再会2
「ちょっと話しておきたいことがあるんだけど。」
全員がこの場で集まっているし話をするには丁度いいだろう。そう思って俺は皆に声を掛けた。
「これからの予定についてなんだ。」
そう言って俺はイスに座らせてもらった。皆もそれぞれイスに座った。ベティーさんもいるけど別に聞かれて困る話でもないからいいか。誰かに言ったりすることもないだろう。
「えっと、もう少ししたら俺とアリアは魔法学園に入学することになる。アリアは教師って立場なんだけどね。
それでしばらくの間は皆と離れることになると思う。
スラグスルは冒険者は入れないし、ガイやブラン、シータでは魔法学園に入学する事も出来ないだろう。
前に皆には一緒に旅して欲しいって言った割にこんな直ぐに別行動になるとは思ってなかった。申し訳ない。」
「いや、そうだろうとは思っていた。」
俺の言葉にガイがそう言った。
「それに俺も特にスラグスルには興味ないしな。」
「わしもじゃな。魔法具に関しても主が作る物の方がよっぽど他にはない様なものじゃろうし。」
ガイとブランがそれぞれ言う。
「そうか。それでなんだけど俺達がスラグスルにいる間他の皆はどうするんだろうと思ってね。」
「わしはこのままザールにおります。鎧を作らなければいけませんし、その他魔法具作りをゾランと一緒に行おうと思います。」
ブランはそう言った。まぁ思った通りの言葉だな。
「ガイはどうするの?暫くは冒険者として生活する?」
「そうだな、それもいいだろうがちょっと旅に出ようかと思う。」
「旅?」
「そうだ。この大陸の人も立ち入らない地域に鬼の里があると言う。そこに行ってみようかと思う。
さらに強くなる為のヒントが得れるかもしれない。」
「危険じゃないのか?」
「さぁな、それはわからない。だが冒険者をやっていても危険な事はあるんだ。さほど変わらないだろう。それだったら強くなれるかもしれない所へ向かう方がいいだろう。」
「そう、なのかもな。
そうだシータはどうする?このザールでブランと一緒にいて冒険者として生活するか?」
正直一番心配なのはシータだ。ある程度は成長しただろうがまだまだ世間知らずなところもあるだろう。
「う~ん、シータはガイと一緒に行く。」
「「「えっ?」」」
シータ以外の皆の言葉が重なる。
「ガイと一緒に旅をするっていうのか?」
「うん、そう。心配だから。」
「どういう意味だ?」
シータの台詞に呆れた口調のガイ。
「まぁ、シータは一人旅をしてこの大陸に来たんだ。ガイよりは旅慣れしてるのかもしれないけどね。
いや、それにしてもね。」
まぁガイと一緒なら大丈夫の様な気もするけど、別の心配事が出てくるしな。この2人か、何かトラブルが起きそうな気がする。
「ただ男1人女の子1人で旅をするって言うのはな・・・。シータに何かあった時どうするかだよな。」
シータに何かあった時にガイが何とかできるとは思えないんだよな。そのね、女の子特有の悩み事やらの話だけど。
「そうだ、俺もそれが心配だ。」
ガイもそう言った。強さで言ったらこの2人なら心配ないだろう。今ならSランクの魔獣と出会っても勝てるんじゃないかと思う。Sランクの魔獣なんてそうそういないけどね。
それにしてもシータがそんな事言うなんてな。まさかな。結構一緒にたりすることが多いしそれだけなんだろ。いや、しかし。ガイとシータに限ってそんなことはないだろうとは思う。
そのなんだ、恋愛とかそういう事だ。どちらかというと親子に近い感じがするし。シータはガイに父性でも感じてるんじゃないかな、うん、そうだろう。
「とりあえず2人だけでって言うのは避けた方がいいと思うな。」
「だったら他の冒険者と一時的にパーティ組んだらどうかしら?」
俺がそう言うと今まで話を聞いていただけのベティーさんが口を開いた。
「他の冒険者とですか?」
「えぇ、そういう事もあるわよ。ある目的の為に一時的にパーティを組んだりするって。相手も同じような目的を持っていたりとか、お金を払ってパーティを組むって話も聞くわね。」
「なるほど、パーティか。そうなると冒険者ギルドで話を通してって感じか。
ってなるとやっぱりあの人頼るしかないかな。」
俺は当然思いついた人を訪ねることにした。
