魔法学園ニルヴァース
「初めまして、君がナイト君だね。」
「はい、そうです。」
俺はそう元気に答える。
俺が今いるのは格式だった調度品が沢山並ぶ部屋だ。そして目の前には白髪で同じ様な色の髭を生やした高齢の男性が座っている。
ここはスラグスルの魔法学園ニルヴァースの学園長室だ。そして目の前に座っているのがここの学園長だ。
俺は問題なくこの魔法学園に入学することが出来た。今日は登校初日という事でこの学園長室に呼ばれたんだ。
「これからの学園生活色々とあるだろうが勉学に励み、一流の魔法使いに成長することを願っておるよ。」
「学園長、お言葉ありがとうございます。精一杯頑張ります。」
「うむ、ではディーン先生、よろしくお願いしますよ。」
「わかりました、学園長。では失礼します、ナイト君付いてきたまえ。」
学園長室には俺と学園長以外にも1人の男性がいた。俺の担当教師でディーンと言う名前だ。
年の頃らなら40代位なんだろう、髪の毛がぴっちりと7:3別けで眼鏡をしている。なんか神経質そうだな。
ディーン先生は学長室の扉を開け出て行く。その後に俺も続いた。しかし歩きにくいな。いつもの歩幅とかと違うから違和感を感じるし。まぁそれは体全体か。目線も大分低くなってるし。
そう、俺は今、どこからどう見ても10歳ぐらいにしか見えない姿形をしている。
そう言えば今の状況を説明しないといけないな。
ダストンに魔法学園には10歳ぐらいの人間しか入学することが出来ないと言われた。
俺は20歳、いや、もう21歳になってるかもな。いくら若作りをしたところで10歳に見える様になんて出来ないだろう。しかし俺にはスキルがある。
ダストンにそう言われた時に3つの案を考え付いた。
1つ目は【偽装】のスキルを使って周りに俺が10歳ぐらいの男の子だと錯覚させる。ただこの場合は流石に元の体形なんかと差が出過ぎて色々な無理が生じる。一応魔法学園には制服があるらしくて支給される制服なんて入らない。服も偽装出来るけど、元の体形との身長差や手の長さが違ったりすると相手との認識の誤差が生じておかしなことになったりする。当たるはずがない物が偽装前の俺の体に当たるとか、そんなところを見られたらどうなってるんだと怪しまれる。
2つ目は分身体を送り込むという手段。分身体は体の大きさを変えれるし10歳位の姿に簡単になれるだろう。ただいくつかの問題がある。分身体なのでMPの回復が出来ない。MPが尽きたら戻さないといけない。何かあってMPを尽きる瞬間を見られても困るしな、魔法学園だし魔法も使って行かないといけないだろうし。後、分身体には感情とかはない。だから表情なんかは全て俺が1つ1つ指示を出して付けていかないといけない。流石にそれは大変だろう、ここ笑う所、ここ怒る所とか、そんなの1つ1つやってられない。
最後に俺が子供の姿になる方法。今やってるのはこれだ。
そう言うスキルを作ったってことだ。名前は【子供化】という。
別に黒い服着た男に薬を飲まされたわけじゃないよ。
それに若返ったという事でもない。若返るスキルとかは作れなかった。
【倉庫持ち】をメインにしていくつかのスキルを組み合わせてある。単純に説明すると、体を構成している物を割り引いて【倉庫持ち】の中に入れているってことだ。それだと色々大変な事になるので魔素で作ったもので補ったり、繋ぎ合わせたりしている。そんなことして問題ないのかと思ったが大丈夫そうなんだよな、これが。試してみて元に戻っても問題なかったし、スキルが上手いことやってくれてるんだろうと勝手に思ってる。うん、こういうのは深く考えちゃ駄目なんだろう。そうしたことで見た目10歳ぐらいの大きさまで縮んでいる。どこからどう見ても10歳ぐらいなんだよな。あれだよ、裸になってもってことだよ。そんなところまで忠実に10歳ぐらいになるってどういう事なんだろう。姿は10歳位の俺の姿だから、その当時の情報でも読み取って再現してるとかなんだろうか。
このスキルをダストンに見せたら驚いてた。アリアもだけど。とりあえずこのスキルは本当に体が縮んでしまうので服とかも用意しておかないといけなかった、だから初めて教会に行った時には見せれなかったんだ。なんでこんなスキルを用意していたかは置いておこう。色々と試してみたかったんだ。
この姿だったらガイとかブランの息子って言っても問題ないだろうか。抱っことか、肩車とかしてくれるかな。子供になったふりして甘えたら返してくれるかな。頭の中は元のままなんだけど。
それは一旦置いておこう。
俺はこのスキルを使って魔法学園に入ることにした。
その時に名前も変えている。どこかで見たが本当の名前と同じような名前の方が呼ばれた時にとっさに反応できるとあったので『ナイト』という名前にした。
持ってるスキルは【子供化】の中に【偽装】が入ってあるのでそれである程度の属性魔法と【魔法作成】を持ってることにした。
