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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【新大陸へ】
199/237

経緯

「さてと、どっちから話した方がいいかな。」



 俺は皆に問いかける。

 俺達はまたクレタのギルドマスターの部屋に戻ってきた。

 これまでの話とこれからの話をする為にバロンさんにお願いをして場所を貸して貰ったんだ。

 まぁバロンさんにも聞いておいてもらった方がいい話だしな。

 良いアドバイスを貰えるかもしれないし。

 


「でもガイ達の話はもうバロンさんとブランは聞いているのか。だったらここで話すと2回目になっちゃうか。後で俺とアリアだけが聞けばいいかな。」


「いや、別に大した話はしていない。鬼の里を見付け、そこで修行したという話をしただけだ。」



 そう言ったのはガイだった。



「そうなんだ?」


「あぁ、別に事細かく説明する必要はないだろう。」



 いや、色々あったみたいだから聞きたいんだけど。特にシータとの事。だがそんな事だけ詳細に聞く訳にもいかないし。

 まぁそんなこと気にしてるのは俺とアリアだけかもしれないがね。

 アリアがチラチラとガイとシータが並んで座ってる姿を見ている。

 ただガイも結構シャイだからこういう人がいっぱいいる場所ではあんまり話したくないだろう。後でこっそり聞くとしようかな。



「ただ俺の方もそこまで何かあったという訳でもないんだけどね。

 端的に説明すると知識と知恵の神の試練を受けて、それをクリアして勇者や魔王の事をを聞いたり、これからの事を聞いたくらいなんだけどね。」


「その試練ってどんなのだ?」



 俺の話に喰いついたのはバロンさんだった。

 神の試練が気になったみたいだけど。



「ん~、バロンさんが望む様な試練んじゃなかったですよ。心と言うか魂と言うかそれを試す様な、そんな感じの試練でした。

 簡潔に説明すると何故異世界から来た俺が勇者として命を懸けてこの世界を救おうとするのか?それを確認された様なものですね。」


「なんだ、そうだったのか。」



 バロンさんが俺の言葉を聞いてとても分かりやすいガッカリ顔をして言った。



「で、お前はなんて答えたんだ?」


「えっ?!」



 バロンが続けてそう聞いてきた。



「いや、まぁ、その。大事な人達が笑って過ごせるように魔王を討つとかなんとか・・・。」



 いや、とてもこっ恥ずかしい。こんなことを皆の前で直接言うのは。

 皆俺の言葉を聞いて笑顔で見てくる。

 やだもう、恥ずかしい。



「まぁそういう事だったんですよ。心を読める神だったのでそれに嘘偽りないことが分かり、それで認めてくれて色々と教えてくれたって訳です。」



 俺は場の空気に耐えられなくなって声を大きくして言った。



「ただ勇者と魔王の件はまだ皆にはちょっと話せないんだ。

 試練を受けたのは俺だし、他の人に言うのはちょっとね。

 そのうち話すことにはなると思うけど、それまでは俺を信じて貰うしかないんだけど・・・。」


「今更だな。」



 ガイがそう言って、他の皆もそれに同意したように頷いた。



「お前が命を懸けでこの世界を救おうとしてくれてるんだ。その事を疑ったりもしないし、信用してる。

 いつも言ってるだろ俺達はずっとお前を信じるし、この先だってずっと一緒に歩んで行くって。」


「ガイ・・・。」



 ガイがそんなことを言ってくれるとは思はなかった。

 なんだろう、シータと色々あってそう言う事を口にするのが恥ずかしくなくなったんだろうか。



「ガイの言った通りですじゃ。我々は主(あるじ)と共にこれからもこの世界の為戦いますわい。」


「ブラン。」


「主(あるじ)には感謝しています。主(あるじ)がいなければ今頃私はどうなっていたかわからない身。それが今は大好きな人といれること、ありがたく思います。この命尽き果てるまで皆さんと共に。」