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「やだ、すっごい。ダイゴっち凄いわ。お姉さん、こんなのって、こんなの初めて。またダイゴっちに初めて奪われちゃった。」
「誤解を生む様な発言は止めてもらえませんか?」
「そんな誤解だなんて、間違い犯しても大丈夫よ、私は。」
「俺が遠慮します。」
そんなやり取りをベティーさんとしている。
俺達は今俺が作った水の馬に乗って高速で移動している。先程のベティーさんの発言はその事についてだ。
俺はバロンさんのとこへ行くことを決めた。先日話したガイ達が別の人とパーティを組むとして、どこかに良い冒険者はいないかバロンさんに聞いてみようと思ったからだ。
その時にふとベティーさんが紹介して欲しいとか何とか言ってた気がしたので一応聞いてみた。そのワイルド系の人と会いに行きますけどと。すると絶対について行くと言ってたので一緒にクレタに行くことにした。
【転移の門】で移動しようかとも思ったがベティーさんも一緒だったし。あまりこのスキルは広めない方がいいと思ったので今回はいつもの移動方法にした。
そしてなぜかずっとベティーさんは俺のお腹を揉んでたりするんだが。
「なんでお腹揉むんですか?」
「落ちたら困るでしょ?」
「周りに壁も作ってますし、落ちない様に走ってるので大丈夫ですよ。それとも水の縄か何かで縛りつけておきましょうか?」
「やだ怖い。これぐらいでやめとくわ。」
まったくだ。どうせ揉まれるならブランとかに揉んでもらいたいものだ。そんな場面を全く想像できないがな、悲し事に。
ザールの町を出て1時間程でクレタに到着した。
水の馬を消して町の中に入る。
そう言えば昔はハイブリットダイゴjr.とか作ったな。今は大きな魔石を作れるようになったからそれを動力にして車みたいな物作れないだろうか。
あれを作った時はまだそれぞれの魔法を個別で使用して動かしているだけだった。複合魔法とは違っていた、単純に同時に別の魔法を発動していただけだ。今は複合魔法としてそれ専用の魔法も作れるかもしれないな。
ただ魔法を使えるから必要性を感じなくなった。この世界では科学ではなく魔法があるんだ、長距離の移動などは魔法を使えるならそれで済む話だ。今はもっと簡単な移動手段も出来たしな。車を作るとしての利点は俺でなくても動かせるようになるぐらいか、そうすれば俺以外の人間でも運転さえできれば安全に早く移動できるってことだ。
うん、今の時点全く作る利点はないな。そのうち考えるぐらいか。
それだったら飛空艇とか出来ないかな。空を飛んで移動する物とか。気球とかなら作れるだろう。風と火の魔法を組み合わせたら簡単に制御できそうだ。スピードは出ないだろうけど。そもそも飛空艇を作ってどこに行くかっていう事だな。魔王とかと戦う時に別の大陸へ移動するときに使うかだな。まだ先の話だろう。【転移の門】で済む話かもしれないし。
おっと、今はその件じゃない。
クレタの町を進み冒険者ギルドまでやってきた。
「すいません、タイザンていう冒険者パーティのダイゴというものですが、ギルドマスターにお会いしたいんですが?」
「あら、お久し振りです。今は丁度自室にいらっしゃいますよ。どうぞ。」
ギルドの受付にいた女性は俺の事を憶えてくれていたみたいだ。しかし簡単に通してくれるな。まぁ迷宮を完全に攻略した冒険者だからかもしれないがな。
ギルド内も結構な数の冒険者がいた。盛況っぽいな。
そんなことを思いながら2階に上がりギルドマスターの部屋を目指す。
ドアをノックするとバロンさんのいつもの声が聞こえてきた。
「お久し振りです。」
ドアを開けて俺は挨拶する。
「おう、って言ってもそんなに経ってない気がするぞ。しかしまぁ丁度良かった。そっちに人をやろうと思っていたところだったんだ。」
久しぶりに会ったバロンさんはそんなことを言ってきた。俺の所に人を?何かあったんだろうか。
「まぁ入れよ。ってもう1人のは・・・?」
バロンさんが不審げな表情をする。まぁわからなくはない。俺の隣にはベティーさんがいるんだからな。
「初めまして、私ベティーって言います。ザールで服屋さんをしてます。」
ベティーさんはそう挨拶をした。
「おっ、おぅ。」
バロンさんは助けを求める様な表情をして俺を見た。いや、俺を見た所で・・・。
「どういう事なんだ、一体?