【魔法作成】を持って生まれたことにし、新しい魔法を作る為この学園に入学して魔法の勉強をしたいってことにしている。新しい魔法を作り学園に認めさせ、新たな魔法作成の為に図書館を訪れたいってことにしようと言うのがアリアのプランだ。
とりあえず暫くは学園生活に慣れて魔法を憶えていくフリと、魔法を作るフリをしないといけないという事だ。まぁ俺自身も魔法は最初っから使えてたからどんな風に教えてるのかは気になる所だからいいか。
「ここです。」
俺の前を歩いていたディーン先生が扉の前に止まった。そして扉を開けて中に入って行った。俺もそのまま後追い部屋の中に入った。
部屋は元いた世界の学校そのものと言った感じの作りだった。これぞ教室って感じだな。
前には黒板と教壇があり、机と椅子があって生徒達なんだろうと思う子供達が座っていた。20人位のクラスなんだろうか。男子女子との比率も同じぐらいだった。当然の様にみんな同じ制服を着ていた。
「今日は皆さんに紹介する人がいます。」
ディーン先生は教壇に立ち俺の方を向いた。俺もそのまま進み教壇に上る。生徒たちの方を見ると、皆興味一杯の視線を送って来ていた。
「自己紹介をお願いします。」
ディーン先生に言われて俺は一歩前に出る。
「初めまして、ナイトと言います。今日から一緒に勉強させていただくことになりました。わからないことも沢山ありますが頑張って勉強していこうと思います。よろしくお願いします。」
俺はそう言って頭を下げた。すると少しだけ拍手の音が聞こえた。
「じゃあナイト君の席は右端の後ろから2番目だ。」
ディーン先生は大して俺の事に興味はないらしい。全て端的にしか言わないな、感情も入ってないっぽいし。まぁこういう人なのかもしれないがな。
俺は言われた通りの席を探して教室を進む。教室の机は2人で1つに座るタイプの様で、俺が進んだ先の机には1人の男の子が座っていた。
「僕の席ここだよね?」
俺は一応その子に尋ねてみた。
「そうだよ。僕アーサー、よろしくね。」
その子はそう答えた。
「さっきも言ったけど僕はナイト、よろしくね。」
俺もそうやってもう一度自己紹介をした。
隣になったアーサーは俺と同じ身長でぐらいで割とぽっちゃりな感じだ。制服が少しきつそうな感じがする。髪は緑で目も同じような緑色をしていた。髪型はサイドは刈り上げていたが上はちょっとぼさっとしている。たれ目気味で人の良さそうな感じだ。うん、割と可愛いぞ。なんというか庇護欲をそそられるというか。いやいや、相手は子供だぞ。でもまぁ可愛いと思うのは悪いことじゃないはずだ。ちょっとは学園生活の楽しみが出てきたってとこだな。
俺はアーサーの横に座った。すでにディーン先生は授業に入っているみたいだ。何かを話しながら黒板に文字を書いている。少し集中して聞いてみるか。【完全記憶】があるから聞いてるだけで全部覚えられるしね。
そんな感じで俺の学園生活はスタートした。
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「ナイト君はどこから来たの?」
休み時間になってアーサーから聞かれた。
「エルバドスだよ。そこの小さな村出身なんだ。」
「えぇ~っ、僕もエルバドスなんだよ。僕はリグファーレなんだけどね。」
「へぇ、そうなんだ。だったら両親は何か商売でもしてるの?」
「うん、小さいけど商会持ってるんだ。」
「それは凄いね。」
「えへへへっ。」
照れて笑う顔がちょっとかわいい。うん、癒しだね、癒し。
「おいっ、お前。」
癒されていた俺の事を誰かがそう呼んだ。
声のした方を向くと目付きの悪いガ・・・お子様がいた。
「僕の事?」
「それ以外にないだろ。お前どれぐらいやるんだ?」
「どれぐらいって何のこと?」
「あん?魔法に決まってんだろ。途中で入ってきたってことはそれなりには魔法使えるんだろ?」
「あぁ、魔法か。どうなんだろう?人と比べたことないからよくわからないや。」
「はっ、自分の持ってる力も知らないのかよ。その様子じゃ大したことなさそうだな。
どうだ?俺様の下に付く気はないか?だったら色々教えてやるぜ。」
「下?この学園にはそんな上下関係があるの?」
「当たり前だろ、弱い奴は強い奴のいう事を聞く。世の中そう言うもんだろ。」
「その前に、君って誰?名前すら知らないだけど。」
「はん?教えておいてやる。俺はこの学園一の魔法使いになる男、ベック様だ。」
「へぇ、学園一ねぇ。」
「てめぇ馬鹿にしてるのか?」
「いや、別に。夢を持つことは大事だと思うよ。たとえ叶わない夢だとしてもね。」
「なんだとてめぇ。」
「そろそろ休憩時間終わりみたいだよ、ベック君。先生戻ってきたし、席に着いた方がいいんじゃない?」
「あん?てめぇ憶えておけよ。そこの落ちこぼれのブタとつるんでもいいことなんてねぇぞ。」
ベックはそう吐き捨てて自分の席に戻っていった。
