくなっている。
それと、正規空母の艦載機を指揮して、銀髪の雷撃機乗りが、縦横無尽に敵艦を沈めてくれている。
大怪我をしていたと思えないほどだった。
次空間転送リングの情報を集めにいってもらった後にすぐさま、こんな大混戦の中を、だ。
さすが、大将軍の娘、どんな状態でも戦果を挙げてくれる。
一方、敵正規軍と思しき、艦艇は巧みにこちらの攻撃をかいくぐって、未だ健在であることは、この混戦状況の戦場で、その状況を把握するのは俺以外、困難だろう。
しかも、少しづつ離れていくのが見て取れた。
不気味な動きをする。
だが、眼の前のバツ包帯野郎と、正規軍と、野盗の残党が目の前にいる事は事実だ。
バツ包帯野郎の周りには、寄生されたであろう繭が貼り付いている艦艇が数隻周りを囲んでいた。
どこかの戦で鹵獲した代物だろう。
幾度も、その乗っ取られた艦からこちらへ、主砲の光跡が延びてきている。
今のところ、シールドで跳ね返しているが、エネルギーの残量も心もとない。
こちらも応戦して、いくらそれらの艦に直撃を与えても、また友軍の長距離砲がその艦体に穴をあけて沈めても、
そもそも誰も乗っていない、いや、乗っているのは無機質な殺戮機構と害獣だけだ、
どうなろうと、元々は鹵獲した物、何ら惜しむところがない。
それこそ捨て駒だ。
だから大胆な攻撃に打って出ている。
厭らしいモニターは、相変わらず垂れ流している。
バツ包帯野郎は独り言なのか、こちらに向かって言っているのか。
そういや、この星には白い最新鋭の弩級艦があるらしいな。
そいつを乗っ取って、俺の傭兵の箔を付けようか。
そいつもいいな。
自分で言ったことに、勝手に納得しながら。
御跡一挙両得だぁ。
と歯をむき出しでその顔をモニター一杯にした。
相変わらず、侍らしている女はモニターの外で嬌声を上げている。
やっぱりこいつはいかれてやがる。
俺はそう思いながら、白鯨にはこいつに手出しをさせてたまるか、と。
操縦桿をへし折るのではないかと言う位、力が入っているのが自分でも分かった。
バツ包帯野郎の艦からは繭が射出され続けている。
そのコクーンを、
行く手を阻むそいつの放つ繭を撃ち落としながら、弾幕を張った。
座標合わせをスパイラルにしながら、野盗の残党と共に主砲と副砲と通常弾を撃ち込みながら。
咲く華の様だった。
これが戦でなかったら、色とりどりの光跡が銀河を彩り、美しいものだろう。
だが、これは戦の魂に、手向けられた華の様だった。
再度、操られている戦艦は、鎌首を立てる蛇の様に艦首を一斉にこちらに向け、一斉射を放ってきた。
その後方にはそいつの艦が禍々しく漂っている。
その艦に人形と猛獣を詰めた繭の球体が鈴なりに貼りついている。
一隻の駆逐艦が援護のつもりだろうか、前に出張って来た。
おれは慌てて、その艦に向け、不用意に近づくなと、警告して、後ろに下がるように叫んだ。
が、遅く、
繭が取り付き乗っ取られてしまった。
ただ、不幸中の幸いだろう、乗組員は全員無事に退艦したようだった。
もと、味方の艦はこちらに艦首をむけ、そいつを守る盾の様におのれの陣形の一つにしてしまっていた。
その間も乗っ取られている艦から、一斉射が、光跡を描きながら、この重巡に向かい放っている。
脱出した、駆逐艦のポッドを守りながら、友軍の戦艦に収容されるのを見届け、艦首を再度そいつに向け突進した。
繭が取り付いてからそんなに時間が経たなくても、あっという間にその艦を制してしまう。
駆逐艦と言う比較的小さい戦闘艦だが、それを考慮に入れても、その素早さには、油断がならない。
いつの間にか切れてしまっている、モニターを睨みながらそう思った。
いま、対峙している状況を見てだろう、白鯨が電探の外から急にモニターにその姿を現した、
しまった。
俺は歯ぎしりをした。
女学校で教えたことを忠実に守ったからだ、それがかえって獲物を与えることになってしまう。
一生の不覚だった。
死角からの攻撃、
丁度、敵味方お互いの電探が混戦状態の中でハウリングを起こし、座標が殆ど狂ってしまう状態が起こる、
そのため正常状態の時の敵味方の座標を、頭に叩き込んでおく。
鉄則だ。
逆にその虚を突いてこちらから、有利な攻撃位置も取ることが出来る。
それを講義した。
たぶん彼女達も、初めて打って出て、敵と対峙できる遊撃隊としての初出陣。
必死に、我々の役に立ちたいと操艦、攻撃を繰り出している事だろう。
普通の敵なら全面的に任すが。
こいつだけは相手が悪い、
白鯨に向かって叫んだ。
下がれ!
が、白鯨は主砲と副砲を放ちながら、進んで行った。
その状態を最後に再び電探が沈黙した。
通信が混線しているのか、返信が無い。
目視でどうにかわかる距離だ、
白鯨に向かい繭を切り離している、
早く、あのコクーンを取り着かせるな、
全速前進、全砲門をあの繭に
撃て、放て。
軌跡は繭を貫き光の屑となった。
大丈夫か、
血を吐く思いで、叫んでいた。
一向に通信が回復しない、雑音だろうか、人の声なのだろうか判然としない。
これほど長く、時間を感じたことは無かった。
そして、その間奥歯が砕けるかと思うほど歯噛みした。
拙作にいつも目を通していただき、誠に感謝申し上げます。投稿を始めてから、一年と半年が過ぎました。読者の様の皆様のおかげと感謝に堪えません、誠にありがとうございます。貴重なお時間を頂きまして、目を通して下さり、誠にありがとうございます。