「シータも。」


「えぇ、私もダイゴ様と共に。いついかなる時もこの身を捧げましょう。それが私の使命であり、生きるという事なのです。」


「アリアもありがとう。」


「俺は・・・、一緒にってのは難しいかもしれんがやれることはやるつもりだ。

 この世界を救うのは何もダイゴ1人だけってことでもないだろう。俺達にもやれることはあるはずだし、俺達の世界なんだからやるべきだろう。だからいつだって、どんなことだって力を貸してやる。」


「バロンさんまで、ありがとうございます。」



 嬉しいな、皆にここまで言って貰えるなんて。

 やっぱり皆の事は大事だし、皆が俺の事を大事に思ってくれてるのが改めて分かった。



「皆ありがとう。これからもよろしくね。」



 俺はそう言うのが精一杯だった。洒落た事を言えたらいいんだけど、頭に浮かばなかった。

 オモイカネの試練で俺が思ったことをそのまま言ってくれたようなものだ。

 俺は皆を思い、皆も俺の事を思ってくれている。

 あの試練で改めて知った自分の本音を受け入れ、肯定してもらった。

 これ以上の事はないだろう。それだけで俺はどんな大変な目に合っても乗り越えられる気がする。



「えっと、じゃあこれからの話をするね。」



 俺は話題を切り替えた。

 あのままだとずっと浸(ひた)ってそうだったし。俺が話を進めないとこれ以上話が進まないし。



「一応知識と知恵の神、オモイカネって名なんだけど。そのオモイカネは今回の魔王はかなりの強さを持ってるからエルフにも助力を求める様にって言ってた。魔王と言うか、魔族全体が強いって感じなんだけど。

