Sランク
「知っての通り俺はSランクの冒険者だ。それにギルドマスターなんだから当然Sランクになる為にどうすればいいかは知っている。
お前も少しは知っているみたいだな?」
バロンさんが俺を見てそう言った。
「そうですね。Sランクになる為には冒険者ギルドの本部?がある【自由国家 ルージア】に言って手続きしないといけないんですよね?以前に別のギルドのギルドマスターの方に聞いたことがあります。」
「あぁ、そうだ。
Aランクであれば首都リグファーレで済むがSランクになるとルージアまで行かないといけない。」
「BからAを飛ばしてSランクになれるんですか?」
「さぁな。前例がないからな。恐らくは問題ないと思うが。
俺の方からもギルドへ連絡は入れるつもりだ。」
「という事は俺達はルージアまで行けばいいんですね?」
「そうだな。先に連絡は入れてみて伺いは立ててみる。」
「確か俺達は迷宮を100階層攻略したからSランクになれるんですよね?」
「あぁ、俺も迷宮の62階層を攻略したお陰でSランクの冒険者として認められた。
それもあるから今回も認められるだろう。
ただ力を示すようには言われるかもしれないが。」
「力を示すですか?」
「そうだ。何かしら依頼を受けさせられることになるだろう。魔獣の討伐とかそんな物だろう。」
「まぁそれは問題ないと思います。今更な話ですね。」
「だろうな。今のお前達にとってはSランクの魔獣であっても簡単に討伐するだろう。」
「そうですね。ってガイもシータもまだまだ伸びしろがあったんだね。
迷宮を攻略した時点で強くなるのも頭打ちかと思ってたよ。」
「ん?そうか?」
そこで俺はガイに話を振った。
「ほとんどのスキルレベルが10だったし。それ以上どう成長するのかと思ったけど。
そう言えば具体的にどう成長したの?」
「具体的・・・、そうだな。気の使い方より根源的な力の使い方を覚えたってことだろうか?」
「えっ?どういうこと?」
「仕方がない、詳しく説明してやろう。
気って言うのはHPを消費して体や武器を強化する技術だと思っているだろう?」
「そうだね。俺はそう言う認識だったかな。」
「鬼の里に着いて、鬼達を戦った。その時に俺の気を纏った剣は通用しなかった。」
「そうなの!?」
「あぁ、向こうの纏う気と言うかオーラと言うか、そう言ったものが全く異なっていた。」
「じゃあどうしたの?」
「そもそも俺は相手を殺す気はなかった、それに剣気と呼べるものが通じなくても俺には技がある。お前に教えて貰ったものもいくつもあったがそれ以外の技もあり、向こうにとっては未知の技だった訳だ。
だから勝負が出来たんだ。
話を戻すが俺はその剣気の使い方を、鬼達は俺の技をそれぞれ教え合うという事になったんだ。」
「そうだったんだ。」
「あぁ、そして俺は鬼達が『鬼刃』と呼んでいる技を教えて貰った。
気と言うHPを消費して戦うというよりも、説明は難しいんだが当人が持っている根源的なものを使う技術なんだが。説明は難しい。これと言う言葉が思い付かない。」
「ガイって感覚派っぽいもんね。感覚で憶えて使えるようになったってことか。」
「そうだな。俺はそれを俺なりの解釈をして、【魂気】と名付けた。」
「名付けたって鬼の一族が使っていたのと違う剣気なの?」
「そうらしい。鬼達も俺の剣を見て驚いていた。教えてくれと頼まれたが、俺自身も言葉では説明できなかったんで断ったんだがな。」
「へぇ、そうなんだ。」
俺はそう感心して何気なく【鑑定眼】でガイのステータスを確認して驚いた。
所持スキルの欄に【魂気】と言う項目があった。
俺は【八百万のスキル】を持っていてこの世界全てのスキルを確認できる。しかしその中には【魂気】と言うスキルはない。
えっ!?どういうこと?
