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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【魔法大国 スラグスル】編
184/237

祭りの後

 結局後の事は想像通りだった。

 魔法対戦トーナメントの後の事だがな。

 トーナメントはあの後中止になった。

 元々あのトーナメントは学園側的には学生がどれだけの力を持っているかを見る場だったし、見に来ていた観客のお偉さん方も一応は出場者全員の生徒を見ることが出来ている。後は学園との交渉だったりするんだろう。となるとこれ以上行う理由はない。

 観客もあんなことがあった後でのんきに観戦しようなんて気にならないだろう。続行する別にあそこまで大々的なトーナメントである必要もないしな。

 そうして魔法対戦トーナメントは終了した。優勝したところで何か貰えると言った訳でもないし。栄誉というか名誉というか、貰えるとすればそれぐらいの話だ。


 ディーンの死体は何も残らなかった。

 緑色の液体になってその姿は消えた。一応その残った液体を調べようとしていたみたいだけど、それで何が分かるのか。

 魔人という人ではない存在になったことについて知ってる人間も俺以外はいなかっただろう。いくら残ったものを調べても大した情報を得られるとは思わない。結局鑑定とかしても大した情報も得られないだろう。この世界には科学的な分析をしたりという事はない。スキルの力を使って調べたりするはずだ。【鑑定眼(アナライズ・アイ)】で見た俺が大した情報も得ていないのに、他の人間がそれ以上の事が分かるとは思えない。

 ただその魔人という存在を知っている人間がいるのであれば話は別だろうがな。

 しかし俺はそんな事を口に出来ない。俺が周りに魔人の事を何か知らないかという話をすれば、もし知ってる人間からすればなぜこんな子供がそんなワードを知っているのかという事にもなりかねない。

 だからディーンが魔人という存在になったことはアリア以外には話していない。

 アリアに聞いたがそう言う存在がいるとは知らなかった。

 アリアから周りに聞いて貰うと言う手も考えたが、アリアも何故そんなことを知ったのかという問題が出てきそうなので止めておいた。

 そもそもの話だが魔人という存在を今どういう存在か知った所で現状が何か変わるとは思えない。

 知ろうとすること自体が自己満足の為じゃないのかとも思った。

 もし今後も出会う事になるんだったらその時に知ればいいだろう、そう割り切った。

 

 ディーンの事は緘口令(かんこうれい)が敷かれた。

 当然と言えば当然の話だろう。

 元々学園で教師をしていた者が不祥事で学園を去った。しかしその後人とは思えない存在になって学園に現れ、生徒に手を出した。そんな話が広まれば学園の沽券(こけん)に関わる。

 観客としていた生徒の中にも何人かディーンであることは気付いていた様だ。ただその生徒にはディーンの姿をした別の何かであると説明した。というかそう言う事にしろと話したんだろう。

 客席からは離れた位置になるし、雰囲気なんかも全くの別人だった。そう強く言われたらそうかもしれなと思う事にしたのかもしれながな。

 お偉いさん方はディーンと言う人物の事は知らない、だから不審者という事で終わらせたみたいだ。


 しかしながら当然俺達にも同じ話が来た。

 特に目の前で対峙したんだ、俺とアーサーとベックは学園長室に呼ばれ直々に学園長から話をされた。

 話の内容にアーサーとベックはあまり納得していないようだったが、俺あっさりと納得した様子をみて渋々だが了承した。

 結局のところそうするのが一番いいんだ。今ここで真実を白日の下にさらしたところで、誰かが得するという事もない。新しい謎が生まれるだけだ。誰が、どうして、何故と。解決することはないだろうしな。

 

 それよりも俺には気になることがあった。

 研究生になれるのかという事だ。

 その目的で学園に来ているのに、そこがクリアできなければ何の意味もない。

 こういう時にと思うがこの学園にずっといる訳にもいかない。俺が前に進まない為に何かが起きる可能性があるんだから。

 今回の事は利用できるのであれば利用させてもらうつもりだ。

 研究生になれないのであればこの件を他に漏らすと。

 だがそんな必要はなかった。あっさりと研究生になれるという言葉を貰った。


 正直その言葉を受けて、嬉しいと言う感情は出てこなかった。

 なんなんだろうな。

 何とも釈然としないこの感情。

 一応は思った通りにはことが進んで行っている。ある意味順調なのは順調なんだろう。

 魔法対戦トーナメントで活躍して研究生に選ばれ、図書館へ入る。

 今そこまでこれた。

 結果としては思った通りの結果を得ている。

 それまでの過程を考えるのは無意味なのかもしれない。どれだけ考えても俺が納得する過程を得れることはない。人生なんてそんなもんだ。思った通りに全ての事が運ぶなんてことはない。

