再会2 続き
「もしかして・・・。」
「どうした?何か思い当たることでもあるのか?」
俺は思いついたことがあってつい口をついて言葉が出た。
その言葉をバロンさんが聞いて質問してくる。
「いや、単なる思い付きなんですけどね。俺達って魔王の事や、魔族の事って全然わかってないんですよね。どんな奴かとか、どんな力を持っているとか。」
「そうだな、それは知っている人間はいないみたいだ。」
「それで、もしかしたら向こうもそうなんじゃないかって思ったんです。」
「どういうことだ?」
「俺なんかは勇者であることを隠して今までやって来てます。後の2人の勇者も召喚された国から出てきていない。誰も勇者がどういう人物で、どういう力を持ってるか知らない。
もしかして魔王達も俺達勇者がどういった力を持ってるかわからないから攻めてこないとか。」
「なるほどな、そういう可能性もあるか。
しかしそうなると魔王とかはかなり慎重な考えをする奴なんだな。」
「そうですよね、そうなりますよね。でも凄い力を持って生まれたとかだったら勇者が育つ前に攻め入ってこそうなものですよね。」
「う~ん、そうだな。ともかくやっぱりお前は暫く勇者であることを隠しておいた方がいいようだな。
お前が言ったように魔王も勇者がどんな力を持ってるかわからないと思って攻めてくるのを躊躇しているんだったらそのまま暫くそうしてる方がいいだろう。お前も力を付けないといけないし。」
「そうですね、暫くは今のまま公表せずに行動します。まぁ魔法学園には勇者を隠していくので、どのみち隠したまましばらく生活することになりそうです。」
「なるほどな。俺から話したかったことは全部話した。
ガイとシータに同行してくれそうな冒険者に連絡を取ってみよう。連絡取れたらまた教える。」
「わかりました。あっ、それとバロンさんにこれを預かっておいてもらいたいんです。」
俺はそう言って【倉庫持ち】から【転移の門】の端末魔法具を出して渡した。
「えっと、出来ればそれなりに広くて人の出入りが少ない所で保管して欲しいんです。」
「ふ~ん、分かった。」
バロンさんは受け取った魔法具を見てからそう答えた。俺が伝えたいことが分かってるみたいだ。そういう所に直ぐに気付くのが凄いよな。
「とりあえずまた一週間後にでも様子を伺いに来ますね。」
「そうだな、それより早く見つかったらザールの町まで行ってやるよ。」
「ありがとうございます。じゃあ俺達そろそろ失礼しますね。」
「あらやだ、私はここに残るわよ。」
俺がそう言ってソファから立ち上がると、ベティーさんはそんなことを言った。
「えっ?」
「折角ここまで来たんだもの。ただ帰るなんてもったいないわ。
ダイゴっちもバロンにお世話になったんでしょう?」
「えぇ、そりゃ、まぁ。」
「でしょう?でしょう?今回もお願い事してるんだから少しは恩を返したいと思わない?」
「それは、そうですね。」
「そこで、私が無料で服を作ってあげるわ。」
「何故そんな話になるんだ?」
ベティーさんの提案にジト目で聞くバロンさん。
「私はダイゴっちの弟子ですもの。師匠がお世話になった人には私がお礼をしないといけないわ。
そうよね?そうよね?」
「いや、まぁ・・・。」
「ダイゴっちのおかげで私すっごい服作れるようになったのよ。」
「そうか・・・、しかし何故今にもグスタフは襲い掛かると言う様な雰囲気を出しているんだ?」
「ベティーって言ってるでしょ。その名前で呼ばないで。
そりゃもう、服を作るのなら採寸は必要でしょ?きっちり、体の色んな所測らせて頂きます。」
「いや、別それはいい、遠慮する。って何故ダイゴは自分だけ扉の方へ進んでるんだ?」
「いや~、採寸の邪魔になるかなっと思いまして。それに久し振りに会った2人でつもる話もあるでしょうし。お先に失礼しようかなと。」
「おい待て。こいつも一緒に連れて帰れ。」
「多分無理じゃないでしょうか。それじゃあ失礼します。」
俺はそう言って迷わず扉から出て速攻で閉めた。中からバロンさんの俺への恨み言が聞こえた。
すいません。自分で何とかしてください。迷宮を攻略したんですから何とかなるでしょう。
そんなことを思いながら俺はギルドを後にした。
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バロンさんの話を聞いて思う所は色々ある。しかしながら俺も今出来ることをするしかない。
そう思い暫く過ごした。
約束の日になったので俺とアリアはキレリのレスティア教会まで行った。
するとある程度の申請は済んで答え待ちだという回答だった。ただもうほぼ問題なく入学は出来るであろうという事だった。アリアの方も回復魔法がレベル10ある人間などほぼいないので絶対に来て欲しいと言われたらしい。その点で俺もセットであればという話に持っていったみたいだ。俺はおまけという事だ。
俺の見た目でどうやって入学をクリアするか、その為のスキルもお披露目した。それを見たダストン達はかなり驚いていた。一緒にいたアリアでさえも驚いていたんだ。