そこで思いつく。
もしかして新しいスキルをガイが作ったってことか?
俺の【八百万のスキル】はバージョンが上がってスキルを束ねて新しいスキルを作ることが出来るようになった。そして今までにこの世界になかったスキルを幾つも作り出した。ガイ達も奴隷契約で俺の持ってるスキルの力が流れているはずだ。
もしかしてその為にガイ達も俺と同じ様に新しいスキルを作れるようになったってことじゃないんだろうか。
それが考え得る案の中で一番妥当な気がする。
「なぁ、ガイ。【鑑定眼】で確認したんだけど、ガイのスキルの中に【魂気】っていう新しいスキルがあるんだ。
この世界にはなかったスキルんだけどね。俺の考えではガイが新しいスキルを作ったっぽいんだけど・・・。」
「なんだと!?」
俺の言葉にガイよりも驚き声を上げたのはバロンさんだった。
「どういうことだ?」
「えっと、バロンさんも神レスティアと会った時に俺の持ってるスキルの【八百万のスキル】って言うスキルを強化してもらったの憶えてます?」
「あぁ、えっと組み合わせたスキルを新しいスキルとして使える様になるってことだったか?」
「そうですね。奴隷契約お陰って言うか、その為強化された【八百万のスキル】の力も皆に流れているんでしょう。だから持ってるスキルや新たに得たスキルを自分流に改造と言うか束ねたというか、この世界にはなかったスキルを生み出せるようになったんだと思います。
ただこれは俺の予想なだけで全く違うかもしれませんがね。」
「いや、恐らくそうだろう。俺も今までに新しいスキルを得たってことを聞いたことはない。
まぁこの世界お前みたいにポンポン新しいスキル憶えたり、使えたりする奴なんていなかったからかもしれないがな。」
「そうですね。もしかすれば他の人でも起こりうる現象かもしれませんね。」
それにしても俺以外に新しいスキルを作り出せるとは思ってみなかった。
でもレスティアが新しく授けてくれた力でスキルを作れるようになったけど、元々誰もがスキルを作れるんだったらわざわざ俺にそんな力を授ける必要はなかっただろう。
うん、やっぱり新しい【八百万のスキル】バージョン2のおかげの様な気がする。
もう一度【鑑定眼】でガイの【魂気】と言うスキルの確認する。
【魂気】:魂の脈動を力に変える。
確認してみたがやっぱり詳細はわからないか。
もうちょっと詳しく分かれば他の人でも使える様になったりするのかもしれないけど。
と言うかなったりするのか?
このスキルもガイだからこそ使えるようになったって感じだよな。
う~ん、固有スキルってところだろうか。
その個人が生まれ持った能力とか、生きてきた中で得た能力で他にはない力っぽいけど。
モンスターとかには種族別に持ってるスキルや、単一個体が持ってるスキルもあるみたいだ。人族だからそう言ったスキルが存在しないってことはないだろう。元々そこまで突き詰めて強くなるってこともなかっただろうし。普通のスキルレベルを10にするのも大変だった世界だしな。恐らくそのかなり先の話だろう。
俺自身神レスティアに力を貰ってやっと作れるようになったんだから。
「ってあんまり驚いたりしてないね?」
俺とバロンさんと対照的にガイはいたって冷静みたいだ。
「今更の話だな。お前と一緒にいてスキルを覚えて、急激にレベルが上がり。必殺技なんてものを使えるようになったんだ。今更新しいスキルを作れたと言ったところで驚く程の事でもないだろう。
お前だって作れるんだからな。」
「まぁそう言えばそうなんだけど。
しかし俺の【八百万のスキル】のお陰だとすると他の皆も新しいスキル、固有スキルみたいなものを覚える可能性があるのか。」
「固有スキルですか?」
アリアが聞いてくる。
「そう。その個人が自分だけ持ってるスキルって説明したらわかるか。
モンスターとかにはいるみたいだしね。