 流石に俺達だけで魔族全部を相手取る訳にもいかないしね。この世界の魔族以外の種族にも協力を求めないといけないかな。

 で、人族にはあまりいい気持を持っていないエルフが力を貸してくれると言ってくれたら、他の種族それに習って協力してくれるかもしれないからって。

 あぁ、シータごめん。こんな言い方して。」


「いえ、確かにエルフ族は人族に対して良い感情を持っていないというのは事実です。

 主(あるじ)は事実を述べたまで。お気遣いなく。」


「ありがとう。だからまずはエルフの里に行って協力関係を結ぶのが最優先かな。

 後一応エルフの里にキュクロさんが打った伝説の剣みたいなものがあるみたいだからそれも貰って行こうかなって・・・。」


「「伝説の剣!?」」



 ガイとバロンさんがハモって言った。

 絶対に喰いつくとは思ったけどね。



「うん、キュクロさんに直接聞いたんだ。もしエルフの里に行くんだったらキュクロさんの試練を完全にクリアしたお前にやるって。

 でも、あれだよ。なんでも使い手を選ぶ剣みたいだから俺が貰ったとしても使えるかは別の話なんだって。しかも対魔王用の武器でもないみたい。

 だから行くついでに貰ってもいいかなって。」


「ついでとか本気で言ってるのか?」


「いや、だって使えるかどうかもわからない、どんな力を持ってるかもわからない剣だよ。

 期待してもいざ使えなかったら意味ないだろう?」


「俺やバロンが使えるかもしれないだろう。」


「それはそうかもしれないけど。」


「面白いじゃないか、剣が使い手を選ぶなんて。絶対に使いこなしてやろう。」


「バロンさんまで面白がって。でも一緒には付いてこないんでしょ?」


「まぁそれはそうなんだがな。興味はある。」


「もし俺やガイが使えなければ持って帰って来てバロンさんにも3試して貰うようにしますから。」


「何!?絶対だぞ!」


「ハイハイ、わかりました。」



 バロンさんやガイが言いたいこともわかる。

 使えるかどうかわからない伝説の剣があるとして、自分だったら使えるんじゃないかって思うのは戦いに身を置く男だったら一度は考える事だろう。

 俺自身も実際に俺だったら使えるんじゃないかと言う考えはある。

 ただそれでもし使えなかった時恥ずかしいから興味ない振りをしてるだけなんだけどね。



「それよりも問題にしないといけないことがありますし。

 どうやって【ウィクルーア】に渡ってエルフの里に行くかっていう事ですよ。

 それもあってバロンさんを交えて話してるんですからね。」


「他の大陸へか・・・。」



 伝説の剣の話題で話の筋が変わってしまったので元に戻した。



「えぇ、今の所はそれが一番の問題なんですよ。」


「まぁ【ウィクルーア】へ渡る方法はいくつか考えられるがな。」


「俺もいくつかは思い付いているのがあるんですがどれが一番現実的かなって。」


「例えばなんだ?」


「正攻法としては冒険者として【ウィクルーア】へ行く方法。護衛なり、自ら冒険、探検の目的として行く。護衛はあんまり現実的的ではないかもしれませんがね。向こうについても護衛なんてやってる暇ないでしょうし。

 冒険、探検として行くんだったらどう行くかですよね。船で海を渡るしかないでしょうし。大陸間を移動する船がいくつもあるのか?それに乗せてもらう事は可能なのか分かりませんし。」


「お前のスキルは?長距離でも一瞬で移動できるんじゃないのか?」


「距離によりますね。後は海ってところが問題でしょうか。

 【転移の門(ポータルゲート)】っていうスキルなんですけど移動するには移動先に魔法具なり、分身体を用意しないといけないんです。

 今回の場合だと魔法具は持って行くのは難しいでしょうから分身体を【ウィクルーア】まで送り込むことになるでしょう。分身体は鳥なんかに変身出来ますけど俺のステータスをかなり削って作ったうえで作り上げたものなんです。MPなんかの回復は出来ないので途中で何かあった場合は消える可能性が高いんです。海の上を飛んでいくことになると目印がないのでどこを飛んでいるか、どっちに飛ぶかわからなくなりそうです。途中モンスターと遭遇でもした場合は戦闘でMPを消耗しないといけなくなるでしょうしね。正直賭けに近い感じでしょうか。その間の俺のステータス値も下がったままなので万が一の事があっても戦ったりできなくなります。」


「そうだったのか。流石に賭けに出る程ではないか。」


「それに【ウィクルーア】がどれぐらい離れているか知りませんし。【転移の門(ポータルゲート)】がどこまでの距離を対応しているかまでは確認していないのでその点でも確実ではないですね。」


「そうなると船旅になるだろうな。

 船か~。俺もそこまで詳しくはないからな。俺自身大陸を渡ったことはないし、渡ろうと思ったこともないから調べたこともないな。」


「バロンさんでも持ってる情報は少ないんですね。」


「まぁな。ただ伝手ぐらいはあるからいくらでも情報は集めてやるけどよ。」


「ありがとうございます。」


「一番は冒険者として大陸を渡る方法ってことだな?それについて調べてやればいいんだろ?」


「そうですね、後その場合は俺達もSランクの冒険者になった方がいいんでしょうか?」


「どうしてだ?」


「確か冒険者はランクが上がれば上がるほど入れる地域なんかが変わると聞いたことがあるんですが。」


「あぁ、そういう事はあることにはあるが。他の大陸には当てはまらないな。

 【ウィクルーア】には冒険者ギルドはないからな。勿論【クリプス】もだがな。

 ただまぁSランクになっていても損はないかもな。

 大陸を渡ってまで冒険しようとする奴なんてAランク以上だからな。

 乗せてもらう船を探すとしてもA、もしくはSランクの冒険者だという方が乗せてもらい易くなるだろう。」


「ですよね。

 俺もそう考えて冒険者のランクを上げておいた方がいいかなって思ったんですよね。

 後は高ランクの冒険者として活動した方がいいかなって。」


「どういうことだ?」


「えっと、オモイカネにも勇者であることは隠して動いた方がいいと言われたんですよね。

 俺もその方がいいかと思ってます。

 で、姿形を変えてSランク冒険者として活動していけば逆にバレにくくなるかと思って。

 強いスキルを使ったりしてもSランクの冒険者だからと思われたりした方がまだ勇者ってことを隠せるかなって。

 Sランクの強い冒険者パーティとして活動して、そのパーティが【ウィクルーア】へ行くとしてもおかしくはない。そう周りに思わせた方が勇者とは気付かれないとは思いませんか?」