ダストン達はこれならば大丈夫だと太鼓判を押してくれた。
その後ダストンが用意した刻印師に師弟契約のやり方なんかをレクチャーしたりした。
早ければ来月には魔法学園に入学できるかもしれないというは話で今回の訪問は終了した。また後日結果を聞きに来るとだけ伝えた。
バロンさんの所へも訪ねた。なぜかベティーさんがまだいて、ちょっと吹いた。
物凄く恨みがましい目でバロンさんに見られた。
なんかもうベティーさんはクレタに移り住むんじゃないかと思った。まぁここも冒険者はいっぱいいるし、冒険者用の服を作れば飛ぶように売れるだろう。
ザールで店を開いたのもドワーフの町なら冒険者が良く来ると言う理由からみたいだし。
ベティーさんはベティーさんでかなり優秀みたいで、服を作る以外にギルドで冒険者の相談に乗ったりしているみたいだ。戦い方や、装備について的確な事を言ってくれるらしい。その為バロンさんも邪険に出来ないみたいだ。
バロンさんに尋ねたが俺がいなくなった後の話は一切してくれなかった。聞いた時のバロンさんの瞳の奥には恐れの色が見て取れた。何があったんだろう。あんなバロンさんは初めて見た。
しかしそんなことがあってもバロンさんはちゃんと俺の頼み事は聞いておいてくれたらしく、ギルドでバロンさんの知り合いの冒険者と会う事になった。
俺が会ったのは夫婦で冒険者をやっているという、ダニエルさんとカーサさん夫妻だった。
共にAランクでなかなかの腕を持ってるいるらしい。
それに2人に会ってみたが印象はかなり良かった。
ダニエルさんは優しそうな雰囲気をしていたが、かなりの剣の腕をしている。剣術レベルが8あった。スタンダードな剣と盾を使って戦うタイプらしい。
カーサさんも細身の剣を使って戦う。雰囲気的には活動的、というか強い女性ってイメージだった。全体的にも押しが強そうな感じがして、申し訳ないが肝っ玉母さんって感じがした。
年齢で言うと2人共ガイと同じ位なんだけどね。
2人はバロンさんの古くからの知り合いらしい。
そして2人はどちらかというとサポートメインで冒険者業をやってるらしい。
特にパーティを決めずに、色んな場所へ行ってそこで必要とされているパーティに加入すると言うのをメインで活動しているとの事。
そう言う人もいるんだなっと思ったが、その方が色んな所を旅できるし。しがらみなども少ないらしい。ずっと同じ人間で過ごしていると色々あったりするんだと。
なるほど、だったら今回のガイ達の同行者にはぴったりかもしれないと思った。
ただ鬼の里を目指すという目的だが問題ないかは確認しておいた。
バロンさんからガイ達の話は聞いていたらしく、迷宮を完全攻略できるような人物であれば大丈夫だろうと言う返事だった。それはそうか、Sランクの冒険者ですら60階層位で断念する迷宮を完全制覇したんだからな。そこら辺の冒険者と一緒に行動するよりは信用出来るだろう。
報酬を渡して一緒にパーティを組んでもらう話になり、一定の金額とブランに装備を作ってもらうと言う事でガイ達に同行してもらう契約をした。
それから一緒にザールの町まで行ってガイとシータに引き合わせた。
ガイもシータも問題ない様だった。ダニエルさん夫婦はシータを見てびっくりしていたが、可愛いと気に入っていたみたいだ。夫婦の間に子供はいないみたいだしな。
とりあえずブランに夫婦の装備を整えて貰ってから出発することに決まった。ドワーフに武器を作ってもらえるなんてとダニエルさん達は喜んでいた。ガイ達と一緒に旅するんだ、それなりの装備を付けておいてもらった方がいいだろう。
俺は俺でガイ達の旅に役に立ちそうな魔法具を作ることにして、しばらくの間ゾランさんの所へ場所を借りにいっていた。
【生活魔法】や回復魔法なんかを封じた魔法具を作った。これがあれば野営する時にも役立つだろうし。傷を負ったり、毒に侵された時にも回復魔法を使える者がいなくても問題ないだろう。ガイとシータのMPから作った魔石を使わせてもらったので2人がその気になってMPを込めれば何度だって再利用が可能だ。後はと思って迷宮で手に入れたマジックバッグに食べ物や必要なものをこれでもかって詰め込んだ。大食漢が1人いるからな、何かあった時用に準備しておいた方がいいだろう。後は魔石も入れておいた。金がなくなったら適当に売ればいいだろう。捨て値でも結構なお金になるはずだ。ただガイ達の行くところに町があるかどうかなんだけど。僻地とかって村すらもないかもしれないしな。フレアマントとかも一応入れておくか。ダニエルさん達が使えるだろう。
そんな準備だけして後の事はガイ達に任せた。考えたらこういう準備とかも自分でやった方が勉強になるんだろう。ダニエルさん達が教えてくれるはずだ。
後は俺の方か。
結局【八百万のスキル】のバージョンが上がって色々やってきたけど1回整理しておくか。
まずはスキルを組み合わせて新しいスキルを作れるようになった。
それによって職業スキルや色んなスキルを組み合わせた、全く新しい役立つスキルを作れるようになった。それによって俺が一度に使えるスキルも増えたし、誰かに教えたりする時にも効率よくスキルを憶えさせられるようになった。これはこれからも色々作っていくべきだろう。