うんっ?よく見るとお前ってグスタフじゃないか?」
「えっ?そういうあなたってもしかしてバロン?」
2人は驚きながら名前を呼び合った。グスタフって言うのはベティーさんの本名だ。俺は【鑑定眼】で確認したので知っていたが。2人は知り合いだってことか?ベティーさんの前では俺はバロンさんの名前は出してはなかった。クレタのギルマスだってことぐらいは伝えていた。
「2人ってお知り合いだったんですね。」
「あぁ、まぁな。昔冒険者をしてた時に何度か会ったからな。その頃と大分見た目が変わっててわからなかった。」
「そうね、私も。まさかここでギルドマスターやってたなんて知らなかったわ。会ったのもこの迷宮だったものね。そちらも、あの頃とは変わって美味しそうになったわね。」
バロンさんとベティーさんが口々に言った。ってベティーさんロックオンしたんですね。
「それにしても冒険者を辞めて服屋になっていたなんてな。しかもザールでなんて、結構近い所にいたんだな。」
「えぇ、まぁちょっと色々あってね、私も。あの頃からずっと迷宮攻略ばっかりしてるなとは思ってたけどまさかここのギルドマスターになるとは思ってもみなかったわ、そして美味しそうになって。」
ベティーさんどれだけ気に入ったんだ。
「えっと、とりあえずお2人の件はまたお話になってはいかがでしょうか?今日はちょっと頼みごとがあってきたんです。
それにバロンさんも俺に何か言いたい事であったみたいですけど?」
「あぁ、そうだな、すまなかった。とりあえず座ってくれ。」
バロンさんは思い出したようにそう言った。その言葉で俺達3人はソファに座った。
「それでなんだ、頼み事って言うのは。」
「えっと、今度俺がスラグスルの魔法学園に行くことになって暫くガイ達と別行動になったんです。」
「そうか。」
「それでその間ガイに何をするか聞いたら、なんでも鬼の里を目指して旅をするって言ったんです。」
「へぇ、あいつがねぇ。」
「ただそれにシータも一緒について行くって。」
「なに?あの子も一緒に行くのか?」
「そうなんですよ、それで男1人女の子1人で旅するって言うのはちょっとあれかなって思ったんです。それで一緒に行動してくれる冒険者の人がどこかにいないかなって思って。バロンさんだったらそう言う人知ってたり、伝手とかあったりしないかなと思って伺ったんですよ。」
「なるほどな。確かにあの2人だけだと心配だな。
しかし、鬼の里を目指すか。かなりの力のある冒険者じゃなければ行こうとなんか思わないだろう。」
「そうなんですよね。普通に募集したりしても絶対に集まらないかなって思ったんです。それに出来れば女性の冒険者が一緒に行ってくれた方がいいんですけどね。」
「高ランクで女性の冒険者か。限られるな。」
「えぇ、だからバロンさんの知ってる人にいないのかなって。」
「そうだな~、一応心当たりはあるから当たってみるか。」
「本当ですか?ありがとうございます。」
「いいってことよ。お前からの頼み事だしな。それにあの2人の為とあったら相談に乗らない訳にもいかないだろう。」
「俺はその件で伺ったんですよ。それでバロンさんから俺に言いたい事ってなんですか?」
「あぁ、その事なんだが。ついさっき連絡が入ったんだ。
クリスプに進軍していたカストの軍が全滅したらしい。」
「えっ!?全滅ですか?」
「あぁ、軍を派遣してから暫く経って何の連絡もなくなったらしい。そして偵察隊を送ってみたら全滅していたのを確認したってことだ。」
「そんな、進軍してそんな時間は経ってないと思うんですが。」
「まぁその点はカストとしても短時間で攻め落とす気でいたらしいけどな。」
「そうだったんですね。」
「カストは国中混乱しているらしいぞ。かなりの戦力を送り込んだのに全滅したってな。」
