寮生活
「そうだ、もうちょっとしたらご飯の時間だからそれまで寮の中を案内しようか?」
アーサーがそう言った。アーサーがそう言ってくれるのであれば断る理由などない。
「うん、ありがとう。色々教えてね。」
俺はそう返事をした。
そして2人で部屋から出て寮の中を見て回った。
基本的に寮の中は殆どが個室の生徒が暮らす部屋ばかりだ。1人部屋と2人部屋がある。
1人部屋は基本的に成績優秀者や、権力とか財力を持った生徒が使っているらしい。
ふ~ん、て感じだな。アーサーと一緒の部屋の方が楽しい寮生活を過ごせそうだから問題ないし。
寮の中には医務室とかもあった。具合が悪くなった時なんかに行くらしい。俺なんかは自分で治せるから必要ないか。
後は娯楽室やら勉強部屋みたいなものもあった。それ以外にも中庭なんかもあるがもう夕方を回っていたので出たりはしなかった。
そして俺達は時間が来たから食堂まで行った。この寮の食堂は1つしかないらしく時間での入れ替え制みたいだ。
食堂は学食みたいな感じだった。その日のメニューは決まっているらしく、トレーを持って並んでご飯を受け取るシステムだった。その後好きな所に座って食べると言う。
今日はパンとスープ、サラダ、それにメインのハンバーグみたいなメニューだった。
俺とアーサーは向かい合わせに座って夕食を食べた。味はそれなりに美味しかった。
夕食を食べ終わると部屋に戻って雑談タイムだ。
基本的に掃除洗濯風呂は全て【浄化】の魔法で事足りるらしいので自由になる時間は結構取れるみたいだ。
アーサーとはとりあえず当たり障りのない感じの話をした。
とりあえず学園の事についてだったりだな。
俺の入ったクラスは初級クラスと呼ばれるものだ。この学園に来たものは初めはこのクラスに所属して魔法の基礎知識なんかを学んでいく。それから徐々に自身にあった属性の魔法を勉強する特別クラスなどに進級していくというシステムだ。だから俺のクラスには同じぐらいの年頃の生徒が多い。
というか10歳ぐらいってどんな話をしていたか、どういう風な会話をしたらそれらしいのかって言うのを考えてしまう。大人であることも、別の世界から来たことも隠している訳だし。小さい頃の話をしようとしても全く違う世界の話になってしまうしな。
これは思ってたよりもずっと大変な事なのかもしれない。
「そう言えばナイト君ってどういうスキルを持ってるの?」
「うん?僕は【魔法作成】を持ってるよ、それに低レベルの属性魔法かな。だからもっと魔法のレベルを上げて色んな新しい魔法を作れるようになりたいんだ。」
アーサーに聞かれ俺は用意していた台詞を言った。こういう質問を受けるだろうと事前に思いついていた物には答えを考えていたんだ。
「そうなんだ、凄いね。」
「アーサーは?」
「えっ、僕・・・。僕は一応回復魔法を使える・・・かな。」
「一応?かな?」
「うん、あんまり得意じゃないだ。全然上手くいかないし、血を見たりするのも苦手だし・・・。」
「そうなんだ。でもその内使える様になると思うよ。」
「そうかな~。」
「そう言えば昼間変な奴いたけど、ベックだったったけ?」
「あぁ、ベック君か。」
アーサーの顔が明らかに曇る。
「どういう奴なの?」
「えっと確か割と有名な貴族の子供なんだって。グラントって国だったかな。」
グラントかよ。そう言えばあそこは貴族とかの階級があったか。しかしグラントってロクな奴いないんだな。
「それで、なんか学園一になるとかなんとか言ってたけど。」
「みたいだね。結構なレベルの火魔法が使えるんだ、彼。」
「へぇ~、そうなんだ。それで?アーサーはあいつに何かされてるの?」
「えっ!?いや、そんな、別に。ちょっと馬鹿にされたりすることはあるけど・・・。」
とても歯切れの悪い言い方だな。こりゃ他にもあるな。
「そうなんだ、もし何かあったら僕に言ってよ。何とかするし。」
「えっ!?そんなのナイト君もいじめられちゃうよ。」
「も?やっぱりいじめられてるんだ?」
「うっ、うぅん。そんなことないよ。僕なら大丈夫だよ。」
「いや、大丈夫じゃないから。アーサーにそんな顔させるなんて許さないから。だから何かあったら絶対に僕に言ってね。」
「うん、ありがとう。なんかナイト君って同じ年なのにしっかりしてるね。」
ごめんね、同い年じゃないんだ。
しかしそれにしてもアーサーをいじめるなんて絶対に許さん。どうしてくれようか。その気になったら子供1人証拠を残さず消すことは出来るんだけど・・・って何考えてるんだ。落ち着こう、冷静になれ俺。そんなことをしにこの学園に来た訳じゃないはずだ。