 今は切替て自分のやるべきことをしていこう。それが今俺に出来ることだ。



 俺は研究生になった。

 研究する内容は「魔法応用学」と言うことになった。

 研究生は研究所の職員というよりは大学のゼミ生の様な感じだった。

 顧問である先生がいて、その下に研究をする生徒が何人かいる。取り扱うのが魔法だという事で研究室も科学研究所の様な感じではなく普通の教室だった。魔法具の作成なんかをしている研究生の所は色々と物が溢れているみたいだがな。

 俺の所属する魔法応用学は新しい魔法を作ったり、今ある魔法の新しい使い方を考えるという事が研究のテーマになっている。

 所属している生徒は5人だけだった。

 初めて研究室に行った時には熱烈な歓迎を受けた。

 俺が魔法対戦トーナメントで戦う様子を皆見ていた様だ。

 一体どうやってあの魔法を思いつき、どうやって作ったのかをしつこく聞かれた。

 簡単には説明をしておいた。

 そもそも【魔法作成(マジッククリエイト)】を持っていたからと言って新しい魔法を作るって言うのは難しい。

 基本的には今ある魔法をアレンジして新しい魔法を作ることの方が主流なんだ。

 俺の様に1から全く新しい魔法を作り出すってことは珍しいんだと。

 それは、そうか。

 魔法を作るとなるとどういう魔法にするのか威力、範囲、効果なんかを考え。その上で魔法を発動する詠唱の内容もそれに合わせて作り調整をしなければいけない。凄まじく手間のかかるものなんだ。


 しかし俺の場合はこの世界に着た瞬間から魔法は使えていた。しかもどんな魔法でも無詠唱でというチートさでだ。

 だから魔法を作る時には詠唱も必要としない、イメージだけで作れるんだ。

 イメージして作り上げた魔法に後から説明文としての詠唱を付け加えるだけでいいのだから難しいという点は一切ない。

 出来上がった魔法に詠唱と名前を付けて、これはこういうものですと固着させているだけなんだろう。普通ではない能力を持った人間が魔法を作ったらこうなるんだな。今まで難しいと思ったこともなかったし、アリアも普通にやってたからなにも思ってなかったけど。

 そう言えばアリアも魔法作れるようになったのは【無詠唱】のスキルとか持ってからだったか。

 そう言う事なんだな、やっぱり俺達は世間からは大分ズレた存在なんだ。


 でも別に俺もこの研究室で何かをしたい訳ではない。

 少し話をしたが俺が持っている知識よりも深い知識を持っているという感じでもない。何か有用そうな事柄があれば少し勉強してもいいかと思ったけどそれはないみたいだ。

 という事で俺はさっそく図書館へ行き1人で研究することを伝えて研究室を後にした。



-----------------



 初めて来た図書館。

 その規模はかなり大きいものだった。俺達が今生活している寮程の大きさがあった。

 とりあえず中に入らない事には意味がないので俺は入口のドアの所へやってきた。

 扉には水晶が埋め込まれていた。直径10cm位の球体を半分にした形の透明な水晶が目の高さぐらいにあった。

 そこに学園長から貰ったカードをかざす。すると扉は重い音を立てながら横に開いた。

 

