WHO
「なんだろう?こんな決まりあったっけ?」
俺の口を突いて出たのは愚痴だった。
今俺達、俺とブランとアリアの3人だけど薄暗い部屋の中にいた。
キュクロさんとの挨拶も終え、ゾランさんにも挨拶を済ませてから俺達はクレタの町へ移動することにした。
その時に面倒だからと【転移の門】を使って移動することにしたんだ。
バロンさんにも出口の起点となる魔法具は渡している。だから一瞬で移動できると思いスキルを使った。
そして移動してきた先がこの薄暗い部屋の中だという事だ。恐らくどこかの倉庫なんだろう。
まぁあまり人が出入りしない部屋に置いておくとなると倉庫とかになるよな。
自室とかに置いておくことはないだろうし、ギルドマスターの部屋でも来客中とかに急に俺達が現れれば大事になるのは予想が付く。
気持ちを切り替えていこう。
俺は俺を含めた3人に【天狗の隠れ蓑】をかけた。
ここはクレタのギルドの倉庫みたいだ。流石に関係者でもない俺達がここから出てくるのを人に見られるとややこしいことになりそうだ。
【気配察知】でドアの近くに誰もいないことを確認した上で扉を開け倉庫から出る。
どこへどう進んで行けばはスキルを使えば簡単に分かるので迷うことなく進んで行く。
途中でギルド職員とすれ違う事があったが向こうは俺達に気付く様子はなかった。こうすれ違う可能性もあったから先に【天狗の隠れ蓑】を使っておいて良かった。
人が近くにいないことを確認して扉を開けて進んで行く。着いた先が倉庫だったせいで結構な距離を移動することになった。バロンさんも人目に付きにくい所を選んでくれたんだろう。
しばらく進みやっといつもの迷宮へ潜る為の受付のあるロビーまでこれた。
さてどうしようか、ここで魔法を解くといきなり俺達が現れたことになり周りを驚かせることになる。
人目の付かないところまで行って魔法を解除してから改めてという事でもいいんだけど面倒だな。
うん、ちょっとばかり場所を借りよう。
そう思って俺は迷わず2階への階段へ向かい上がっていく。そして何度も訪れた部屋の扉をノックした。
「入れよ。」
中からはそう返事が返ってきた。
遠慮なく俺達は部屋の中に入り、扉を閉めてから【天狗の隠れ蓑】を解除した。
「お久し振りです、バロンさん。」
俺はそう部屋の主に挨拶した。
「おうっ、久し振りだな。」
そう言ってバロンさんは男前の笑みを浮かべいた。
「とりあえず座れよ。」
バロンさんは俺達にそう勧め、自身もソファの前のイスに移動した。
「ありがとうございます。」
俺は前を歩きソファまで移動して腰を下ろす。ブランとアリアもそれに続き着席する。
「やっぱり気付きました?」
俺はバロンさんに質問する。
バロンさんには来ることは事前に連絡なんてしていない。こちらに着いてからも【念話】での会話はしていない。
「当たり前だろ。お前達の気配なんて近くに来たらすぐにわかるに決まってるだろ。」
バロンさんは笑って答えた。
バロンさんも高レベルの【気配察知】を持っている。この町位カバーできるほどの範囲で気配を察知することが出来るだろう。
俺達がこの町に着く時には別に気配を消したりしていない。
俺自身もついた瞬間にガイ達がどこにいるかわかる様にと思って【気配察知】と言うか【索敵】を使った。しかし【索敵】には反応がなかった。
恐らくだが迷宮に潜ってるんだろう。あそこは階層が変わると【索敵】では確認できないからな。
でもバロンさんはこの部屋に1人でいることが分かったからまずはと思ってここまで来てみたんだ。
「だと思って俺も何も言わずにここまで来てみたんですけどね。」
「そうか、それで俺は何から聞いたらいいんだ?」
「何から説明しましょうかね?でも説明するならガイとシータと合流してからでもいいですか?何度も同じ説明をすることになりそうなので。
2人は迷宮ですか?」
「そうだ。今頃90階層位をウロウロしてるんじゃないか。」
「そんな下を?2人だけで?2人はそこまで力を付けたってことですか?」
「あぁ、口惜しいがな。あいつらは確実に前より数段力をつけている。やっぱり俺もついて行けばよかったな。」
「そこまでですか。あの時よりも・・・。でも迎えに行く訳にもいかないし、2人が戻ってくるまで待っておかないといけないのか。」
「まぁすぐに戻るだろう。あいつらも一日数時間しか迷宮には入らないからな。お前みたいな【倉庫持ち】持ちがいないから腹が減るんだとよ。」
「あれ?【倉庫持ち】ではなく魔法の袋を渡してたと思うんですけど。」
「あぁ、と言うか詰める方の問題か。中に詰める食い物の問題だろう。毎回毎回用意するのも大変だろうしな。」
「そう言えば大食漢が一緒でしたね。」