しかし泣きそうになっているアーサーを見ると何とかしてあげたくなるんだよな。別に恋愛対象とか、性的な対象としてみてる訳じゃないんだけど。これって無償の愛?後10年後ぐらいに出会いたかったな。そうすれば問題ないのに。でもこの世界には法律とかなさそうだし問題ないんじゃないか?って何の問題だよ。さっき自分でそう言う対象じゃないって言ってたのに。
うん、おかしなことになってるな、俺。
光源氏みたいに今から育てていこうか、十年後を見据えて。でも今は同じ年と思われていても実際には10ぐらい離れているし、育った時には俺もいい年になってるはずだ。ハーレム候補生として考えておくぐらいか。
「ぐぅぅ~っ。」
そんな話をしているとアーサーのお腹が鳴った音がした。
「お腹減ったの?夕飯あれだけじゃ足りなかった?」
「う、うん。」
下を向いて気恥ずかしそうにしている姿がまた可愛い。仕方がない。
「他の人には絶対に内緒にしてね。」
俺はそう言って【倉庫持ち】から作り置きていたサンドイッチを取り出した。
【倉庫持ち】には何かあった時に様に簡単に食べれそうなものをかなりの数ストックしてある。
「えっ~?どうしたのそれ?」
「僕【倉庫持ち】のスキルも持ってるんだ。そこから出したの。」
「凄いね、そんなスキルも持ってるんだ。」
「うん、でも内緒にしてね。あんまり人には教えたくないだ。」
「わかった。でも本当にそれ貰ってもいいの?」
「うん、いいよ。まだ沢山持ってるから。でもその代わり・・・。」
「その代わり?」
「ちょっとほっぺた触らせてくれない?」
「ほっぺた?別にいいけど・・・。」
「じゃあちょっと失礼して・・・。」
俺はそう言ってアーサーのほっぺたを指でツンツンとつついた。すげぇプニプニしてる。かなり気持ちいいんだけど。若いっていいな、肌の質が違う。
「なんかくすぐったいよ。」
そう言ってアーサーはもじもじする。
いや、駄目だ。このままいくと変な方向へ行ってしまう。修正せねば。
「ごめんごめん。はいこれ。僕が作ったから味はそんなじゃないと思うけど。」
「ホントに?ナイト君が作ったの?凄いね、尊敬するな~。」
アーサーはそう言って俺からサンドイッチを受け取り頬張った。
「うん、とっても美味しいよ。」
アーサーはそう言って上機嫌でサンドイッチを食べ進めた。
なんだろう、うちにも結構食べる子いるけどいっぱい食べてる姿を見るのは心和むのはなぜだろう。
よし、これからも夜食を提供しよう。そして癒されよう。そんなことを思った。
そんなことをしていたら就寝の時間になった。今の所宿題とか勉強とかしなければいけない事ってのはないし。俺とアーサーはそれぞれのベットに別れ寝る。
これからの生活も楽しみになってきたな。
っとそう言えば忘れていた。
「アリア、今大丈夫か?」
【念話】でアリアに話しかける。多少距離は離れているけどこれぐらいなら大丈夫だ。
「あら?ダイゴ様。問題ありませんわ。」
無事アリアからの返事が来る。
「とりあえず初日お疲れ様。そっちの具合はどう?」
「どう、ですか?何とも言えませんわね。教師ってどうすればいいのかもよくわかっていませんし。」
「それはそうかもね。」
「ダイゴ様の方こそどうなのでしょう?」
「う~んまぁ、ルームメイトは可愛い子だよ。」
「何をおっしゃってるんですか?確かダイゴ様のクラスって初級クラスで10歳位の子供しかいなかったのでは?」
「そうそう、今は同い年。」
「ダイゴ様・・・。それはもう駄目なんじゃないでしょうか。」
「駄目って何が?」
「人として、でしょうか。」
「いやいや、可愛いってあれだよ。アリアもシータの事可愛いって言ってたじゃないか。それと一緒だよ。」
「ダイゴ様がおっしゃると全く説得力がないのですが。」
「どういう意味だよ。」
「そのままの意味ですわ。ちなみにどういうお子様なのでしょうか?」
「えっと、ちょっとポッチャリ気味でたれ目で頼りない感じ。」
「あぁ。」
「何その残念そうな人を見た時に出る『あぁ。』って感じの返事は。」
「そっくりそのままですわ。ダイゴ様もついにってことですわね。」
「なんだよ、ついにって。」
「いえ、ブラン様やガイ様に相手にされないからってついにお子様にまで範囲を広げるだなんて。」
「ちょっ、そういうの止めてくれないかな。相手にされてない訳じゃないから。」
「えぇ、そうでした。そうでした。」