 俺は研究生になった時に学園長からこの図書館に入る時に必要なカードを貰った。

 カードは銀色で俺が持っているギルドカードによく似たカードだった。

 ギルドカードと同様に一滴血を垂らして自分のカードとした。

 このカードも伝説級と呼ばれる魔法具なんだろう。ギルドカードと同じ様に本人しか使えないみたいだ。


 俺は図書館に足を踏み入れて息を飲んだ。

 そこには所狭しと並んだ本棚と、それに並べられた本がそこにはあった。

 圧巻の光景だ、ここまでの量の本を今までは見たことがない。

 恐らくこの世界にある本が全てここには置いてあるんじゃないだろうか。

 この世界では紙は結構な高級品だ。だから本というのは他の物に比べて高額になる。それがここには数えきれないほどある。そりゃなかなか立ち入りは出来ないだろう。


 さてどうするか。

 俺の目的はここにいると言う知恵と知識の神に会うと言う事だ。

 しかし折角こういう場所に来たんだ、今まで得ることが出来なかった情報を得ることが出来るかもしれない。しばらくの間は情報収集に徹してもいいか。

 ただこの広さでこの本の数だ。必要な情報が載っている本を探すだけでも大変だな。


 今俺が知りたいことは多々ある。ただ一番に知りたいことはやっぱり勇者と魔王に関してだな。

 ここならば多少の情報はありそうだ。

 まずはその線から情報を探していった方がいいだろう。

 俺はそう思って図書館の中を歩いて行く。

 図書館には俺以外の生徒の姿もあった。ただ一般的な図書館の様な多さはない。

 研究生しか入れないんだもんな、学園には生徒は多いがその中の一部の人間しかこの場所に入ることが出来ないんだからな。


 本のジャンル分けは一応されている様だ。

 俺が知りたい情報はどんなジャンルになるんだろうか?伝記とか伝説の類なんだろうか。

 そっち方面に進んでみるか。

 電子管理されている図書館とかならパソコンとか使って調べられそうなんだが。

 そう言えばここには司書とかいないんだろうか。そう言う人に聞いたらどこにどんな本があるかとか教えてくれそうなもんだけど。

 しかしそう言う人物がいるようには思えない。

 本自体も貸し出し出来る訳ではないみたいだし、この場で読むしかないんだろう。机とか椅子は設置されてるみたいだからそこで読むんだろうがな。

 それから中に入って気付いたがこの中では魔法は使えないみたいだ。迷宮のものとよく似てる感じがする。神の結界とかそういう類なんだろうか。ここで新しい魔法を使えるようになったからと言って試せないとかだな。試す気なんてないけど。こんなところで魔法を使ったら色々と大変な事になるだろうし、その予防策なんだろうが。

 問題は【探索(サーチ)】とかが使えないってとこか。【索敵(レーダ―)】も使えないけど、ここで襲撃に合うってことはなさそうだからいいけど。【探索(サーチ)】が使えたら本のタイトルとかで探せそうな気がするんだけどな。

 頑張って1人で1つずつ探していくしかない様だ。そう言えばどっかにいる神の場所も見付けないといけないんだよな。う~ん。

 ちなみにアリアはこの場にいない。アリアは教師だから申請すれば図書館への立ち入りも出来るようになるだろう。ただ俺と一緒にいる理由がないから、一緒に図書館へきて探し物をするって訳にもいかない。アリアはアリアの生徒がいるし、俺はその生徒でもないからな。

 1人でやるしかないってことだな。



 そうして俺の図書館での探索が始まった。

 一日の大半を図書館に詰めて調べ物をしている。

 研究生という事なのでそう言う事をしていても誰も何も言わないし。授業も出なくていいみたいだ。

 その代り研究成果の発表なんてものがあるらしいがまだ先の話だし、その時には何かしらのオリジナル魔法を作って発表したらいいだけだろう。そんなの幾らでも思いつく。

 だから俺は自分の知りたい情報についてだけを調べて行った。


 それにしても情報が全然見付けられない。

 この図書館においても勇者や魔王に対しての情報が載った本はあまりない。やっぱり何らかの情報規制でもされてるんだろうか。

 ただ元々情報をどう本にするかという問題がある。

 俺達の前の勇者がこの世界に来たのは百年以上前とか話みたいだ。その頃に本として書き記して残しておいて、今も残っているかってところだよな。

 それに本に書いたり情報を残したり出来るって言うのは見たり聞いたり出来た場合だ。

 勇者の事を見たり話したりしなければ他人には勇者の情報を知り得ることはないだろう、魔王もそうだ。一般人で魔王に会っても生き残れたりするとは思えない。

 そうなると勇者自身が誰かに伝えた情報を、その誰かが書き残すとか伝えるとか。もしくは勇者の仲間が伝えるとかしなければ情報が他に行くこともないだろう。

 あれ?ってことは前の勇者やその仲間たちは誰にもそう言う話をしなかったってことか?

 何故だろう?普通そういう話ってしそうな気がするんだけどな。

 まぁ前の勇者が恥ずかしがり屋で自分の話をあまりされたくないとか言う可能性もあるけど。それにしたって魔王が復活するのは何度目かなんだろ?過去にもあって、そしてこれからもあるかも知れない事なんだ。だったら後に召喚される勇者に対して何かしらの情報を残しておこうとは思わなかったんだろうか。こういうのが弱点だったとか、こういう方法で戦ったとか。俺だったらそうすると思うんだが。

 そう考えると今情報がないことには2つの事が考えられる。

 前の勇者があえて情報を残さなかったという可能性。後1つは情報は残したが後に誰かがその情報を消したという事だ。

 ん~。ワザと情報を残さなかった場合はどういう事だろう。誰かに口止めされた?その場合勇者を口止めできるなんて神位しか思いつかないな。しかし神がなぜそんなことをするのかは想像もつかないな。

 誰かが情報を消そうとしても人の手に渡った情報を全て消せるとは思えないがな。特に世界を救った勇者の話なんて誰もが食いつき、広めそうなものだ。皆が皆そのありがたみを忘れて行ってるとかの可能性もあるが、それはあまり考えたくないな。

 どの考えもしっくりとは来ない。今までも色々と考えてきたから、この図書館でその考えの裏付けになるようなものが見付かればと思ってたんだけどな。

 そんなことを考えながら毎日俺は本と格闘して驚くべきものを見付けてしまった。

 それは前の勇者が書いたとされる言葉だった。

お読み頂きありがとうございます。

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