シータの食べる量を考えると迷宮に潜る度に迷宮でも食べやすそうな食べ物を大量に用意しないといけない。だったら戻ってきて店で食べた方が美味しいものが沢山食べれるだろう。
「そう言えばあの2人の事聞いているか?どんな感じだとか?」
「えっ?いえ、ブランからは特には。何かあったんですか?」
「ん~、何かあったかと言うと何かあったかもしれん。まぁだったら直接会って確かめれば良い。」
「どういう事なんですか?」
「いや、特に大した問題じゃないのかもしれない。」
若干バロンさんがニヤついてる。何かあったのか?しかし悪いことではない感じだな。
ブランの方を見ると不思議そうな顔をしていた。何の話だと言った感じだ。
それを見てますます混乱する。ブランは2人に会ってるはずだけど何か変ったことがあったという話はしていない。だけどバロンさんの物言いだと何かあった様なんだけど。何があったって言うんだろう。
非常に気になる所だがこういう場合はどう聞いても教えて貰えないだろうな。
仕方がない、早く戻って来てくれないかな。
そんなことを考えていたら俺の祈りが天に届いたのかロビーの方から2人の気配がした。
「戻ってきたみたいだ。」
俺はそう言って立ち上がって扉の方へ向かう。気になってしょうがないんだ。
廊下を歩き階段を一気に駆け降りる。
ギルドの職員が俺の姿を見て驚く。そうだった、俺達は勝手にバロンさんに会ってたんだった。まぁいいかバロンさんが後で説明しておいてくれるだろう。
それよりも気になってることを解消する方が先だ。
「ガイ!」
俺はロビーにいるガイの姿を見付け声を掛ける。
そしてガイの傍に駆け寄る。
「ダイゴじゃないか?お前も戻ってきたんだな。」
ガイは駆け寄った俺にそう言った。
半年振りにガイに会ったがガイもそこまで変わった所は見受けられなかった。
ただブランと同様俺が見たことない鎧を身に纏っていた。
ブランがガイの為に作ったであろう鎧は黒と基調として、赤い装飾などが施されていた。
その色合いがガイにはよく似合っていた。
この鎧も色々な能力を持っているんだろう。
「昨日ね。とりあえずキュクロさんなんかに挨拶してからこっちに来たんだよ。」
「主お久し振りです。」
ガイとそんな話をしていたらガイの横にいる女性から声を掛けられた。
はて?誰だろう。
声を掛けてきたのは10代後半と思われるスラリとした美人。
金色の髪で後ろで1つに束ねていた。
身長も俺と同じぐらいある。どこかのモデルの様な風貌だ。
こんな知り合いたっけ?しかも俺の事主って・・・。
「ダイゴ様。」
そんなことを考えていたらアリアとブラン達も俺達の近くへ来ていて声を掛けてきた。
「あぁ、姉様もお久し振りです。お変わりないようですね。」
「えっ!?」
美人さんから声を掛けられたアリアが驚き不審がる。
もしかしてと思い【鑑定眼】を使ってみたが・・・。
何があった?
アリアが俺の腕をグイッと引き、皆の輪から離れる。
「ダイゴ様、もしかあの方は・・・。」
アリアが声を潜めて俺に聞いてきた。
アリアはすぐに分かったみたいだな。
「あぁ、俺もスキルで確認したがシータで間違いないようだ。」
俺も小声でアリアに答えた。
そう、ガイの横にいたのは間違いなくシータだった。
って半年でいったい何があった?
俺達と一緒にいた時には少女としか思えない風貌だった。それが今は大人一歩手前の女性にしか見えない。アリアとシータが逆の年齢だと言われた方がしっくりくる。
バロンさんがさっき含みを持たせていったのはこのことだったのか。
「いったい何があったのでしょう?」
アリアが俺に聞いてくる。
「いや、それは俺にはわからないな。」
最初パッと見た時にはシータとは気付かなかったがよく見たら装備品はそのままだった。
シータの服を作った時、と言うか皆の服もそうなんだが【修繕】と言う魔法を組み込んである。その魔法は破れた箇所を魔素を使って補修する以外にも体のサイズが変わった時にも対応できるようにしている。
シータが来ている服もきっちり今の体形に合うように服が自動的に合わせているんだろう。ただ本人のMPを使って補正している為なのか少し形が変わっている。本人の意向が入るのかもしれない。
まぁ前の形を知っていれば少し変わったかなと言ったぐらいだが。
アリアは姉様と呼ばれたことと服を見てシータだと分かったんだろう。
しかし一体何があったのか?
そう言えばブランはこのことついて不思議がってなかったんだっけ?
その事に気付いたのでブランを手招きして俺達の方へ呼んだ。
「いかがされました?主。」
「いや、ちょっとね。えっと、ブランがガイとシータに再会した時って今みたいな感じだった?