「そりゃそうでしょうね。それにしても軍隊を全滅させるなんてどうやったんでしょう。」
「さぁな、それはわからないみたいだ。やられている所を実際に見た訳じゃないみたいだし。」
「魔王が強いってことですか?それとも魔族自体が強いんでしょうか?」
「どうかな、どっちもってパターンもある。それ以外の戦力もあるかもな。」
「その事を俺に伝えようとしてくれたんですね。」
「あぁ、そうだ。一応伝えた方がいいだろうし、また暫くは勇者であることを絶対に隠しておいた方がいいってことだな。」
「勇者であることを隠す、ですか?」
「そうだ、もしかすると勇者がやり玉に挙げられるかもしれないだろ?勇者が協力しなかったから軍が全滅したとかなんとか。」
「そんな、勝手に進軍しておいて負けたら勇者のせいですか。」
「そういう可能性もあるってことだ。ずいぶんと勝手な意見だが、国って言うのはそう言うのを簡単に言ったりする。責任転嫁だな。なんにせよ、暫くは様子を見た方がいいだろう。」
「そうですね。わかりました。それにしてもずっと疑問に思っていたことがあるんですが。」
「なんだ?」
「何故カストは今になってクリスプへ攻め込んだんでしょう?魔王が復活とするまでに攻め込んだらもっと楽だったんじゃないでしょうか?」
「それは国同士のしがらみもあったんじゃない?」
そう言ったのはベティーさんだった。
「しがらみですか?」
「えぇ、仮にカストがクリスプに進軍したとしましょう。別に攻め込んじゃいけない決まりがある訳じゃないわ。でもね、他国は色々と考える訳よ。魔族が戦争を吹っ掛けられたと思って逆にアルメデに攻め込んで来たら?向こうにとってはどの国が攻め込んできたかなんて関係ないかもしれない。全く別の国が魔族に襲われるかもしれない。他国としてはそんな事容認できる訳ないわ。
それにカストもね。軍を派遣して自国が手薄になった時に他の国に攻め込まれたら?絶対起きないとは言い切れないわ。そうなったら魔族ではなく人の手でカストは国がなくなることになるわ。そんなリスクは犯せないでしょう?
でも魔王がいるとなれば、討伐の為に進軍する。大義名分があるのよ、その間に自国に攻め入ってくる様な国があれば他の国も黙ってないでしょう。なんて非道な事をするんだってね。もしかすれば他国も大義名分の為協力してくれるかもしれないし。それに万が一魔族が攻め込んできても勇者がいるんですもの、人の世を守ってくれるとでも思ってるんでしょう。もしくはそうなると思っていると見せかけてるのかもしれないわね。
今まで攻め入らなかったのはそう言う事じゃないかしら?」
「なるほど、そんなことが。」
「そうだな、俺も同意見だ。」
「やだ、私達気が合うわね。」
ベティーさんの言葉に若干引き攣るバロンさん。
「それにしても、一応は想像していたんですけど軍が全滅するってどれほどの力を持ってるんでしょうね。」
「その点に関してはお前も大概だと思うけどな。あの力があったら軍ぐらい全滅に追い込めるんじゃないか?」
バロンさんがそう言った、あの力って偽神の事だろう。まぁそうかもしれないな。あれはホントに天変地異クラスの力だからな。
「いや、それは、まぁ。でも魔族はそんな力を持ってるのになぜ攻め込んでこないんでしょうか?」
「そればっかりは想像でしかないな。ただ魔族ってそこまでの数がいないみたいだ。」
「そうなんですか。」
「あぁ、それに基本クリプスから出てくることはないな。だから謎は多いがな。
攻め込むより自分達の有利な場所で戦う方が戦いやすいってことじゃないか?後は力を付けているってところか。まぁ何をどうやって力を付けてるなんかわからないけどな。」
力を付けるって俺達の様にか・・・。もしかして。
お読み頂きありがとうございます。