ただ問題点にも気付いた。スキル同士に相性があって組み合わせられない物があったという事だ。
色んなスキルを組み合わせられるんだから全部組み合わせたら最強じゃね?という子供理論を試してみたが組み合わせられないスキルが出てきた。明確な境目があるかはわからないが、どちらかというと同系統の様なスキルしか組み合わせすることが出来ないみたいだ。全く関係のない様なスキル同士を組み合わせることは出来なかった。何かしらの関連性みたいなものが必要らしい。創作系のスキルと攻撃系のスキルとかだな。具体的に言うと【錬金術】と【強打】とか。そりゃそうか、どういうスキルになるのか全く想像がつかない。
もしかすると俺がどういうスキルにしたいって言うのが反映してるのかもしれない。それが思いつかないスキルは作れないとか。なんにせよ今までにないスキルは作れるメリットは大きい。
それから魔法とスキルを組み合わせることが出来るようになった。
スキルに魔法を乗せると考えた方がいいだろう。魔法も元々スキルの中の1つから派生した力だ。だからスキルを組み合わせることが出来るようになったんだから出来るはずだな。
ただその場合にスキルに魔法を組み込めるが、スキルを魔法には組み込むことが出来ない。魔法は単なるスキルから派生した力だからか、大きな力を持つスキルを乗せることが出来ない。あくまでスキルとして使うのが原則らしい。
しかしこれも俺は元々使えていたのかもしれない。出来ることに気付かずに自然と使っていたのかも。今は出来ることが分かったからいくつかのスキルは作った。単純に支援魔法+【絶対防御】で【絶対防御壁】というスキル同士の組み合わせかも知れないが。
後はスキルの一部の力を切り取って魔法に転化すると言う力。
これも元々俺は使えていたのかもしれない。
魔法自体がスキルの一部分の力を行使したもの。そう考えると別のスキルでも同じようなことが出来るんじゃないかってことだ。
土魔法で【岩の弾】がある、それは土魔法のスキルの力の一部分を具現化した力、それが魔法。だから他のスキルも同じようなことが出来る、同じ様に一部を魔法と言いう形に転化出来るってことだ。
だが元々スキルが使えるのあればその一部分を抜き出して魔法にする必要はない。完全に持ってるスキルの劣化版だ。ただ魔法に転化するとスキルを持っていない者でも魔法として使えたり、魔法具に組み込むことが出来る様になる。今ある伝説級の魔法具はこれの可能性がある。
ただこちらにも問題がある。スキルによって切り取れるものと切り取れないものがある。後切り取っても仕方ないものだな。
【断罪】や【絶対防御】なんかは力の一部を切り取ることが出来なかった。そもそも一部って何?ってことになるしな。どんなものでも斬る力の一部、ある程度の物を斬れる力か?そんなのなんの役に立つんだろう。切れ味の上がる支援魔法とかと変わらない。
最初に言った以外の2つはもしかすれば元々使えていたかもしれない。
そもそもの【八百万のスキル】の力として持っていたのかもしれないということだ。それに俺は気付かず、何となくやってみたら使える様になっていただけかもしれない。
とりあえずこんなものか。
しかし神レスティアはこの力を与えてくれて、魔王に勝てるようになるみたいなこと言ってた。
となると最初のスキルを複合して新しいスキルを作るって言うのがやっぱり鍵になるんだろうな。
他の2つは元々使えていたのかもしれないし。
う~ん、どんなスキルを作ったらいいんだろう。
結局今の所スキルを作ってみて一番得をしているのは分身体の様な気がする。かなりパワーアップしたんだよな。下手すると本体より強いんじゃないかと思う。
スキルの中にはモンスターが持つようなスキルもある。そう言うスキルを俺は使えないが分身体であれば使うことが出来る。
【物理攻撃無効】や【魔法攻撃無効】なんてスキルだな。
俺も両方付けてたらどんな攻撃受けても大丈夫じゃないのか?と思って試してみたけど効果を発しなかった。モンスターが持つスキルで、もしかすればモンスターが持つ体の特性なんかがスキルに反映したパターンなのかもしれない。スライムみたいにプヨプヨした体を持ってるから【物理攻撃無効】というスキルがあるとか。しかし分身体であれば付けれるんだよな、このスキル。
もしかして分身体を強くして魔王に挑ませるとか?いや、それは結構シュールな光景だよな。俺必要?ってことになる。
でも魔王に勝つ為にこれからもスキルについては考えて行かないといけないってことだろう。
お読み頂きありがとうございます。
とりあえず説明ページです。
作者が現状をもう一度確認するって意味合いが強いかも知れませんが。
そして次話より新章突入します。
いや~、まさかエルバドス編がここまで長くなるとは思ってもみませんでした。
考えてるのを文字に起こすとこうなるんだなって思ってます。
果たして次章はどれぐらいの長さになるんだろうか。