なんと言うか姿形と言うか。」
「え?えぇ、そうでした。」
「何か違和感とか感じなかったのかな?特にシータとか。どう考えても俺達と別れた時と違っている気がするんだけど。」
「あぁ、その事でしたか。
そうですのう、少し背丈が伸びたようです。」
「う~ん、その程度なのか・・・。驚いたりしなかったの?」
「なるほど。主がおっしゃりたいことがわかりましたわい。
わしらドワーフやエルフは人族と成長の仕方が違っております。
わしらもドワーフもある一定の年齢になると大人の姿になりそれから緩やかに年を経ていくようになるのです。
エルフも同じと聞きますし、シータはハーフエルフ。そのような事があってもおかしくないと思っておりましたわい。」
「あっ、そうだったんだ。じゃあドワーフとかエルフなんかの種族なら珍しいことじゃないんだね。
あまりにも姿が変わっていてびっくりしたから。」
「左様でしたか。特に問題はないと思いますぞ。」
「なら良かったんだけど。でもブランは良く一目でシータだってわかったね?結構姿変わっていたと思うんだけど。」
「えぇ、わしも【鑑定眼】をもっておりますし。一目でシータだと分かりました。」
そう言えばそうだった。ブランも【鑑定眼】を持ってるんだった。
「ってことだそうだよ、アリア。」
「そうですわね。ただ半年であの姿まで成長するものなのでしょうか?」
「ん~、結構食べるからとか?栄養は行き届いてそうだし。とりあえずそう言う事なんだと認識してよう。」
「わかりました。」
そう締めくくって俺達はガイ達の元に戻った。
「ごめんごめん、ちょっとね。それにしても2人共元気そうでよかった。」
「えぇ、恙無く過ごしておりました。」
なんかシータの話し方も変わってるんだけど。前は結構単語単語でたどたどしく話していたはず。
「えっと、何かシータの雰囲気が変わったね。」
「そうでしょうか?カーサ母様に色々と教えて頂きました。言葉遣いや、女性としての嗜みなど。」
「そ、そうなんだ。いや~、まぁいいと思うよ。」
「えぇ、ガイの傍にいるには必要な事だと。」
シータはそう言ってガイの腕を取り身を寄せた。
「おいっ。」
ガイは顔を赤くしてシータにそう言った。しかし自分の腕に絡まるシータを邪険にはしなかった。
俺とアリアはアイコンタクトをしてまた皆の下から一気に離れる。
「ちょっとアリアさん見ました?今の。」
「えぇ、これは正にと言った感じですわね。」
「俺達と離れている間に絶対に何かあったよね?」
「えぇ、間違いありませんわ。」
「でもどうする?直接聞く訳にもいかないし。」
「まぁお前らの想像通りだと思うぞ。」
そう言ったのはいつの間にか俺達の傍に来ていたバロンさんだった。
「カーサから旅の間の事は聞いてる。俺も気になったからな、あのお嬢さんに何があったか。
それで詳しく聞いてみた。
カーサもシータがガイに気があるのが分かったみたいだ、それで色々と言葉遣いなんかを教えたみたいだ。相応しい女性になる様にと。シータもガイの為にだったらと頑張って学んだらしい。」
「恋する乙女の努力という事ですわね。」
「あぁ、で俺も調べてみたがエルフの成長には精神的な成長が大きく関わるらしい。
精神的に成長すると肉体もそれに伴った成長をするんだと。」
「なるほど。精神的に成長したから半年であの姿まで体も成長したってことですね。
ガイに相応しい見た目に成長したってところですかね。
恋する乙女の一念ってことか。」
「ダイゴ様よろしいんですか?」
「えっ?いや、よろしいも何も。あの2人がいいならそれでいいんじゃないの?」
「いえ、でも・・・。そうですわね。」
アリアも俺の顔を見てそれ以上言うのを止めた。
うん、ガイとシータがお互い想い合ってるのならそれでいいんじゃないかね。
そこで俺が何か言うのは違うってもんだ。
それぐらいは俺にでもわかる。
シータもガイと並んで立てる様にと思い努力したんだ。そんな気持ちを否定する訳ない。
俺の方が先に目を付けていたのにとか、そんなことは思わない。
何となくだけどこうなるんじゃないかってことは予想がついていた。シータがガイについて行くと言った時にね。まさかと言う気持ちもあったけど、やっぱりなと言う気持ちの方が強い。
俺だってそんなに鈍感ではない。恋する乙女は見たらわかるんだぞ。
それにしてもシータとガイか。
チラリと並ぶ2人を見るがお似合いだよな。2人共男前と美人なんだもん。
それに素直に嬉しい気持ちはある。
2人共大事な仲間だ。その2人がお互いを好きになるんだったらいいことだと思う。
そうなったからって2人が大事な人から外れるとかそんなことはない。
でもちょっとだけ寂しい気持ちはあることにはある。
それも俺の本心だ。自分に嘘を付いても仕方がない。オモイカネの試練でもよく分かったし。
俺が2人の事を大事に思う事が重要であって、2人が愛し合うようになったからと言って俺の事を大事に思ってくれる気持ちに変わりはないと思う、多分。シータとガイが愛し合う関係になったからと言って仲間をどうでもいいと思う事はないだろう。
だから俺にとっても喜ぶべきことでしかないんだ。悲しく思う事なんてない。
うん、そうだ。そうだ。2人を祝福しよう。
「2人を祝福しに行こうか?」
「えぇ、そうですわね。」
俺の台詞にアリアも微笑みそう返した。
お読み頂きありがとうございます。
こんな感じになりました。
ガイまで・・・。