「なるほどな。

 という事はまずはSランクの冒険者になるってことだな?」


「そうですね、それを目指しつつ【ウィクルーア】へ行く為の準備と情報収集をと思ってます。

 【ウィクルーア】の情報は殆どないですし。

 後は自分で船を作るってのも考えたんですけどね。」


「船を作るだと?」


「えぇ、多分俺とブランのスキルがあれば可能かなって思ってます。

 魔石で動く船とか。

 ただそうなった場合でも船乗りと言いうか船員は必要でしょうしね。俺達には海渡の知識はありませんし。その場合もSランクの冒険者が作った船で船員募集とした方が人は集まりやすいでしょう。

 考えてみたら俺も商会を持ってるんでそこで作った船として商売目的で【ウィクルーア】へ渡るという手もありますね。

 いっそのことそうして向こうに支店の様なものを作ってしまってもいいかな。

 船も一回使って終わりみたいだと勿体ないし。

 ただそうなるとこっちの港町にも支店を作らないといけないのか。」


「まぁそこら辺は自分の所の商会の奴と相談してみたらいいんじゃないのか?」


「あぁ、すいません。そうですね。」


「話をまとめるとお前達は【ウィクルーア】のエルフの里を目指す。

 その為にまずSランクの冒険者になり、【ウィクルーア】へ渡る船を探すか作るってことでいいのか?」


「えぇ、当面その予定ですね。

 そう言えばシータ。」



 俺はそこでシータに顔を向けて話しかける。



「答えにくいかもしれないけど、シータはエルフの里の場所は知ってるのか?」


「はい、主(あるじ)。場所は母様に聞いています。向こうに着けばご案内できると思います。」


「そうか、じゃあ案内を頼むことになると思うけど大丈夫か?」


「はい。今の私にエルフの里への憎しみなどの感情はありません。里から出たことによって今この場所、皆さんと一緒にいることが出来ているのですから。」


「そうだな。」


「ただ・・・。」


「ただ?」


「私がいることによって里に歓迎されない場合は私の事は気にせず主(あるじ)達だけで交渉して下さい。私は離れておきますのでいないものと思ってお話し下さい。」


「いや、そんなつもりは一切ない。シータを認めようとしない様な奴らだったら協力関係なんて必要ない。俺達だけで戦う。

 そんな器量の狭いような奴らを俺は信用しないし、シータの方がよっぽど大事だ。

 俺達はあくまで肩を並べて戦えるような関係を求める。そこにはシータもいてからこその話だ。だからそこについて俺は一切譲る気はない。」


「あぁ、ダイゴの言った通りだ。お前を認めない様な奴なんて必要ない。そんな奴らと一緒に戦おうって気にもならない。」


「主(あるじ)、それにガイも・・・。」



 俺とガイの言葉を聞いてシータが目に涙浮かべる。

 多分俺と言うよりガイの言葉になんだろうけどね。シータの目はガイしか見てない。

 ガイはシータにじっと見つめられて顔を赤くして視線を逸らした。

 ぐっと抱きしめるとかしてあげたらいいのに。シャイなガイには無理な事だろうけど。



「まぁ当面の予定も決まったみたいだからギルドマスターとしてお前達にSランク冒険者への道を説明してやろうか。」



 俺達のやり取りを笑顔で聞いていたバロンさんがそう言った。

お読み頂きありがとうございます。


更新が一週間飛びました。

申し訳ないです。

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