番のスズメ
その日。土手で遊ぶのは久しぶりだった。
時計台の時計が十五分進んでいることは、もちろん知っていたけれど。あまり久しぶりだったのですっかり忘れてしまっていた。何日か前にも、「最近帰りが遅い」と注意をされたばかりなので、少し時間に神経質になっていたというのもあるかもしれない。
そらと別れてから、時計が進んでいることを思い出し、引き返すと、そらとサクヤ——当時は横根と呼んでいた——が楽しそうに話しているのが見えた。とっさに、土手のてっぺんに伏せるようにして隠れてしまった。自分が降りていったら、邪魔なんじゃないかと思ってしまったのだ。そのまましばらく成り行きを見ていた。指輪ケースにヴェルタースオリジナルを入れたことは、サクヤにもそらにも聞いたことはなかったけど、その時に見ていたので知っている。その時は、このままあのふたりは恋人同士になるんだろうなと思っていた。
俺にとってそらは、唯一の尊敬できる人間で、一番信頼する友人だった。大人よりも気遣いができて、辛い姿や、努力する姿や、自分の弱みは決して見せず、いつでも全力で生きて、笑っていた。だからそらの周りは、いつだって楽しそうだった。
けど、そんなそらも、中学生の時に事故に遭って死んだ。
彼らしいと言えば彼らしい最後だったと、これだけ時間の経った今なら言うことができるが、当時は、本当に悲劇的だった。
手術が行われ、病院のベッドで横になるそらと少しだけ話をさせてもらうことができた。
その時の会話が、空との最後の会話で、今でもよく覚えている。