人族でも持ったとしてもおかしくはないんじゃないかな。
普通は何かのスキルを覚えるのって大変だし、それを鍛えるのも大変だろう。
色んなスキルを極めるってことはなかなか出来ないけどその先ってことじゃないかな。
色んなスキルを使える様になって極めた結果新しいスキルになったって感じ。
で、その極めた結果だからその人にしか使えないってことだと思う。
俺の【八百万のスキル】の中にはガイの【魂気】ってスキルがないから、俺は使うこと出来ない。
元々使えないってスキルはあるんだけど、それ以上に使おうとすらできないみたいだから。
ガイがその頂きに到達したからこそ使えるスキルなんだと思う。
だから固有で持つスキルってこと。」
「そんなことが・・・。」
アリアが俺の言葉に驚愕する。
「これも俺の勝手な想像なんだけどね。おおよそ間違いではないとは思う。
あれ?じゃあもしかして。」
そう思って俺はシータを【鑑定眼】で確認する。
さっきは名前ぐらいしか確認していなかったが、もしかすればガイと一緒に修行していたシータの方も何かしらのスキルを覚えたりしていないのか?と思ったんだ。
するとシータのスキルの欄に俺の知らないスキルの項目があった。
「え~っと、シータの方にも俺の知らないスキルがあったりするんだけど・・・。」
「なんだって!?」
驚くバロンさん。
「はい、しかもいくつか・・・。」
「複数かよ!?」
もっと驚くバロンさん。
いや、俺も十分驚いたんだが。
何をどうしたらこんなにスキルを新しく覚えたりするんだろうか。
「シータも鬼の里でガイと一緒に修行したんだよね?」
「えぇ。ただ私の場合は鬼族の方ではなく天狗の一族の方と一緒に修行しました。」
「天狗?その一族が鬼の里にいたの?」
「はい。天狗の一族は数が少なく鬼の里に身を寄せているとの事でした。」
「それで鬼ではなく天狗と一緒に修行したってこと?」
「そうです。私のスキルであったり戦い方が天狗族は大いに興味を沸いたという事でした。私自身も鬼族の剣や気を主体とした戦い方よりも、天狗一族の風を使っての戦い方や気配を消して敵を討つ。もしくは搦め手での戦闘スタイルの方があっている気がしましたので、お互いに学ぶことが多いと思い一緒に修行しました。」
「なるほど。天狗ってそう言う戦闘スタイルなんだ。
だからそれに準じたスキルを覚えたんだ。」
俺は少し納得してそういった。
シータが覚えたスキルは【空蝉】【影縫い】【神風】と言ったスキルだった。
【空蝉】はあれみたいだ【鑑定眼】で詳しく確認してみたが忍者とかが使う攻撃を受ける瞬間に別の物と入れ替わって回避するって奴で間違いないようだ。攻撃を受ける瞬間に魔素で自分の身代わりを作って【追跡者】か、もしくは【影移動】か何かで移動するんだろう。
【影縫い】は相手の影に武器を打ち込んで動きを止めるみたいな感じらしい。これも何かのスキルを【闇魔法】と合わせたんだろうか。
【神風】も【風魔法】と何かを合わせたスキルなんだろうけど、詳細を見たぐらいだとよくわからないな。
それにしてもこういったスキルを覚えるってことはシータの戦闘スタイルはアサシンスタイルと言うより忍者スタイルにシフトチェンジしたっぽいな。
まぁ日本での暗殺者って言うと忍者のイメージがあるからあながち変わってないのかもしれないが。
「まさかそんなことになってたとは思わなかった。」
バロンさんがそう言った。一応ガイ達から修行をして前より強くなっていたことは聞いていたんだろうがそこまでの詳しい話は聞いてなかったみたいだな。
「そうですね。俺も新しいスキルを覚えたり、なんと言うか自分の戦闘スタイルを確立するとまでは思ってなかったです。
2人は完全に自身の戦い方って言うのが決まったんでしょうね。そしてそれが一番自分自身に合っていたから固有のスキルとして自分の物にすることが出来たんでしょう。」