アーサーの方を見ると泣きそうな顔をして下を向いていた。
ふむ、色々ありそうだな。というかテンプレ的な感じで進んでるんだけど。こういうのはどこの世界でもあるんだろうか。俺にはこの学園に来た目的があるしな。そう言うのを求めにやってきたわけでもないだけど。
そんなことを思いながら残りの授業も受けて行った。
全ての授業が終わってディーン先生に呼び出されて少し話をした。授業の内容について行けそうかどうかとかの話だった。その点は問題なさそうだと伝えた。正直10歳前後の子供に教えるような内容だったし、魔法ことは多分先生より熟知してるしな。
それからディーン先生に寮の場所と部屋を聞いた。
この魔法学園は全寮制だ。全員寮に入らないといけない。そもそもこの国自体自由に入ったり出たりできない。学園を卒業や辞める以外親元に帰省することすら許されていない。だから俺も目的を果たすまではずっと寮生活になるってことだ。元の世界でも寮に入った経験などないので少し緊張する。
寮も学園の中にある。というかこの学園自体がかなり大きい。
元々スラグスルは国は国だが、巨大な一つの都市が国そのものだと言う感じだ。
この国は魔法師ギルドが魔法使いを育てる為に作った国だと言われている。その為に魔法師ギルドが国を運営している。そして魔法学園に他の国から人を集めて魔法使いとして教育しているんだ。
魔法学園の規模もグラントの城と城下町を合わせた面積の数倍もある。
そんな敷地面積があるから寮に行くにも結構かかる。しかも今は子供の姿だし歩幅が違うんだよな。俺のステータスがあったらあっと言う間なんだろうけど、そんなスピードで走ってる所を人に見られるわけにもいかないし。
何とか歩いて10分程で寮に到着した。かなり大きく立派な建物だった。
玄関扉を開けると受付の様なものがあった。凄い造りだな。
受付の所に行って今日からお世話になる者だと伝える。すると荷物は部屋にすでに運び込んであると伝えられ、部屋番号を教えられた。それに寮の規則が載ってあるという小冊子と部屋の鍵を渡された。
俺はそのまま教えて貰った部屋まで歩いて行った。結構な部屋数があるみたいだ。まぁ学園の生徒全員がここで暮らしてるんだもんな。全校生徒何人ぐらいいるんだろう。
そんなことを考えているうちに教えて貰った部屋番号の部屋の前まで来た。さて、暫くはここが俺のホームになる訳だ。部屋の中に入ろうと思ったが中から気配がする。それにこの気配は・・・。
俺は部屋の扉をノックした。すると中から知った声が聞こえる。
俺は部屋の扉を開けて中に入る。するとそこには笑顔で待つアーサーの姿があった。
「やぁ、アーサー。もしかして君と同室ってことかな?」
「うん、そうなんだ。僕は知っていたんだけど驚かせようと思って黙ってたんだ。」
何そのいたずらっ子感。いいねぇ、新鮮だ。最近そんな事されていなかった。いや、ベティーさんとかは・・・。忘れよう、あれは悪戯とかではない。ハラスメントの部類だ。
「そうなんだ、ビックリしたけど同じ部屋がアーサーで良かったよ。」
「えへへっ。」
俺がそう言いながら部屋に入るとアーサーは照れたように笑った。
初のう、初のう~。
っていかん、完全にどっかのエロ親父目線になってる。しかし本当に純粋そうだよな、アーサー。
「僕もナイト君と同じ部屋で良かった。これからもよろしくね。」
「うん、後僕の事ナイトって呼び捨てでいいよ。年も変わらないんだし。」
アーサーは10歳で今の俺と同い年ってことになる。
「えぇ~、でもいいのかな。その、よろしくね、ナイト。」
あぁ、これその筋の人間を駄目にする奴だ。ちょっぴり照れて上目遣いで見ながら言うそのセリフ。そう言うの好きな人を一撃で落とせるよ。最終兵器並みだよ。残念ながら俺には半分ぐらいのダメージしか与えられないけどな。って半分持っていかれてるのかよ。という自分突っ込み。
俺は部屋の扉を閉めて部屋の中を進む。
広さは8畳ぐらいだろうか、ベットが2つあって1つのベットの周りには色んなものが置いてあったのでそっちがアーサーが使っているベットなんだろう。
部屋の中に扉が一つあったので開けてみるとトイレだった。風呂とかはないのか?それとも寮に大浴場がついているとか?
「トイレだけなんだ?お風呂とか皆で入るの?」
アーサーに聞いてみた。
「お風呂?そんなのないよ。魔法学園だから皆【浄化】使えるもん。」
失念していた。そうだった、そりゃ皆魔法使えるのなら必要ないよな。ここでもか、ここでも【浄化】は俺を虐げるのか!いっそこの俺の不浄な気持ちも浄化してくれないだろうか。
って俺は何を考えてるんだ。この寮にはほぼ同じ年齢ぐらいの子供しかいないんだぞ。
うん、いつもの様に自重しよう。
お読み頂きありがとうございます。
ついに新章です。
そして新キャラも。
なんかダイゴが暴走してる感じですが大丈夫でしょうか?
皆さん引いてません?




