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サクヤ

 そらと最後に会った日のことを思い出した。

 中学二年生の時。病室を出て、浅津《あさつ》涼沍《りょうご》くんと別れてから、私は全力で走った。セーラー服のブラウスは汗で背中にピッタリと張り付き、気持ち悪かった。ついさっきも病院まで走って汗だくになったばかりだ。方向転換してシャワーを浴びたい気持ちを抑えながら、そらに渡された地図の場所へ向かった。「いつか誰かに渡せよ」といって渡されたのは、彼が独りで埋めたタイムカプセルの地図だ。

 その日すぐにそれを掘り返す必要はなかったし、今にして思っても、それはいつ掘り返したところで一緒だったと思う。

 ただ、当時の私は居ても立ってもいられなかったのだ。

 そらの殴り書いた地図を元に、真夜中までそらの家の庭で穴を掘り続けた。

 ビニールで何重にも包まれ、サランラップでぐるぐる巻きにされた金属の缶の中には、小学生の時に私が土手で見つけたグレーの指輪ケースが入っていた。こんなところにあったんだ、と思った。

 それ以外はなにも入っていなかった。

 そらは、なにを考えてこれを埋めたんだろう。

 ケースの中には、当時のまま、ヴェルタースオリジナルがひとつ入っていた。

 それ以来私は、その箱をずっと大切に持っていた。

 あっくんと同棲する事になった裏野ハイツに、私は今日、独りで来ている。

 サプライズでこの指輪ケースを見つけてもらうために、隠しに来たのだ。管理人さんには家具を運ぶ都合でもう一度下見をしたいと頼んだ。一応、私が独りで来たことは、彼には内緒にしてもらうようにも、お願いしておく。

 彼がそれをうまく見つけてくれるか楽しみだった。

 そしたら、昔そらとした話を彼ともしよう。

 そのキャンディは、特別なヒトにあげるんだよ。って。

 私の言いたいこと分かるかい? って。

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