「だとすると俺も自分の戦い方ってのを決めて修行すればオリジナルのスキルを使える様になるのかもしれないな。」
「そうですね。バロンさんにもその可能性がありますね。」
「自分の戦い方でしょうか・・・、難しい問題ですわね。」
「そうだね。アリアは戦闘メインでやってる訳じゃないから。でもある意味自分自身に相応しいことを修行なりすれば新しいスキルを覚えたりするかもしれないけどね。何もスキルって戦闘に使うスキルばっかりじゃないから。」
「相応しい・・・、それも難しいですわね。何が自分らしいことなのか、まずはそれから考えて行きませんと。」
確かに。アリアの言う事もわかる。
俺自身は【八百万のスキル】のお陰で考え付くスキルなんかは簡単に作ることが出来る。
ただ俺自身に相応しいスキル、と考えると一体何だろうってことになる。
何が得意かと言われても、戦闘にしろ回復にしろそれなりの高水準で出来るだけって感じだし。
自分の戦闘スタイルはこれですって言うのがないしな~。
その場その場で最善になるようなスキルを使い分けているって感じだから、1つの事を極めてますってなことでもない。
こればっかりは人がどうこう言える話でもないし、バロンさんやアリア自身で考えるしかないんだろう。
それにしてもこれだったら新しく考え付いた契約は試さなくてもいいか。またその時が来たら切り替えることにしよう。
「そういえばまた話が大きく脱線してしまいましたね。
Sランクになる為にすることの話でしたよね。」
「あぁ、そう言えばそうだったな。あまりにも驚く話を聞いたからすっかり忘れてた。」
そう言ってバロンさんは座り直す。
「俺達がSランクになる時にもAランクの魔獣の討伐をした。
最近は魔獣が増えて来ているみたいだからお前達にもそう言う話が出ると思うぞ。
お前らにとっては余裕なことだろうがな。」
「そうですね。今更Aランクの魔獣であっても敵じゃないでしょうね。」
「とりあえず本部に行って申請して、魔獣の討伐でもしてめでたくSランクってところか。」
「なんだか申請しに行く方が大変な気がします。」
「そうかもしれん。ただお前達と言うかお前にとっては本部までの距離なんてあっという間だろう。
とっとと行ってきたらどうだ?」
「そうですね。何をするにも先にSランクの冒険者だって箔をつけてからの方がいいような気がするので明日にでも向かう事にします。ってそれで大丈夫なんでしょうか?」
「連絡は入れておくから問題ないだろう。俺の書いた書状も合わせて持って行けば問題ないんじゃないか。」
「そうですか。ありがとうございます。」
「明日までに用意しておいてやるよ。今日は久々の再会なんだからどっかの宿ででもゆっくりしてきたらいい。」
「はい、じゃあまた明日お願いしますね。」
そう言って俺達はクレタのギルドマスターの部屋を後にした。
しかし問題があるな。
「えっと、どっかに宿取ってと思ったけど、ガイとシータは宿を取ってるんだよね?」
「あぁ。」
ガイが答える。
「えっとそのままの方がいい?取り直すの面倒だろ?俺達3人が別の部屋をそれぞれ取った方がいいかもね。」
「いや、折角なんだからお前の話も聞いてみたいしな。」
「いいの?ってそう言えばなんだけどガイとシータは同じ部屋取ってたりするんじゃ・・・。」
「そんな訳ないだろう!」
ガイが慌てて言う。
その瞬間に俺とアリアはアイコンタクトを交わした。
「そっか、じゃあまたいつも通り男性陣と女性陣でそれぞれ部屋を取ろうか。」
俺とアリアの心は通じているはず。
お互いそれぞれガイとシータに今の状況について聞くはずだ。
うん、後でアリアと聞いたことを擦り合わせよう。
しかしどう話を持って行くか考えないといけないな。良し頑張って考えようっと。
お読み頂きありがとうございます。