「なんか酷く適当に返された。」
「そんなダイゴ様の残念エピソードはともかく、暫くはそのまま一般生徒を装ってと言いう事でしょうか?」
「残念じゃないからな、まったく。
そうだな、それとも図書館にスキルを使って忍び込んでみるか?」
「いえ、それは止めておいた方がいいでしょう。あそこは学園長の許した者しか立ち入り出来ませんし。」
「どういうこと?俺のスキルを使っても忍び込めないってこと?」
「えぇ、恐らく知恵の神様が壁のような物を作っていらっしゃるらしいのです。」
「そうなんだ、神の力か。そうなると俺でも入り込むのは難しいか。」
「そうですわね。やはり正攻法として学園に認められるような生徒になるしかありませんわね。」
「それってどうやったらなれるんだ?」
「そうですわね、一番簡単なのは試験でいい点を取るとかでしょうか。」
「試験があるんだな。」
「えぇ、年に一回あるみたいですわね。試験の形式も色々あるみたいですわよ。実践的なものから研究発表みたいなものまで。それ以外にもあるかも知れませんが、まだわかっていないという事ですわ。」
「へぇ~。まずはそれを目指してってところか。どういう事をするかも調べないといけないな。」
「そうですわね。私の方も情報が手に入ればお教えいたしますわ。」
「わかった、じゃあまた何かあればってことで。おやすみ。」
「えぇ、おやすみなさい。」
そう言って俺はアリアとの【念話】を終わらせた。
試験か~。どういうのをするんだろうか。というかそれまでは大人しく学生をしていくしかないか。それまでにも別のイベントなんかがあるだろうしな。
学園生活と言えばイベントだよな。でも魔法学園って言うと、どういうイベントになるんだろうか。
体育とかはないみたいだし、体育祭はないだろうな。残念ながら水泳の授業とかもないみたいだし。
文化祭もイメージできないな。屋台を出店したり、劇とかやったりって感じもない。
後修学旅行とかもなさそうだな。魔法学園から外に出るってこと自体があまりなさそうだし。
あれ?そうすると殆どお約束イベントってなくなるじゃないのか?
こう、体育祭でくんずほぐれつ騎馬戦やってみたりとか。そこで怪我して保健室に一緒に行って、2人きりになったしベットもあるしとか。
文化祭で劇をやったら主役の恋人同士役でキスシーンがあるとか。
でもそう言うのって大体高校生ぐらいがやることか。流石にちょっと年齢層が低いか。いや、魔法学園にもそれぐらいの年代の人はいるはずなんだよな。入るのは10歳前後が多いみたいだけど、結構ここに残って研究したりしてる人もいるし。魔法の習得自体が結構な年月かかるし、レベルを上げるのも大変だからな。
あぁ、そっちぐらいの年代ならなんかあったのか。
でも魔法学園に通ってる位だからひ弱なイメージがあるんだけど。冒険者風の厳つい魔法使いってイメージないし。教師陣の中にはいないんだろうか。今度アリアに聞いてみるか。
生徒と教師の禁断の恋・・・。うん、それはそれでアリだな。タイプがいるかどうかだけど。
ってその前に今の俺は10歳のお子様だった。それに興味を持つ教師も大概だな。
あれ?そう考えるとこの学園に来たところで浮いた話って何もないんじゃないか?
はっ!しまった。ブラン達とも離れているしほぼ何もないのが確定じゃないか。
これはとっとと目的の事を終えないといつまで経ってもハーレムルートに戻れないじゃないか。というかそう言うルートに入ったことすらないかもしれないが。
どこでフラグ立てを間違えて来てるだろう。もう一回やり直せないんだろうか。それとも今後一気に回収できるようなイベントあったりしないかな。
雪山で遭難して温め合うとか。でもまぁそうなったら魔法使うだろうな。下手に色々出来るってそういう点がな・・・。こうあまり危機的状況になって一緒に乗り越えるとかあった方がフラグが立ったりするんだろうけど。俺達で言う危機的状況になったら死ぬ一歩手前になりそうだ。
なんにせよ、暫くは学生をやっていくしかないか。なんか大人からこの年に転生したラノベみたいな感じだな。
「う~ん、もうお腹いっぱい。食べれないよ~。」
そんなことを考えているとアーサーの寝言が聞こえた。お約束過ぎるだろう。食いしん坊キャラを譲る気はないみたいだな。
お読み頂きありがとうございます。
流石にダイゴの暴走もそろそろ止めた方がいいかと思うのでこの辺で自重します。
高校生ぐらいの年代に設定をしておけばよかったかのかな。




